6 基地を作ろう②

手の上でくるくる回り続ける水の球。




さて。


浮いたままのそれを指先に移動させ。

これを、


・・・・撃つ!!


的は、原っぱを挟んだ木の幹。

横に走る傷がある。その中心。

イメージは、慣れ親しんだ弓。

身体を流れる魔力を指先に。

水球を押し出すように一気に集め放つと、水の塊が的にした木の中心に当たった。

当たりはしたけど。



「・・・んー・・・」



ちょっと違う・・・なー・・・。

木の幹を貫くイメージでいたそれは、実際には水鉄砲でプシューっと撃ったくらいの勢いしかない。



「うーん・・・」



悩みながらもう一度水球を作る。

・・・球技は苦手なんだよなー・・・。

そう思いながらも腕を振る。

イメージは野球のピッチャー。やったことないけど。

そして。

ロクに見たこともないものを、イメージだけで実行に移した結果は推して知るべし。



「・・・やっぱだめだな」



水球自体は飛んで行った。

当たった先は狙った木の二本隣の木だ。

ピシャ。と勢いもなく。

カップルがプールで水を掛けあうような、あのくらいのヒョロヒョロさ。



「・・・うん、潔く諦めるか」



魔法が使えただけでも進歩だ進歩。

でもこれじゃいつになったら家を設置できるのか。

今日中にどうにかしないと、自宅を横に見ながら野宿になってしまう。

それは嫌だ。


ちょっと、ほんの2、3本だけ木が移動してくれるだけでいいのだ。

広い庭は求めていない。

こちとら2LDKのマンション育ちだ。自宅に庭があったことなど無い。



「燃やす、・・・は森林火災になるっつ-の(笑)」



移動、移動ねえ・・・。


多分無理だろ(笑)


そう思いながら邪魔な木に両手を触れさせる。

魔力を纏いながら、木を抜くイメージで両手を上げると。



「・・・マジか(笑)」



ボゴッ・・と根ごと浮き上がった。

重さは感じない。

きっと何らかの魔法が作用しているだろう。

なんだか色々書かれていて全部は覚えきれていないけど、出来たという事はそういうことだろう。

深く考えても、目の前の現実が荒唐無稽すぎて理解できん。

木を持ったまま少し歩き、適当なところで下ろす。

根は勝手に土の中に埋まっていった。


うん、理屈はさっぱり分からんけど魔法って超便利(笑)


数度同じことを繰り返し、出来たスペースに倉庫から出した家を設置した。


え?どうやって出したかって?

あの黒いとこに手を突っ込んで「家」っていったら引っぱり出せたけど?

理屈なんて、考えたら負けなんだよ!


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