第56話 死闘の果てに
「これは挨拶代わりだ。くらえ!!!」
上空から光の矢を降らせて三人を攻撃するケイト。
そのまま、地上に降り立ち、アンナとアロウラに素早く近づくと、二人を蹴り飛ばした。
「お前たちは邪魔だ、そこで大人しくしていろ!!!」
蹴り飛ばされたアンナとアロウラの背後に黒い十字架が出現した。
そのまま、十字架の周囲を赤い薔薇をつけたイバラが覆い、イバラの蔓が二人の身体を締め上げて拘束した。
十字架に磔になった二人。
(このイバラ、ものすごい力で締め付けてくるわ。身体がちぎれてしまいそう)
「アロウラ、大丈夫?」
「なんとかね。全身を魔力で強化して耐えてるわ」
「私が無理矢理拘束を外すから、もう少しだけ我慢して」
女神の姿となったケイトがスクネを睨みつける。
(お前だけは許さない。ヴォルフラムは、私の唯一の肉親だったんだ。それを奪ったお前を殺すまで、私の怒りは収まらない。収まるわけがない!!!)
「うおおおおおおおおお!!!!!」
ケイトは叫び声をあげた。
「……ふう。少し落ち着いたわ。ふふ、いいことを思いついた。少し遊んでやるよ」
そういうと、ケイトはアンナとアロウラの姿を模した人形を大量に造り出した。
「ふふふ、どう?あなたの仲間をたくさん造ってあげたわよ」
「なっ!!!」
「あなたの大好きなアンナとアロウラを攻撃出来るかしら?」
「バカにするな!!!」
スクネは人形を切りつけた。
「何をするのクロウド。痛い。痛いよ。やめて。やめてよ!!!」
ケイトの造り出した人形がアンナの声で叫び声を上げた。
「ぐっ!!! こんなことで、惑わされるものか!!!」
スクネは叫びながらアンナの姿をした人形を切りつけ続ける。
「ふぅん。強がるのねえ。でもぉ……」
次の瞬間、人形が爆発した。
バァァン。
「ぐぅっ!!」
スクネは爆発に巻き込まれてダメージを受けた。
(思ったより頑丈ねえ。手足とか吹き飛ぶかと思ったんだけど。流石に生体エネルギーの量が多いだけのことはあるか)
「その子たち、手荒に扱うと爆発するわよ。女の子はもっと繊細に扱わないとダメじゃない」
「くっ!!駄目だ!!! こいつらが近づく前になんとかしないと!!!」
スクネは剣にオーラを集中させて、斬撃を飛ばした。
斬撃が人形にぶつかると、周囲の人形を巻き込んで、一気に爆発した。
スクネも爆発に巻き込まれて、ダメージを受けてしまった。
「あらあら駄目じゃない。あなたの大切なアンナとアロウラが吹き飛んじゃったわよ?」
「あなたって、仲間にこんなひどいことをするのねえ。あはははははははぁ!!!」
スクネはケイトを無言で睨みつけた。
「ふふ。それじゃあ、これならどう?」
ケイトは自身をアロウラと同じ姿に変化させた。
「ふふふ、今度は人形じゃないわよ」
ケイトは、アロウラの声までそっくりに再現していた。
「さあて、続きを始めようかしら」
ケイトは服を脱ぎ、裸の姿になった。
「まだ子供のあなたには、大好きなお姉さんの裸の姿は耐えられないでしょう? この姿の私を攻撃できるぅ? あなたにアロウラを傷つけられるかしら?」
裸のアロウラの姿でスクネを執拗に攻撃するケイト。
「生体エネルギーは力の源。身体能力を含めて戦闘に必要な全ての能力が強化される。あなたよりも生体エネルギーの多い私はもう武器すら必要ないわ。このまま殴り殺してあげようか?」
ケイトは拳にオーラを集中させてスクネを殴り続けた。
スクネは防戦一方になってしまう。
(クソッ、頭ではわかっているのに。こいつの攻撃に反応するので精一杯だ)
「裸の姿には惑わされないか。マセたガキだこと!!!」
次にケイトは聖剣を具現化して、素早くスクネに斬りつけた。
スクネは斬撃に反応するが、腕を斬りつけられてしまう。
「ぐぅっ!!!」
「ふふ、ギリギリのところで急所を外して致命傷を回避するねえ。だが、それでいい。お前をすぐに殺してしまっては、私の気持ちが晴れないからな。もうしばらく、楽しませてくれよ」
「スクネ、今助けに行くよ!!!」
アンナに拘束を解いてもらったアロウラはスクネを助けにいこうとする。
しかし、それをアンナが止めた。
「アンナ、どうして!?」
スクネが彼より強い相手と戦うことは良い経験となり、その経験が彼自身を大きく成長させるから、もう少しだけ見守っていようと言うアンナ。
スクネは、ギリギリでケイトの斬撃が自身の急所から外れるように防ぎながら、徐々にケイトの攻撃スピードが落ちてきていることに気づいた。
実は、アンナがケイトに蹴り飛ばされる寸前に、レオニードにもらった魔道具をケイトの身体にこっそり取り付け、ケイトの生体エネルギーを強制的に魔力に変換していた。
アロウラが、ブレスレット型の魔道具の形状を改造して、対象の身体に取り付けるタイプのものに改良していたのだ。
アンナはこの魔道具に、完全に気配を消す魔法の応用で、物体を感知されなくなる魔法をかけていたので、ケイトはこの魔道具が取り付けられていたことに気づけなかった。
気づかぬうちに体内の生体エネルギーを強制的に魔力に変換させられていたケイトは、生体エネルギーによる身体能力の強化が弱まってきたのだ。
そして、ついにスクネがケイトの斬撃を完全に回避した。
「何故だ。何故かわされた!?」
「バカな、こいつ、急に速くなって……いや、私が遅くなっているのか?」
突然の出来事に困惑するケイト。
「力が、力が抜けていっている? 何が起きた!!! ふざけるな!!! こんなことが、こんなことがあってたまるか!!!」
「アロウラは、お前なんかよりずっとやさしくて、お前なんかよりずっとキレイなんだ!!! いくら見た目を似せたって、お前なんかじゃ足元にも及ばないよ!!!!!」
冷たい目をしたスクネが、ケイトの胸を剣で貫いた。
「かはぁっ!!!」
胸を貫かれたケイトは彼女の本来の姿へと戻っていった。
「ヴォルフラム、ごめん。今行くからね」
「……だが、私だけ行くものか。お前も道連れだ!!!」
鬼の形相をしたケイトが、スクネを逃がさないように、自身を貫いた剣を両手で握りしめた。
「マズい。スクネ、離れて!!!」
「キィィィィィィィ!!!」
ケイトは最後におぞましい金切り声をあげて、スクネに呪いをかけようとする。
しかし、間一髪のところで、アンナがスクネを突き飛ばして、スクネを庇った。
アンナは、ケイトの呪いを一身に受けてしまった。
「母さん!!!」
「アンナ、アンナ。大丈夫? しっかりして!!! 返事をして!!!」
アンナは遠くを見つめるような目をしたまま、何も答えなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます