第24話 仕事の出来る男レオニードと謎の助手ヨナ

 教団の信者が魔道研究所の入口を見つけてから既に一週間が経過していた。


 教団の信者たちは、氷の壁が解けて再度起動したガーネットの攻撃に対処することが出来ず、犠牲者が発生していた。


 これ以上犠牲者を出すわけにはいかないミリエラは、レオニードとマテウス、そしてメローネを現地に向かわせることを決断し、彼らを教団施設に呼び出していた。


 レオニードはマテウスを見かけると彼に話しかけた。


「マテウス様が直々に探索に参加されるとは。本当に驚きましたよ」


「様をつけるのはよしてくれないか。マテウスでいいよ、レオニード君。これからいく遺跡は新しく見つかった場所なんだが、入口にかなり手強い機械人形がいてね。探索に出した信者たちが犠牲になってしまった。これ以上信者たちに犠牲を出すわけにはいかない。そこで、君にお願いすることにしたんだ」


「マテウス様、親しき仲にも礼儀ありと言います。私が様をつけないと、信者に余計な誤解を与える恐れがありますので、どうかお許しを。一つ確認なのですが、機械人形は強力な魔法を使うとのことでしたが、私は魔法には詳しくありませんし、そもそも魔法は苦手ですよ。本当に私でいいんでしょうか?」


「私が君をミリエラに推薦したんだ。レオニード君、君は任務に失敗したことがないからね。君に実際に機械人形を見てもらって、対応策を考えてもらいたいんだ」


「そうですか。では、今、私が考えている案を聞いてから、判断していただきたいと思います。遺跡の中に入るだけでしたら、機械人形を破壊する必要はないと思います。ですので、まず、私とヨナで、機械人形の注意を引きつけます」


「ヨナ? ああ、君か。確かレオニード君の紹介で、新しく教団に入信してくれたんだったね」


「はい、マテウス様。今はレオニード様のお手伝いをしています」


 レオニードは全身黒ずくめの女性を帯同させていた。


 彼女の名前はヨナ。


 レオニードが見つけてきた新しい信者で、彼の任務の手伝いをしているという。


「彼女は腕が立つので、私の助手として任務を手伝ってもらっているんです。私たち二人で機械人形の相手をします。機械人形は強力な魔法を使うようですが、破壊しないのであれば、私たちだけでも何とかなるかもしれません。その間に、メローネ様に姿を感知されなくなる能力を使っていただいて、遺跡に潜入していただきたいと考えています。今回、ミリエラ様がメローネ様を指名したのも、同じような考えからかと思いましたので」


「いい作戦だと思うよ。よし、それでいこう。もし、機械人形にメローネが見つかってしまった場合は、私が彼女を守ることにするよ。君も知っていると思うが、彼女は今、精神が不安定でね。私が活動をサポートしようと考えていたんだ」


「すいません。私もメローネ様に無理をさせてしまうようなことはさせたくはないのですが、メローネ様以外には出来ない役割ですので」


「いいんだレオニード君。私がメローネを守ればいいだけの話だ。信者はみんな私の家族みたいなものだからね。彼女も大切な家族の一員だ。何が起きても、守り切ってみせる。もちろん、君たちもだ」


「ありがとうございます、マテウス様。ご期待に応えられるように、全力で任務を進めてまいります」


◇◇◇


 マテウスと別れたレオニードは、ヨナに話しかける。


「さて、マテウス君への挨拶も済んだことだし、次は機械人形と戦って生き残った信者たちにお話を聞きに行こうか。機械人形がどんな魔法を使ったのか詳しく聞きたいからね。あとは、メローネちゃんにも君の顔見せをしとこうかな」


「わかりました。同行します」


「相変わらずお堅い返事だねえ。もう少し心を開いてくれると嬉しいんだけど」


「……努力します」


「お見舞いとしてお花とお菓子を買っていくよ。僕は忘れっぽいから、ヨナも一緒に覚えておいてくれると助かるな」


「わかりました。お花とお菓子を買う……のね」


「そうそう。よろしく頼むよ」


(一つわかったことがある。このレオニードという男は、任務の前の下準備をしっかりと時間をかけて行っている。根回しもだ。だから、マテウスの言うとおり、任務に失敗しないのだろう。私は今まで、そこまで準備を気にしたことが無かった。だから私はダメだったんだ。今更気づいてももう遅い。もう少し早く気づいていれば、私は……)


 ヨナは胸がいっぱいになり、涙がこぼれそうになるのを、必死に堪えていた。

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