第二十二話ー大晦日のお昼二~梶原家~ー

 ゆっくり話ながら、オレと夏芽は南商店街に向かった。途中、商店街の入口の大手のコンビニっぽいところに入って年越しそばの用意や日用品を買った。


「なんか、こうしてると、わたしたち、結婚したみたいですね」

「け、け、結婚!?」


「迅くん、声が大きいどす」

「わっ、咲良さん」

「夏芽ちゃん、結婚は『好き』とか『愛』が大事なのはもちろんの話だけど、相手の価値観が似ているとかも大事どす」

「はいっ!! きっと、迅くんはいい旦那になってくれます!!」


 『それなら大丈夫だろう』と言って宮古さんはライターに火をつけてタバコを吸い始めた。『まったく、迅くんのせいでバットエンドの小説の余韻が台無しか、いや、でも……』と宮古さんはブツブツ言って立ち去った。オレは鮮魚のはなまるの方向に向かって歩いていった。


「あれ?」


 夏芽が不思議そうな顔をしてオレを見ていた。


「迅くん、そっちはお店であって、家ではないよ」

「え?」

「元々は家もそっちにあったんだけどさ、いろいろあって、お父さんの代からお店と家をわけることにしたらしい」

「へ~、いろいろあるんだな」


 家庭の事情には恋人と言っても、深く首を突っ込んではいけないところがある。夏芽の家はマンションで、オートロック式だった。


「おじゃまします」

「およ、なんとかくんじゃないか」

「どうも、その節はお世話になりました」

「え……、お姉ちゃんは迅くんとはじめましてじゃないの?」

「うん、クリスマス会の前に、商店街でまみっちと一緒にいるところ……、なんとかくん、あれは浮気?」

「へー、麻実センパイと……、迅くん、詳しく話聞かせて」

「ま、お姉さんとはクラスメイトだしね、というか、クリスマス実行委員の……」

「わっ、わっ、大丈夫、迅くんのことは信頼してるから」


 玄関で話していたら、忠さんが『よう、来たな、広瀬、いや、息子よ!!』と寄ってくるし、お姉さんはお姉さんで『えー、クラスになんとかっていたっけ?』と言っているし、仲のいい家族だなぁと思った。世間一般の家族にしては、が足りない。ただ、この状況で考えることでもないか。


「さ、さ、早く部屋でくつろご」

「夏芽と有紀は先にあがって、おでは広瀬と少し話したい」

「はーい」


 お姉さんは、『行こっ夏芽』と言って玄関から奥へと行った。


「なにかあったんですか?」

「ありがとう、夏芽がここまで毎日楽しそうなのが、おではすごくすごく嬉しい」

「ボクは特に何かしたわけではないので……」

「いや、息子のおかげだよ」


 忠さんはすごく嬉しそうに、奥に入っていった。


「息子もはやく」

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