第2章~クリスマス~

第8話ークリスマス会実行委員1~同い年の友達と年下の嵐~ー

 時期は10月末が近づいてきている。


 もう引っ越して1ヶ月以上経つのかぁとしみじみ物思いにふけていた。その間にオレは1歳、歳を取って16歳になった。それ以外にも思う節はあるのだが。


「寝るか」


 SNSに呟いたのが夜中の3時だった。オレとしてはまだ0時な感覚だった。


「迅君、おはよー」

「ん、あぁ、麻実さんか、おはよう」

「さすがに3時まで起きてたんだから眠いよね」


 麻実さんともこの1か月でさらに仲良くなり、『迅君』もしくは『迅くん』と呼ばれるようになった。この差は何だと言われたら、ダルそうなときは『迅君』、それ以外が『迅くん』といった感じだ。実際のところどういう意味の『くん』で呼んでいるかは麻実さんしか知らない。


「え? オレ、昨日、0時に寝たと思うけど」

「何言ってるの? SNS、3時に更新してたよ。ほらっ」


 麻実さんは歩くのを止めて、スマートフォンのSNSのオレのタイムラインを表示した。


「ホントだ、寝ぼけてたのかなぁ」

「どうなんだろうね」


 友だちだから、どちらからということもなく歩調を合わせて一緒に登校していた。初めて宝賀の中で久賀を見た時と同じ場所、今度は嵐がやってきた。


「迅せんぱーい!!おはようございます」


 やはり、久賀だ。


「お、おう、久賀」

「おはよう、梨絵ちゃん」


「ひどくないですか?」

「何が?」


 別に久賀にひどいことをした記憶はない。連絡は返したし、今もあいさつを返した。いや、オレはあいさつは返してないか。


「おはよう」 

「むー」


 いやいや、久賀さん、何に怒ってらっしゃるんですか?


「彼女であるウチに対してそれだけですか!?」

「彼女!?」 


 麻実さんが横で驚くと同時にひいてるのが見えた。


「迅君、中高一貫だからって中学生に手を出すのはどうかと思うヨ」

「手を出してねぇよ!!久賀も変なこと言わない!!」

「む~。昨日、ウチに『好き』って言ったじゃないですか」


 ん? と思い、昨日の自分の発言を思い返していた。確かに、寝るギリギリまで……久賀とチャットをしていた。


 ということは、久賀も寝不足か。


「久賀、寝不足なんだ。しっかりしな」


 オレはそう言って久賀の頭をポンとして教室に向かった。


「迅くん、いいの?」


 いいんじゃない? そう返した。久賀も素直に中等部の棟のある階を目指していった。あれ? 確か、中等部ってこの階のもう1つ下の階だったような……。


「夏芽ーおはよー」


 久賀の友だちだろうか……? この子も何故高校生の階というか棟にいるのだろうか……? 彼氏でもいるのか?



 今日はやたらメイクに力を入れているっぽいのにいつもより肩の力が抜けている担任の藤原先生がやってきた。


「はぁ、今年もやってきましたよ、って、そうか、1年だし、内部進学が異常に少なかったから、あんま知ってる人いないか。成績に一切響かない、先輩後輩、先生生徒、関係なく無礼講のクリスマス会の実行委員のクラスが高校では私のクラス1年5組ですよ。中学は3年だったな。かわいそうに受験があるのに」


「多奈川さん、それってどういうの?」


「はい、今しゃべった広瀬!! 転校生だからって容赦はしない。実行委員な」


 男子はヨシッと喜んでいる生徒が見受けられた。


「先生、それはあんまりだと思います!!」

「多奈川、これはこの学校の変な伝統なんだ」


 道理で普段なら『よっしゃぁ!! と喜びそうな生徒もいるのに……』と思っていた。確か、あの生徒は内部進学なのに友だち少なかったよな。オレが実行委員とかやるのならここ3年の情報を聞こう。


「それなら、私も実行委員やります!!」


 結果、多奈川さんとオレとで実行委員になった。どんなクリスマス会になるやら。10月末から準備するとなるとしっかりしたものにしないといけない。藤原先生は授業のため別クラスに移動しようとしているところを麻実さんが呼び止めて廊下で話しているのが見えた。


 4時間目は、数学Aだった。正直、教科はなんでもいいんだが。数学Aの先生が授業終わりに、広瀬くんと多奈川さん、麻実さんは職員室に寄ってから昼休みね、と言って終わった。


 なんだろう、なにかやらかしたっけ? と考えていた。


 職員室に行くと、学年主任が、これ、特別棟の準備室の鍵とだけ言ってきた。


「え?」 


 3人とも顔を見合わせていた。学年主任も『え?』という顔をしていた。


「あれだな、クリスマス会の実行委員はこの時期からクリスマス会前後まで昼休み、放課後は特別棟で打ち合わせしていいから」


「楽しい会にしてしてくれよ!!」


 英語の教師が戻ってきてオレたちと入れ違いに言った。

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