第37話 天使様が助けてくれた!!!

「上空から何かが落ちてくる……あれは……流星? いや……隕石だわ。はぁっ、はぁっ……やられたわ。マスターのやつ……本当に……この世界を恨んでいたのね。あんなのが落ちてきたら……対処のしようがないわ。この世界が……全て崩壊してしまう」


 隕石が落ちてくることを確認したアンナは絶望して、涙を流した。


「結局、私たちは……マスターの手の上で……踊らされていたようね。ごめんね、スクネ。ごめんね、アロウラ。私は、この世界を……あなたたちを……守れなかった……」


「二人とも、今までありがとう……最高に楽しかったよ」


 上空の隕石は徐々に大きく、はっきりとした形になりながら、地表に向かって落下しつつあった。


 この国の人々は、赤い尾を引きながら落下する巨大な隕石が、自分達の方へ向かってきているのを見上げていた。


 絶望が、この国を包み込んだ。


 その時、羽の生えた一人の女性が、アンナの横に降り立った。


「まったく、どうしてこの国の連中はいつも無茶苦茶なことをやるのかしら? 私たちの世界を壊そうとするなんて、許さないわ」


 彼女は、この世界を管理する女神に支えている大天使、シンシアだった。


 シンシアはこの世界の時間を操作することが出来る。


 これは、彼女の生まれもったスキルであり、彼女にしか出来なかった。


 シンシアがこの能力を持っていることは、この世界を管理している女神のドロシーですら知らなかった。


「まずは、時間を戻すか。あれはもう、どうにも出来そうにないし」


 シンシアは、マスターと融合した機械人形がイバラ姫の姿に変化した時点まで、時間を巻き戻した。


◇◇◇


「この国の住民は、自分たちの都合で私を生み出しておきながら、不良品とみなして捨てたクズどもの子孫だ。全て消し去ってやらないと私の気が済まないからな。この国を作ったイバラ姫が、この国を破壊するんだ。こんなに面白いショーは他にないだろう?」


「……くだらないわね。そんな理由で私たちの世界を壊さないでくれる?」


マスターは、自分の頭の中に直接声が聞こえてきたので、驚いた。


「くだらないだと。ふざけるな!!! 誰だかわからんが、お前から消してやるよ!!!!!」


「これから、大天使シンシアがお前に罰を与える」


 大天使シンシアは、機械人形ごとマスターを石化させていった。


「なんだこれは? 身体が動かない。固まっているのか? おい、ふざけるな!!! 大天使だと? お前は一体……」


「私とドロシーの世界を壊そうとしたことは万死に値する。このまま石となって、永遠に悔やむといいわ」


 そして、マスターは巨大なイバラ姫の姿のまま、石像となった。


 シンシアは、マスターに近づいていたアンナに話しかけた。


「安心して。あの巨人は私が石化しておいたわ。私はこの世界を管理している大天使のシンシアよ。あなた、またこの世界を守ってくれたみたいね。あ、今はまだ守ろうとしているところか。とにかく、お礼をいうわ。どうもありがとう」


(まさか、またあなたに会うことになるとはね。せっかく子供のまま、成長しないように調整して転生させたのに……)


「また? 天使様は私のことを知っているのですか?」


「まあね。あなた、転生前も同じようにこの国を守ろうとしていたわ。変わらないのね」


「転生前、ですか? 私にはよくわからないです。天使様があいつを石化してくれたんですね。こちらこそ、ありがとうございます。私たちだけでは、どうしようもなかった」


「私たちの世界を壊そうとしたから、罰を与えただけよ。この世界はね、女神様と私で作った世界なの。壊そうとする奴は許さない。それだけよ」

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