15.ミレル箱
地下倉庫のマッシュルームのキノコ栽培を見学に行った。
ここでは暇なメイドさんがアルバイトをしているのだ。
普段のお給金とは別に少しだけお金が貰える。
もちろんキノコ資金からお金は僕が出してる。
あと夏は涼しいとして評判がいい。
逆に冬は暖かいくらいなので、過ごしやすいのだ。
ちょっと湿度は高いけどね。
「みんな、お疲れ様」
「ミレル様」
「ミレル様、ほらマッシュルームですよ」
「おぉお」
中にはジャンボマッシュルームなんかもあった。
これは別に出荷していて高く売れる。
それにしても木箱を使っているのだけど、持ち寄って使っているのか大きさがバラバラなのだ。
なんだか見てると作業効率も悪い。
木箱をうまく組み合わせないと縦に積めない。
「木箱なんだけど、そうだなぁ」
僕は見て回る。
「よし、これにしょう」
それは縦三十センチ、横四十センチくらいのちょうどいい箱だった。
「これを基準に同じ大きさに統一する!」
「え、木箱を全部ですか?」
「うん」
「かなりの数になりますけど? 今のままでも」
「統一するんだもん」
「分かりました」
子供のわがままだと思ったかもしれない。
へんなこだわりだって。
しかしすぐ行動に移した。
王宮の木工職人に発注したのだ。
「空き時間とか残業とかでもいいんだけど、統一した木箱を作って欲しい」
「え、いくつですか?」
「えっと千個くらいかな?」
「え、そんなに?」
「うん」
「あ、外部の業者に発注してもいいよ」
「それなら、分かりました」
ということで見本の木箱から長さをメモしていく。
これと寸分たがわない一緒のが欲しいのだ。
まずはキノコ栽培から導入する。
でも目標はいろいろな木箱を統一することだった。
数日後、さっそく第一弾が完成した。
木箱自体はそれほど難しくはないので、すぐできるのだ。
ただ数が数だけにそれが問題なだけで。
商業ギルドへ行く。
「この木箱、統一規格にしたいんだ」
「統一規格ですか?」
「うん、そう。もちろん入らないサイズとかはいいんだけど、似たようなサイズならこれに統一したい」
「なるほど」
ということでミレル姫様のまた無茶な注文が商業ギルド内で発生した。
最初はなにを奇妙なと思われていた。
箱を作り替えるなんて無駄だって。
なお余った従来の箱は地方発送用などに使って処分していく。
戻ってこない箱もあるのだ。
「冒険者ギルドでも薬草とかお肉の運搬とかに使うでしょ」
「はい、そうですね。今までは、その、バラバラですね」
ギルド内を見回してもいろいろな箱が雑多に積んであった。
大きさが違うと当然うまく積めないものもある。
そうして民間と王宮、二か所で同時進行的にはこの統一を進めていった。
「ミレル箱、すばらしいですね」
「箱が揃ってるだけで、こんなに荷物の整理が楽だなんて」
「こんなの革命ですよ」
バラバラより揃ってる方が箱を積みやすい。
そこから起こる効率化という言葉は現場の人なら骨身に染みるだろう。
箱のサイズは比較的小さいので、運搬用の倍のサイズも考えた。
倍のサイズなので小さい物とも組み合わせて置いても邪魔にならないのだ。
「これはまた、すごいですぞ」
「ミレル箱小とミレル箱中と呼んでます」
「かってにさらに倍の大も作っちゃいました」
一番大きい箱は小の四倍だ。
こうして「ミレル箱」という統一規格が王都では普及していった。
「それにしても……」
「なんですか姫様?」
「だって、王宮の荷物ほとんどミレル箱になってる」
「これ便利なんですもん。さらに箱が統一されて箱の値段は半分ですよ」
統一規格になって量産されやすくなり、安くなったのだ。
今まで全部適当な大きさを受注生産していたのを、やめて作業効率が大幅に改善されたおかげだ。
「王都ではもう、みんなミレル箱です」
そうしてミレル箱単位で売り買いがされ、箱は詰め替えたりせずそのまま流通していく。
作業効率は圧倒的だった。
そりゃ壺とかビンとか箱とかバラバラで、商店が買うたびに入れ替えて入れ物返してたら大変だよね。
ミレル箱小に入れて、それを大のサイズに縛って一緒に運んでしまうと、小売りまで入れ替える必要はない。
最初は莫大な費用が掛かったキノコ部門でも、今では効率化のおかげでかなり安くできるようになった。
みんなの作業時間もかなり短くなったのだ。
荷物を運ぶ時間や手間って思った以上に大変なのだ。
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