第8話

日記29ページ目

実体分身の数が一気に増えることになった。

霊力制御の技術取得に、霊力制御の練度が上がったお陰で行なえた修行の圧縮法。

これにより消費法よりも最大量が増やせるようになり、今は12人分の分身を作れるようになった。

そして分身が増えた事による修行効率の上昇のお陰で、生命力・魔力・霊力秘伝の教本に書かれていた内容の中で4つの技術を取得する。

魔力を特殊な呼吸法をしながら練って特化させた魔気、その魔気を身体に纏わせる魔気纏、生命力を特殊な呼吸法を行ないながら練って特化させた闘気、闘気を纏う闘気纏の4つだ。

この内の魔気と闘気の技術を覚えたお陰で一部だけしか読めなかった教本が読めるようになった。

そうして読めるようになった教本はこれだ。

闘気では山壊剛拳法初伝、斬蹴気功法初伝、流水剣法初伝、剛星弓法初伝の4つ。

魔気では火拳闘法初伝の1つ。

合計で5つの教本が読める。

そしてこの5つの中で水の流れがある川のような場所でないと技術の取得が難しいのが、この流水剣法初伝に載っていた流水闘気功と言う技術だ。

生命力を闘気に換え、そこから闘気を流水闘気功と言う闘気の一種へと変換するこの技術の取得を夏の暑いこの時期に行ないたい。

幸いに家からそう遠く離れていないところに子供の腰くらいまでの深さのある川がある。

そこで今年の夏休みに中の取得を目指す。



「でも、これを取得できるかな?」


流水剣法初伝の教本を片手で持ちながら呟いた。

流水剣法初伝に載っている呼吸法は呼吸法基礎の教本を学び終えた俺なら問題なくとは言えないが行なえる。

それでも水の流れを感じることで自身で水の流れを生み出すと言う内容がよく分からない。

他の読めるようになった教本もそうだが、抽象的な内容で書かれているところがそれなりに多く、だからこそ教本の内容を理解したとは言い辛いのだ。


「この呼吸法だけでも夏休みに入る前に覚えて置かないとな。」


そうじゃないと水の流れを感じるなんて分かりづらい内容を川の中で理解しないといけないのに、その前の段階の呼吸法が出来ていないと川の中に入っていても意味がない。

幸いなことに呼吸法の技術の取得自体は分身たちでも行なえる。

だから、俺は分身たちと一緒に流水剣法初伝に載っていた呼吸法を残り少ない夏休みに入るまでの間に練習していった。



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夏休みが始まる前に流水剣法初伝に書かれた呼吸法の取得に成功した。

呼吸法基礎で学んだ既存の呼吸法とは効果が違った身体の力の入り方や動き方になっているが今のところ問題ない。

それに流水剣法の呼吸法の基礎的な呼吸法は呼吸法基礎の呼吸の為、悪い影響はないと思う。

そして夏休みに入ってからはほぼ毎日、俺は朝から出掛けて川に向かい、一応川で溺れたりなどの危ないことがないように川の中に入って水の流れを掴むのは分身たちの役目だ。

分身たちが川の中に入り水の流れを感じている間に、俺は木陰の下でのんびりしながら過ごすが、やっぱり暑さには耐えられずに川の中に足を入れたりして涼んだりもした。

そして何とか夏休みが終わる前に水の流れ?と言うものを理解することは出来なかった。

呼吸法基礎と生命力・魔力・霊力秘伝の教本の2つの技術が必要なせいもあるのだろう。



「はぁ、結局覚えられなかったな。」


俺はカレンダーを眺めながら手元の教本に視線を移した。

抽象的な水の流れと言うものを理解出来ないのが原因だ。

ただ川の中に入り呼吸法を行なうだけじゃなくて流水剣法初伝に載っていた剣術の型を練習したりしたが、それでも取得出来なかったのはやり方が違うのかどうかも分からない。


「まだ9月も暑いし、学校には俺が行って分身たちに頑張って貰うかな。」



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段々と秋の季節になって肌寒くなって来た頃にようやく水の流れと言うものが理解できた。

