11月1日(木)(37日目)
この世にはどうしてこうなったと言わずにおけないことがある。我が三角関係もその一つであろう。義妹派、マッチョ派と別れ、競い、一喜一憂する構図の摩訶不思議さといったら世界三大神秘と呼ばれてもいいだろう。選択権があるはずの俺の想いは義妹派に属する麗しの君に向いていて、その神輿たる義妹にはさして興味はない。似たようにピアス女もマッチョに気持ちを向けているが、そのマッチョは俺へ強い気持ちを持ち続けている。なんと誰も幸せにならない構図であろう。
ピアス女と手を結ぶことになるのは必然だったともいえる。唯一、俺と利益相反しない学外の人間ということでトトカルチョも関係ない。知らぬ存ぜぬ、出るとこ出てもええんやでができる人間として。
そんな二人ぼっちのレジスタンスは本日、第一回作戦会議を開くこととなった。
場所は専門学校の教室。女装ミスコン二位を獲得した俺は専門学校の講師陣からの覚えもめでたくなり、顔パスする権利を得た。その代わりに丁度いい題材として、授業の実験台になる約束を取り付けられたが。
ここ二日の出来事をピアス女に俺が持ち得る演説能力を全て駆使して雄弁に、情緒的に、助けを求める子犬のように語ってみせた。けれどピアス女は極めて冷たく「大学生って馬鹿なの?」と盛り上がりを見せるトトカルチョに疑問を呈した。
これには「大学生なんて人生の夏休みだとばかりに浮かれ遊んでる馬鹿野郎ばかりだと相場で決まってる」と本学が殊更馬鹿ばかりなのを隠して答えを披露しておいた。
作戦会議の内容であるが、俺と義妹がくっつけば自分は丸儲けなのではと気づいてしまったピアス女を説得することに終始した。こやつ隠れ義妹派であった。
幸い、ピアス女とマッチョとの仲を取り持つという協力条件は魅惑的であったらしくこちらの条件を呑んでくれた。途中、諦めずに「義妹はいいぞ」と説得をかけられそうになったがそこは腐っても大学生。馬鹿で阿呆で脳内ドスケベピンクでも、中高時代に築き上げた知性の貯金でどうにか押し切った。ちなみに大学に入ってからはその貯金を切り崩すだけの日々なのは言うまでもない。
もはやナマクラとなった頭しかない俺とピアス女では良き解決方法など思いつくはずがない。あまりにも思い付かなすぎて「マッチョに睡眠薬飲ませて既成事実作るのが手っ取り早いな」という犯罪行為に手を出す寸前までいった。
犯罪行為に走らずに済んだのは丁度煮詰まったタイミングでとあるメッセージが届いたからであった。
それは義妹からのもの。
内容は次の日曜に俺、義妹、マッチョの三陣営集まって紳士協定を結ぶために会談の場を設けようというものであった。来なければ俺の意見はなかったことにするのは明白であり、拒否権などない。わざわざ呼んだ理由は後々のシコリを残さないためであろう。
ただでさえ複雑な三角関係なのに面倒ごとが増えてきた。
どうしてこうなった。
すべては俺が美しすぎたせいだろうか。
まったくもって罪な男である。
ああ、面倒くさい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます