7,一人の医師の告白
僕は全てを包み隠さずに、両親へ伝えた。僕の前世、石松丸くんとの約束、何もかもを淡々と、正直に話した。
最初は驚いていた両親だが、話しが進むにつれて、違った感情を出すようになった。
全てを話した後、僕は言った。
「そんな僕でも、お二人は家族として、一人の医師として扱っていただけますか」
秀吉とーさんは、晴れやかな笑顔で言った。
「もちろんだ!」
寧々かーさんは、泣きながらも、うんうんと頷く。
……え。余りにもあっさりと、本当にあっさりと話しを信じてもらった。怖い。逆に怖い。
不安に思った僕だったが、両親はそれさえも吹き飛ばした。
「前世があろうが、そうで無かろうが、
と、究極の俺様理論を言うのは、秀吉とーさん。
「あの子なら、絶対あなたに託すはず。
私には、それが分かるんです」
と、究極の母性理論を言うのは、寧々かーさん。
……この二人の器、デカすぎない?確かにこの後、天下をとるだけあるわ……。
「ありがとうございます」
そう言って、僕は一旦頭を下げる。だが僕の本当の目的は、カミングアウトして、真の意味で家族の一員となることではない。
「父上、母上、もし腕の良い医師がいらっしゃらなかったら、僕が於竹を診てもよろしいでしょうか。
そしてその際、方法は僕に任せていただけないでしょうか」
永田先生は、放浪の医師だ。いつも、ここの近くにいるとは限らない。
僕の雰囲気を感じ、一転して真剣な顔になった秀吉とーさんは言う。
「それで、於竹を救うことができるのか?」
「医師とは、患者様を救うために存在しています」
僕は、秀吉とーさんに負けないくらい意志のこもった目で、見つめ返した。
🩺 🩺 🩺
説明もそこそこに、一人前の医師扱いをしてもらった僕は、早速竹ちゃんの診察を始めた。
「於竹、どこか痛いところはない?」
ゴホゴホ言いながら、竹ちゃんは胸をしっかりと押さえた。更に、
「コホッコホッ。
あと、つかれる」
とも言った。恐らく、体がダルいと言いたいんだろう。
「ありがとう」
と言い、その他の体の部位も診る。
僕の手を竹ちゃんのおでこにあてると……、熱い。37℃の熱は、確実にある。
更に、手足は普通の太さより、確実に細い。そういえば、今朝もあまり食事を摂っていなかったな。
口の中から喉を診ると……、
一見すると、ただの風邪。でも、他の病気の可能性もあるし、既に新たな病気に感染しているかもしれない。
……道具が、道具が足りない!聴診器一つあれば、この場で肺炎か、そうではないかが分かるのに!
今の時点では、何とも言えなかった。悔しく思いながらも、冷静に僕は小姓ズに指示する。
「於竹が丁度良い温度になるよう、こまめに訊いてくれ。
水分をなるべく摂らせるように、ただし本人が断った時には無理強いをしないで。
食欲が無くて吐き気がある時は、固形食は控えたほうが良い。
でも食べれる時は、普段通りに。
お吸い物でも良いから、毎日とにかく何かを食べさせるように。
……一気に指示したから、後で紙にまとめておくね」
「「はい」」
この時代に、点滴はない。飲み食いできなくなったら、即人生終了の世界だ。それでも僕は、患者を救いたかった。
「じゃあ、またね」
僕は一旦、その場を去る。やるべきことは、山程ある。
まず僕が挑戦するのは、聴診器や顕微鏡といった医療で最低限必要な道具作りだ。
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