この水の流れを理解してからすぐに俺は流水闘気功という闘気の一種を取得する。

流水剣法は水が流れるような動きで剣を振るう剣術だが、流水闘気功を纏うことでより流れるように剣を振るうことが出来るようになった。

そして思うのは流水剣法自体がこの流水闘気功を活かす為に作られたのではないかと言うことだ。

まあ、実際にそうなのかは分からないことだが、これでようやく1つ前に進むことができた。

あとは分身の1人に流水剣法初伝に載っている技術の取得と練度上げを任せて、他の分身たちは他の技術の取得に移る。

残りは闘気の山壊剛拳法初伝、斬蹴気功法初伝、剛星弓法初伝に、魔気の火拳闘法初伝の4つだ。

闘気の流水剣法初伝の取得は鍛錬を積んで行けば、このままでも分身に任せて大丈夫だろう。

だから次は魔気を使う火拳闘法初伝を学ぼうと思う。

それに魔気なら生命力が主体の闘気よりも得意な魔力関連の技術なのだから早く取得することも出来そうだ。



「これなら行けそうかな?」


火拳闘法初伝に載っている呼吸法を分身たちと一緒に行なっていく。

火拳闘法は水の流れを知るなどと言うことはないが、どうやら烈火のような激しい感情が必要なようだ。

とにかく激しく感情を燃やすことを意識して魔力を練れば良いのだが、まずはその前に火拳闘法の呼吸法からだ。



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大晦日前には火拳闘法の呼吸法を行なえるようになった。

烈火のような感情。

それがどんな感情なのかそれは分からなかったのだが、何故か魔烈火と言う魔気の一種を呼吸法の取得が出来てからすぐに使えた。

何となく俺の記憶が戻ってから感じている死にたくないと言う強い感情の影響があると思う。

今も強くなる為に努力しているが、あの時の死の恐怖は拭えないし、どこまでも生きていたく死にたくないのだ。

その強い感情が俺の奥底には常にあるからこそ、魔気の魔烈火が使えるようになっているのだと思う。

火拳闘法は練習場所が少ないが少しずつでも練度を上げて使えるようにして置こう。



「手が燃えているのに熱くない?でも、周りの雪は溶けてるのは何でだろ?」


魔烈火を拳に纏わせて積もっている雪に触れれば、それだけで雪は水へと姿を変えていく。

俺の手にある炎は俺自身には何も影響を及ぼさないが、俺以外の周囲には影響を与えている。


「これは森の中での練習は出来そうにないなぁ。」


今はこの手の範囲だけだが、火拳闘法の型の中には魔烈火を使った範囲技や通常技自体にも拳の周囲を燃焼させる力がある。

だからこそ、辺りに燃えるものがある場所では火拳闘法は行なえない。

この近くで練習することが出来るとしたら河原くらいだろう。


「魔烈火で身体は暖かいし、雪が降っていても練習できるのは良いな。早速分身に河原に向かわせるか。」



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今日は探索者養成校中等部の受験を受けた。

天のタワーの周りには中学校、高校、大学と探索者を養成する学校が多数ある。

探索者養成校の中等部だけでも10個はあるのだから。

そんな多い探索者養成校中等部の中で俺が受けたのは探索者養成校第四中等部だ。

どこの探索者養成校中等部でも習う内容は同じなのだが、第一から第十までの学校が分かれているのはそれぞれの住んでいる県や地方に寄って変わる。

俺が住んでいる場所だと受験できるのが第四中等部になるのだ。

そして俺が受けた受験は合格できただろうと自信を持って確信できる程度には試験は問題ないかった。

あとは結果発表を待つだけだ。



「それで受験はどうだったの?」


「問題ないよ。どれも自身があるから。」


姉さんの質問に自信満々に答える。


「そうなると中学からは寮生活ね。1人で生活できるのか心配だわ。」


「大丈夫さ、母さん。トオルなら心配しなくても。」


「そうかしら?お父さん。」


「ああ、そうさ。俺たちの自慢の息子だ。」


「お父さん。」


両親が惚気合う姿に俺と姉さんはお互いに自分の自室へと避難するのだった。

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