転々転生

まつり

転生して転生されて転生した

第1話 初めての転生

なんでも一つだけ、あなたが望む能力を与えましょう。

その他は普通の人間と変わることはありませんが、望んだ力が与えられるのです。

有意義な人生を楽しんでくださいね。


真っ白な空間で、優しそうな男性にそう言われた僕は悩んだ。

丸一日悩んだ。

そもそも死んでしまったことを受け入れるのに6時間ほどかかった。


その間、神様には愚痴を言ったり、相談をしたり、なんとか元の人生に戻れないか話してみたり、あまりにすべすべそうな手を触らせてもらったりした。


すべすべだった。


神様はなんだかんだと付き合ってくれて、考え事をする時はボール投げたりしてたなぁなんて言うと、光の玉を生み出してキャッチボールの相手をしてくれたりした。


初めての投球なのに、僕の身体を貫通させるほどの豪速球を投げた時は、死んでいるからか痛くなかったし、それよりも、やっぱ神ってちげーな!と思ったのが先だった。


僕の身体に穴が空いたり治ったりを繰り返して、神様が変化球を投げ始めた頃に


「転移とかワープみたいなやつなんていいんじゃない?」


と思った。


転生先にモンスターが跋扈するような環境だとしても瞬時に逃げることができるし、安全な世界でも色々便利に使うことが出来るからね。


「そいじゃ神様、そろそろ行くよ。

散々悩んで待たせちゃってごめんね。」


神様がにっこり笑って右手を挙げると、身体が光に包まれ始めた。


「あなたのこれからの人生に幸多きことを願っていますよ。


何千年も神ですが、直接話せるほど相性のいい方は初めてでしたので、私も楽しかったです。


それでは、はじめに降ろす場所は治安のいい都市の教会です。

転生直後は周りに人がいない状態にしておきますので、その後の行動はお任せします。

貴方が天寿を全うした時また会えることを楽しみにしております。


それまでに新しい変化球も覚えておきますね。」


ありがとね、と言おうとしたが気がつくと祭壇の前にしゃがんでいた。


お礼は直接伝えたかったな。

そう思いながら外に出て周りを見渡すと、ここが街外れの小高い丘にあり、後ろは森に囲まれた教会だということがわかった。

外は薄暗いが明るくなってきていて、太陽が上がって来ているのがみえるので、現在は早朝なのだろう。

そんな時間に人が来ることはそうそうなさそうな場所だ。


「城かな?あれは…」


街は城下町の様で、ちょっと遠くに見える門の前には兵士がおり、まずはあの人達を頼ってみてもいいかもしれないと思った。


「でもやっぱり人がいないうちに能力の確認しないとなー。」


瞬間移動をもらったがどの程度使える能力かわからないし、もしあの兵士やこの街の人たちが悪人であったとしても、能力を把握していれば逃げられるだろう。


いい目印がないかとあたりを見回すと教会から100mほど離れたところに5mほどの高さの鐘楼があり、その塔の頂上へ行くのがちょうど良さそうだ。


うふふ、初ワープだ!


ハッ


気合いを入れて飛んだはずが目の前が真っ白になり、目の前には困った顔の神様がいた。


「流石にまだ変化球はおぼえられてないですね…。」


え?

死んだ?

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