第11話 上司の部屋への侵入②

薄暗い廊下を歩くリサ、ノア、イーサン、ソフィアの一行は、緊張感に包まれていた。廊下の先には、上司の部屋が待っている。彼らの息は白く、冷たい空気が一層不安を掻き立てる。リサは、持っていた古びた魔法の巻物を手にし、他のメンバーと共に、慎重に進んでいた。


「ここのセキュリティは普通のものとは違うわね。」リサが小声でつぶやいた。彼女は巻物を広げ、その上に刻まれた魔法陣をじっと見つめていた。


ノアが周囲を警戒しながら、リサの肩越しに巻物を覗き込み、「魔法の結界が施されている。これを解除しないと部屋に入れない。」と報告した。


イーサンは、壁に取り付けられたセキュリティ装置をじっくりと調べていた。「古代の符呪が使われている。これを解くためには、正しい呪文を唱える必要がある。」彼は、手にした呪文書を開き、目を凝らして文字を追った。


「もう少しだ。」ソフィアが声をかけた。「私たちがこの作業を終わらせれば、アレックスに情報を伝える準備が整うわ。」


リサは巻物の上に魔法の粉を振りかけ、光る文字が浮かび上がった。その文字は次第に青白く輝き、部屋のセキュリティ結界を覆っていた魔法の障壁が、じわじわと透明になっていくのが分かった。


「これで結界は解除できた。」リサがほっとした息をついた。「ノア、イーサン、準備はいい?」


ノアとイーサンがうなずき、ソフィアが周囲の警戒をしながら、リサが魔法の結界を完全に解除するのを見守っていた。


リサが慎重に扉に手をかけると、内側の機構が静かに動き、扉がゆっくりと開いた。部屋の内部は暗く、微かな光が家具の上に長い影を落としていた。彼らはその中に慎重に足を踏み入れる。


「目立たないように、できるだけ音を立てないで。」ノアが低い声で指示した。彼らは音を立てず、部屋の奥へと進んでいった。


部屋の中には、上司の机が中央に置かれており、その周りには大量の書類や帳簿が積み重なっていた。壁には巨大な本棚があり、様々な古代の書物が並んでいる。


「ここから情報を探し出さないと。」リサが言い、机の上に積まれた書類を手際よくめくり始めた。


イーサンが本棚を調べ、古びた書物を慎重に取り出して調べていた。「何か手がかりがあるかもしれない。注意深く見てみよう。」


ソフィアは、周囲を見回しながら警戒を怠らず、誰かが部屋に入ってくるのを防ぐために立ち番をしていた。彼女の表情は緊張の色が濃く、目は常に動いていた。


「この書類の中に何か手がかりがあるかも。」ノアが書類の束を取り上げ、素早く目を通していた。


突然、ノアの手が止まり、一枚の古びた文書を引き抜いた。「これだ。これが上司の計画に関する情報かもしれない。」


「その文書を見せて。」リサが急いで駆け寄り、文書をじっくりと確認した。「これがあれば、アレックスに真実を伝える準備が整うわ。」


チーム全員がその文書を確認し、重要な情報を読み取るのに集中していた。静かな部屋の中で、その時間はとても貴重だった。彼らが見つけた情報が、アレックスと彼のチームにとって何を意味するのか、そして次にどのように行動すべきかが、まさにこの瞬間に決まろうとしていた。

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