聖女じゃないのに召喚された俺が、執着溺愛系スパダリに翻弄される話

８ 三大要素は大切です

この際細かいことは気にせず便利な機能は使っていくという事にして、生活に必要な三大要素のうち二つ「衣」と「住」は揃った。

残る一つ。

そう、一番大事な「食」だ。

色々見た感じ、この家のどこにも食糧は無かった。俺の収納の方にもなかったしなー。

カミサマは食事なんかしないのかね？

さ、て。

食糧が無い、という事は。

どこかから手に入れるしかない。

希望は、どこかから買う。でも、ここは異世界。しかも森の中。スーパーもコンビニも商店も無い。

となれば自分でどうにかするしかないという訳で。

水は魔法で確保出来る事は分かってる。

だからそれ以外。

慣れ親しんだコメがあれば一番いいが、あれは自然に出来るもんじゃない。

適切な管理がされているからこそおいしいお米が出来るんだ。

「うーん・・・」

サバイバルなんて、ほぼやった事無い。

まともにそれっぽいのは臨海学校のキャンプで、細い棒をひたすらクルクル回して土台の板に擦り付けて、やっと出来た火種を綿みたいのでくるんでフーフー風を送って火おこしをした、あれ１回くらいだろう。あれは疲れた。疲れ果ててみんながカレーの準備してる間の火の番でうっかり寝てしまってせっかく作った焚火を消してしまったくらい疲れた。消えた火は先生がチャッカマンで点けてくれたよ。

文明の利器は最初から使おうよ！！思わず突っ込んだよ。

ああ、話が逸れた。食料だよ食糧。

水はどうにかなる。

しかし水だけで乗り切れるのはせいぜい３日が限度だろう。

動けなくなる前に食料をどうにかしなければならない。

だけど・・・。

うん。今はそんなに腹減ってないし、明日森に出掛けよう。

・・・今日の今日で森に入るのはちょっと勇気が出なかったんだよ。

だって、森だよ？

自然と戯れた事などロクに無い俺が！

ハイキングなんて楽しいもんじゃなくて、生きるために、下手したら死んじゃうかもしれないガチの森に入って食料を探さなきゃなんないんだよ。

ビビるのも当たり前だろ？

可愛いウサギさんしかいない平和なとこならいいけどさ、森ってそんなじゃないじゃん。

毎年山菜取りに入った人が熊とか猿とかに襲われてんのニュースで見るよ？

ましてやここは俺が知らない世界で、最初に会ったリスだってなんか狂暴そうな見た目だった。

地球じゃ可愛いと評判のリスがあんなんじゃ、他の動物はどうなんだって話だよ。

はあ・・・まずはちょっと魔法の練習しよう。

万が一動物に襲われた場合、手持ちに剣とかナイフあっても俺使えないし。

こっちの世界、弓は一般的じゃないのかな？

多少ブランクがあるとはいえ１０年近くやった弓ならイケると思うんだけど。

とりあえず、素材があったら作ってみるのもいいかもしれない。

・

それからの時間。

着たままだったスーツからカミサマがくれた服に着替えて、家の外で魔法の練習をしてみた。

？マークのウィキ擬きさんはとても優秀で、超初心者質問にも分かりやすく教えてくれた。

最初の言葉がブルースさんだった時にはどうなのかと思ったけれど、今や俺の師だ。機械？だけど。

どうやらウィキ擬きさんは俺と記憶を共有しているのか、俺が分かりやすいように適切な言葉を選び説明してくれた。

そして色々教わって分かった事。

それは、やっぱり魔法は自身が持つ魔力をどれだけ明確にイメージして力として出せるかがミソらしい。

地球は映像技術が発達していたから、実際に使った事は無くとも映画やドラマで魔法のような現象は見慣れている。

宇宙のお姫様がヒーロー達とチーム組んで黒い兜をかぶった悪の総統と戦うシリーズも、イギリスの魔法使いの映画も、レンタルだけどシリーズ全部見た。

魔法を使うにはそのイメージが大いに役立った。

杖は使わないけど、指先から一気に鋭く魔力を放出すれば自分の腕くらいの太さの木ならば粉砕することが出来るようになった。

魔力量とレベルの高さから、練習すればもっと大きな魔法も使えるようになるらしい。

風魔法の竜巻に水や炎の魔法を掛け合わせたり、結界の中だけを炎で焼き尽くす・・・とか。

そんなデカい魔法を使わなきゃならないほどの敵には遭いたくない。

ああ、ウィキ擬きさんのとこには色々な技の名前があったけど、それは全部カタカナで、２６の俺が口に出すのを想像したら思わず自分で引いたからそこは日本語でやらせてもらっている。

『ウォーターガン！』なんて、叫びたくない。それ、水鉄砲だからな？

夕方になり少し疲れてきたところで、そろそろやめるかー・・と空を見上げると、上りきっていない月が見えた。

・・・みっつ。

ああ・・・。

ここだけ見たら普通に森にいるだけの感覚だったけど、やっぱここって異世界なんだな・・・。