第8話
「うっはぁ〜なにここ。凄いよ。作り込み凄いよ。
凄いよ。凄いよ。すっげぇ〜」
神殿の中は中央の祭壇に向かって一本の石造りの道が走っていて両側にはいくつもの柱と石像が並び立っていた。
祭壇の奥には一際大き石像があり、祀られている対象祈りの対象、神殿の存在意義などが分かった気がした。
左右に並び立つ柱にはびっしりと文字が刻まれていて、石像は今にも動き出しそうな精巧な作りだった。
〈凄いしか言ってなくてくさ〉
〈みのみのみのみの〉
〈なんかこれマジでやばくない?確かに年季入ってる感じだけど、全然汚れとかほこりも無いし石像もヒビ一つないよ?〉
〈みのみのみのみ〉
「確かに!まるで最近までずっと何かに使われてたみたいだね!」
「そういうことは口に出さない方がいいな〜それとも分かってて言ってるのかな?」
祭壇の奥の石像の後ろから黒い仮面をつけた男が現れた。
「第一発見者逃した〜くぅ〜」
「あれれ?なんか思ってた反応と違う…君の雰囲気ただの探索者じゃないね?
あぁそういう、憑かれてるね君。使いこなせては無さそうだけど」
「ちょっと疲れてますね〜。くたくたです。
声からして男の人ですか?
全身白いのになんで仮面だけ黒いんですか?
そういうのかっこいいお年頃ですか?
右手だけフィンガーグローブつけてるのなんでですか?
あぁそうですよね。封印されちゃってるお年頃ですよね。
右手が疼いちゃいますよね。うちの弟もさいき」
「穿て
殺戮を撒き散らす雷鳴が神殿内に響き渡った。
雷でできた大槌が顕現し、招かれざる客に向けてはなたれた。
「うはっ効いちゃいました!?乙女の軽いジョークじゃないですか?美少女ジョークが荒んだ心にしみませんか?潤い足りてない感じですか?」
大きく後ろに飛んだみのり。
直前までいた地面には深々とした亀裂がはしっていた。
(はやすぎるっ本当にギリギリだったよ。
あぁヘルハウンドといい、謎のこの人といい、美少女の運命は茨の道だね〜。
けどヘルハウンドの時も今も不思議と負ける気はしないんだよね〜。
自信は顔に出るっていうからね。
自信を持つのは良いことだよね。
どうしようこれ以上美少女になったらモテすぎて困っちゃうな
気づいて世界私の魅力に、なんてね)
雷魔法は難易度が高く修めるには相当な修練が必要だ。
雷魔法を使った時点で相手の方が経験も実力も上だと分からされた。
ただ、ヘルハウンドの時とは違い最初から男の雰囲気や立ち振る舞いからは格下に対する余裕が感じられた。
(こんなに究極で完璧美少女の私だけど、見るからに学生の私に対して舐めプしてる感あるなこの人。さっきの魔法だって当てようと思ったら当てれたはず。
つけ込むならそこ。油断してるうちに終わらせるよ)
「中2にはみえませんね〜。いまおいくつですか?
全身に魔力を循環させ、速度を高める。
左から回り込むと見せかけて
途中で緊急停止、
短剣を男に投げつけ
身を低くし、さらに
「
加速魔法で限界まで速度を高め
投げつけた短剣と並んだと同時に
「
風の魔法をお見舞いする。
男は
「滅せよ
ただそれだけをつぶやいて
みのりの短剣も風の魔法も雷の一刀のもとに斬り捨てた。
「ごめんねお喋りは苦手なんだ。大丈夫。
死体になったら一杯愛でてあげるからね。
ゾッとするような声だった。
男の全身に雷が走った。
男の雰囲気が一変する。全身に重く男の圧力を感じる。
男が放つプレッシャーに押しつぶされそうになる。
背筋に嫌な汗が流れる。
(負けない、負けない、こんなとこで私)
雷を全身に纏った男を注視する。
一挙手一投足も見逃さんと。
それを嘲笑うかのように男はみのりの周りを
迸る稲妻のように駆け回り始めた。
(速い、速い、目で追えない。捉えたと思ったら消えて、目の端でさえもう捉えられない。いやだ、怖い、さっきはこんな気持ちにならなかったのに)
軽口を叩いていたがこの男を見てから、いや神殿に入ってから一切油断はしていなかった。
していなかったつもりだった。
(いや弱気になっちゃダメだ。気持ちで負けたら勝てるものも勝てないよ。私は勝つよ。だって私は完全無敵の美少女だからね)
「一瞬たりとも目を離さないよ。
美少女に見つめられてラッキーだね。厨二病さん」
男を観察し、瞼を閉じ、眼を開けて、観察し、瞼を閉じ、眼を開けて、
「大丈夫。痛みを感じる暇はないよ
目の前にいたはずの男が視界から消え、耳元で声がしたと同時にみのりの意識は沈んでいた。
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