オーロラ・アンジュレーション

釣ール

第1話:現代のしあわせに疑問をかかげん!!

 ふう。

 どことは言わないが高い位置からながめる景色は気持ちがいい。



 なるべくインターネットは使いたくないのだが日本のサブカルを少しかじってしまった以上はどうしようもない。



 なんだっけ?

 こういう心理学を日本人で例えると

『病みあかを見ない方がいいと分かっていても見てしまう心理』

 というらしい。



 別に他の国で起こってることだからどうだっていい。

 だが日本人どうしの考察やら意見の押し付け合いのみにくさはそこに住んでいなければベタな表現になるが檻にいる肉食動物をながめる心理に近い。



 少しだけSNSでリージョンを変え、日本に行き世紀末的な環境と適度にいるクズをながめている。



 そこで昔から仲良くしている日本の友人が送ってくれている情報を読んでいた。



 秘密が昔から多くて共通項がメジャータイトル漫画を好きだったからという理由で二十三となったファイリン・グランス・ダミーテイションはおそらく二つか一つ下の日本の友人に母国では使っているブラックジョークを言えずにいた。



 だが友人はそんな自分をつまらない男とは言わないでくれた。



 また日本に住んでる外国籍の友人とも話すことは多いが日本に染まることはなく働き場として割り切っているためそれはそれで共通の趣味がなくてつまらない人間関係を送っていた。



 内容がいつも恥ずかしいのでここでは言わないようにするが一応ファイリンは格闘家で競技として楽しんでいる。



 本当はカースト上位の連中を蹴りで倒してその映像を見せまくり自分だけの承認欲求を満たすことで引退しようとしていた。



 金はコロナ禍を乗り越えたから充分ある。

 あとはなるべく日本人に教えられる程度の英語を難解なんかいにして小遣い稼ぎでもしようと考えた。



「いや、彼に怒られるか」



 差別的な気持ちがないわけじゃない。

 単純に気に入らない。


 人間関係ってものが。



『同じ趣味や共通の環境を持っていてもかたよれば差別となって場所は崩壊する』



 どの国に行ってもせまりくる壁と歴史には分かりあえない証明しょうめいばかりだ。



 せっかく日本の友人にしか聞けない治安が良い場所でのアンダーグラウンドの居心地がよくて何度移住を決意しただろうか。



 だが日本の世紀末っぷりを外からながめるには今の環境でも充分だ!



 でもなあ。

 英国人が日本からサブカルばっかあがめてると思われるのも時代遅れって教えてあげないといけない気がする。



 日本の友人もそれは理解してくれているみたいだし。



 なんだかんだと理由をつけては連絡を取りあっているのはその友人だ。



 話し合っているうちにたがいのかかえている生きづらさの話にもなってきた。



 なら親しき仲にも礼儀ありというジャパニーズ精神の元、一度日本に行く理由として友人に会い行こうと決めていた。



「幸せをうたがってる者どうし、お茶でも飲もう」



 飲み残しに薬を入れられる確率が低い場所で趣味と国籍しかわからない性別不明の友人と楽しんでいく。



 これぐらいスリルがないと楽しめないのも辛い話だ。




***



 衰退がさけばれることに対してそうじゃないと反論していた人間たちも数多くのものが賛同さんどうか。



 どいつもこいつも嘘が上手いし金を欲しがる。

 それはファイリンも同じ考えだった。



 空港のチェックも年々厳しい。

 日本に仕事や試合以外で来たのは初めてだが他の国じゃ理不尽なチェックにいらだちと笑いが込み上げてくるのだから本当に大変だった。



 じゃあ性別不明の日本人へ連絡するか。

 到着したことを伝えて待つだけだが。



「へえ。東洋の人達と関わることが多くてびっくりしたよ。」


 ここが大事なんだ。



「女性じゃなくて残念だったね」



 やっぱりネカマか。

 中性的な喋り方を日本語でも英語でもしてくるからコンプラを守りたいのか単なる変人かいつも悩ませてくる『彼』は身長はそれほど高くなく、一度にらまれたら圧倒あっとうされる眼光がんこうを持ちながら笑顔が似合い、筋肉質の男性だった。



「ネカマだろ?いや違うか。サブカル野郎にゃ見てる範囲が多くてこういう見ないと分からない経験はなかなかないのだから」



 年齢に嘘はなさそうだ。

 肌を見れば分かる。

 ファイリンよりも二つほど歳は離れている印象だ。



「つのる話はあるけど、日本楽しまない?ファイリンがお金持ちなのは分かっているけど俺がおごるよ」



 そんな英国人に優しくすんなよ。

 でも気持ちはありがたい。



「ここにきて金の話はなしだ。ケースバイケース。それでいい」



 近年は他の外国人観光客が多くて日本人も大変だ。

 もちろん差別的な意味じゃない。人間関係がからむから。



「ところで君の名前は名乗れないのかい? 」



「そういえば名前は言ってなかったけ?じゃあハンドルネームでいい? 」



「ハンドルネームも個人情報と聞いた。無理しなくていい」



 ファイリンがそのまま日本人男性と呼ぼうとすると彼は笑顔でハンドルネームを伝えた。



「ノエレス。それなら君とつり合うかな」



 つり合うって今どき英国人にそんな幻想抱く人間……ああ俺たちは別かとファイリンは切り替えて彼の名前を呼んだ。



「頼んだぜノエレス。しかし他の外国籍がいこくせきの友人がいるにしても日本語でしゃべってるだろう?身内に伝わるようにわざと言語変えるのもセオリーだし」



「本当にひねくれてるなあファイリンは。楽しもう日本を」



 しかしここの空港は特に遊ぶところもない。

 外国人観光客も比較的少ない場所だ。



 そこから少し電車に乗って二十代の青春をファイリンは素直に楽しむことにした。




***一方別の若者は



 田舎の暗い夜道にまだ戻ってきた。

 どうにも規制の厳しい都会はたまに遊ぶくらいがちょうど良かった。



 オーロラが日本にも見える現象が起きた。

 フィクションでは異常気象として紹介されていたが、今も充分異常気象だろ。



 あれだけ同年代よりも身体を鍛えて喧嘩もひかえ、試合を続けたのに最後の試合はほぼ格闘技界の嫌がらせみたいなものだった。



 それで地元にいた元相撲経験者と話していくうちに日本が嫌になっていく。



 言いたいことはいつも胸の内にあるだけ。

 それでもいいもかっこつけたってただストレスが溜まるだけだった。



 合法的に武力が許されている副業で都会の治安と地方の治安を交通費タダでやらせてくれるアンダーグラウンドな労働が俺達にめぐってきた。



 報酬は金だけでなく『新たな姿になるため』の下準備でもある。



 さっき言ったオーロラ現象。

 地元ではとっくに珍しくない。

 だがそのオーロラの中にまぎれこんでいる何かを俺達は調べないといけない。



『オーロラ・アンジュレーション』



 通称・オーロラのうねり。

 それだけだと大した翻訳ほんやくにはならない。



 俺達は人間を卒業する。

 ふたたび生まれてまたこの身体を無駄にされる生活なんてごめんだ。



 俺はこのたくましい身体をそのままに飛び立つのだ。

 狂ったかたまりを幸せと擁護ようごするこの現代と世界から。

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