遠花火
菫野
遠花火
わが胸ゆあふれこぼれる夕映えをマンゴーの
翡翠とふ歌集をヒスイと読んでみるとき胸の奥涼しくなれり
蛇口よりしたたるもののやうにしていまこの部屋は銀河より落つ
腰にする、とベルトを巻いて立ちあがる鳥の名前の少女が
髪に飼ふ鳥の卵を割るごとに夜が生まれる 一羽二羽……五羽
六羽目の鳥が啼くときわたくしの翅与ふべき脚与ふべき
破裂した夜の心臓やもしれぬ紅きちひさき遠花火見ゆ
残酷なことおもふとき晴ればれと日記を閉ぢる夜あることを
生まれ出でし日のさみどりのペディキュアをずつと憶えていますよ、ママン
冷蔵庫にたまごを六つ並べをりほのじろきドアふともさびしき
遠花火 菫野 @ayagonmail
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