第9.5話 見つけた。sideテオドール

 あの時、警察に連絡されたせいで、さすがに堂々と外を歩けなくなった。

 大学の寮にも実家にも、あの秘密基地にも警察が見張っていて戻れなくなったし、ニュースになってしまったので友人を頼るわけにもいかなかった。


 しかし、メガネやカツラ、カラコンで変装すれば、意外とバレないものである。

 数ヶ月経った頃、買い出しのためにあるショッピングモールを訪れた。

 そこで見かけた赤毛の女性──。

 見間違えるはずがない、姉さんだった。


 姉さんは、知らない男の人と一階の食材売り場で買い物をしていた。

 カートを押して、楽しそうに。


 姉さんの隣にいる男は、同じドリンクを棚から3つ取った。

 食材なら買い溜めするかもしれないが、ドリンクを3本という数は中途半端だ。

 二人で暮らしているなら、買い溜めするにしても偶数にならなければおかしい。

 来客ならもっと購入するはずだ。


 誰か、もう一人一緒に暮らしている。

 そう考えた方が妥当だろう。


 それにしても、姉さん。

 なんでそんなに楽しそうなの?


 なぜその笑顔を向けるのが、兄さんじゃないの?


 ダメじゃないか兄さん、姉さんをいじめちゃ。


 兄さんと姉さんが想い合っててくれないとさ──


 俺が、姉さんをあいせない・・・・・じゃん……。



 買い物を終えた二人の後をつけると、駐車場で車に乗り込み、E地区方面へ走り去っていった。


 この方向……ああ、なるほど。

 あの家・・・にいるんだ。


 車を追いかけるのは無理だけど、大体の場所は把握できた。

 このまま尾行を続けると怪しまれるかもしれないと、

 後日改めてその家を確認し、少し離れたところで観察していた。


 夕方頃、あの時と同じ車が戻ってきた。

 そこから、姉さんとあの男が降りる。

 ハタから見たら、まるで新婚夫婦だ。


 ──許せない。

 姉さんが、兄さん以外の男といい雰囲気になるなんて。

 何かの間違いだ。


 ああ、そうか。

 無理矢理この家に住まわされてるんだ。


 それなら、俺が近いうちに連れ出してあげるよ──。


「姉さん、見ーーつけた」

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