第12話 エレナの決断

遺跡の出口を目指して進んでいたアゼルたちは、ついに外の光が見える場所までたどり着いた。古代の扉を押し開け、外の新鮮な空気を吸い込んだ瞬間、彼らは広大な森の中に出た。空は青く澄み渡り、鳥のさえずりが心地よい。


「ようやく外に出られたわね」とエレナが安堵の声を上げた。


「ここからが本当の冒険の始まりだ」とカイルが笑顔で答えた。


アゼルは周囲を見回しながら、「この森を抜けて次の目的地に向かおう。新たな力を手に入れた今、私たちにはやるべきことがたくさんある」と言った。


しかし、アゼルの表情には何か考え込んでいるような影があった。エレナはそれに気づき、彼に近づいた。「アゼル、何か気になることがあるの?」


アゼルは一瞬ためらったが、やがて決意を固めたように頷いた。「エレナ、君に話さなければならないことがある。」


エレナは不安げに彼を見つめた。「何かしら?」


アゼルは深く息を吸い込み、ゆっくりと話し始めた。「エレナ、君はこの旅を通じて多くの危険に立ち向かってきた。でも、これからの戦いはさらに厳しくなるだろう。君は人間であり、この旅は君にとってあまりにも危険すぎる。」


エレナは驚きと悲しみを交えた表情で、「それって、私がここにいるべきじゃないと言っているの?」と尋ねた。


アゼルは静かに頷いた。「そうだ。君の安全を考えれば、人間の村に戻ることが最善だと思う。君にはまだやるべきことがたくさんあるし、人々を助ける力もある。ここで別れるのは辛いが、君の未来のためにはその方がいい。」


エレナの目に涙が浮かんだ。「でも、私もみんなと一緒に戦いたい。君たちと共に歩んできた道を、ここで終わらせたくない。」


カイルもその会話を聞き、心を痛めながらもエレナの肩に手を置いた。「エレナ、君の気持ちはよくわかる。でも、アゼルの言う通り、君の安全が最優先だ。」


ソリテールも冷静な表情でエレナを見つめ、「私たちは君のことを心から大切に思っている。だからこそ、君に安全な場所で未来を築いてほしいんだ」と言った。


エレナは涙を拭いながら、決意を固めた。「分かったわ。みんなの言う通りにする。でも、いつかまた会える日を信じているから。」


アゼルはエレナに微笑みかけ、彼女の手を握った。「もちろんだ。君のことはいつも心に留めている。君も強く生きてくれ。」


エレナは深呼吸をし、微笑みを浮かべて頷いた。「ありがとう、アゼル、カイル、ソリテール。みんなも気をつけて。」


彼らはエレナを見送りながら、それぞれの心に決意を新たにした。エレナが安全な道を進んでいくのを見届けた後、アゼルたちは再び冒険の道に戻った。


「これからも試練は続くだろう。でも、私たちなら乗り越えられる」とアゼルは仲間たちに言った。


カイルとソリテールもそれぞれに頷き、次なる目的地へと向かって歩みを進めた。彼らの旅は続き、未知の未来に向かって一歩ずつ進んでいくのであった。

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