第216話 アナザーガール
新婦のジェシーが出て行ったのと入れ替わりにぺぺさんが入って来た。
いやいや、新婦父なんだから向こうに行かないとダメでしょ。
話は聞きたかったけども。
「悪いなぁ、ラルフ。
親父がさぁ。
ウチの親父さ、不器用で有能だから手に負えないんだよ。
俺が聖花に名前が入ってるのも、サシュマジュクさんが名前が入っているのも、元はといえば親父の身内贔屓が過ぎるのが原因でな。
悪い人じゃない。
悪い人じゃないんだが、家族愛を手柄に変換するんだよ、勝手に。
お前ならよく分かるかと思うが、必要以上に持ち上げられるのは重荷だろ?
自分にも周りにもよくない影響が沢山ある。
それを無視できるほど有能か、鈍感なら良いんだけどよ、普通の精神してたらそうもいかないってもんだろ?
だから俺は上司と折り合いが悪かったし、サシュマジュクさんはシャルル様と仲が悪かったんだよ。」
は?
生徒の取り合いで仲悪かったんじゃないの?
「いやいや、両方とも教育者としては優秀なんだから話し合えば解決する事だろ?
それすらしないほど仲が悪かったんだよ、元々な。」
なんでよ…。
ウマが合いそうなもんなのに。
「あぁ、そうだな。
俺もそう思うよ。
ただなぁ、シャルル様と親父が小さい頃から仲良くてなぁ…。」
あー、確かに話を聞く限りではその2人は同じ属性だねぇ。
お父さんは理性と優しさがあるけど、この状況とシャルルさんの性格からして、やりたいことを優先するもんね。
「あぁ、そんな感じ。
真面目なサシュマジュクさんが、クソガキコンビの尻拭いをしてたんだってよ。
知略の兄と剣術の天才コンビだぜ?
大変なんてもんじゃ無かったろうよ。」
わお、それはやばそうだね。
…そう言われてみたらやり口が一緒だ。
気に入ったヤツはとことん可愛がるのに手段を選ばない感じが。
…あんなにべしょべしょに泣いてたお爺さんがそんなヤバい人には見えなかったけどなぁ。
「いや、12歳の孫を結婚させようとしてるのはヤベェだろ。」
ん?
誰が12歳?
「俺の娘。
ジェシーがよ。」
えぇええ!
今日一番びっくりしたわ!
年上だと思ってたよ!
「あぁ、背が高いから大人に見えるよな。
離れてる間に大きくなって泣けたぜ。」
うん、まぁ、背がと言うか…うん、あの、父親の前ではとても口には出せないけど、小6のサイズ感では無かったよ、とてもとても、ありがとうございます。
あぁ、あの意味不明な受け入れ体制は子供だからか。
「それと祖父からのプレゼンが良かったんだと思うわ。
まぁ、安心してくれよ。
このバカバカしい状況を変える助っ人を呼んでるから。
サシュマジュクさんも来てたろ?
引率で。
いやぁ、トランブレーさんとそっくりだからなぁ、従姉妹ながら。
あ、そういえばお前も従兄弟って事になるんだな、なんか笑えるぜ。」
そうなるね。
…って事は我が姉ティナさんが来てるのね。
確かにやり口は同じ感じがするよ。
弟を勝手に持ち上げて逃げ場をなくす感じとか。
「そうそう。
我が家の知略担当だからな。
…ところでよ、逃げきれなかったらなんだが…。」
ん?
なに?
「とりあえず一発殴らせてくれよな!
娘の夫になる男は絶対に殺すって思ってたんだけどよ、お前だから殴るだけにまけておくよ。」
はいはいはいはい。
…それは理不尽すぎない?
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