源平妖退治~相模国江ノ島龍神退治~

惟宗正史

第1話 序幕

 妖怪。

 現在では空想の存在である彼らが歴史上存在していたのは事実である。

 日本各地に残る妖怪伝承。その多くは実際に存在していた彼らの話である。

 では、いつから妖怪は空想上の存在となったのか。

 それは源氏と平氏が争った源平騒乱時からである。

 当時は天魔と呼ばれていた妖怪達。時に人と共存しつつも、多くは人に害をなした妖怪達。当然、人々は妖怪達に対抗できる人物を求めた。

 それが陰陽師である。

 陰陽師で著名なのは平安時代の安倍晴明。妖怪退治のエキスパート源頼光を筆頭に多くの陰陽師がいた。

 そして源平騒乱時の陰陽師は妖怪退治者としての面ではなく、戦争で自軍を有利にするために陰陽術を行使する人々がいた。

 源頼光の末裔にして本人も妖怪退治のスペシャリストだった源頼政。平知盛の嫡男にして陰陽師でもあった平知章。

 そして日本史史上随一の知名度を誇る源義経。源義経は家臣である武蔵坊弁慶と共に陰陽術を駆使して平家を滅ぼすことに成功した。このことは当時のことを知ることのできる軍記物語である平家物語や源平盛衰記にも記されている。

 ではその源義経に対抗した平家の陰陽師はご存知だろうか。

 彼の名前は片瀬子太郎親正(江ノ島子太郎親正とも)。

 彼は当代随一の陰陽師である源義経の前に立ちふさがり、たびたび義経を悩ます陰陽師として登場する。

 そんな彼は最初に登場するのは平家の『東国御後見』大庭景親の部下としてである。

 今回は片瀬親正がどのように大庭景親に属するようになったのかを記述していきたいと思う。


                             歴史学者 大庭景史

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