第16話 面会
王宮に着くと、門兵に声をかけた。
「騎士団長のブラッドに会いたいのだけれど」
「どのようなご用件でしょうか?」
「あの、私はブラッドの妻でローラと申します。夫に届けたいものがあって」
「少々お待ちください」
門兵は中にいる兵士に何か伝えると、中にいた兵士は王宮の内部に向かって歩いて行った。
「少しでも早く喜ばせたいと思ったけど……考えが足りなかったかしら?」
私は王宮までやってきてしまったことを反省した。
少し待つと、血相を変えたブラッド様と、それを引き留めるトリスタンがやってきた。
「騎士団長、落ち着いてください」
「ローラがわざわざ私に会いに来ているのだぞ! 一大事ではないか!」
「騎士団長!」
私の顔を見ると、ブラッド様は一層青ざめた表情で駆け寄ってきた。
「ローラ!」
「ブラッド! ごめんなさい! 私、大したことじゃないのに王宮に来てしまって」
恐縮する私にブラッド様は微笑みかけてくれた。
「いいんだ。用事はなんだい?」
「あの、これ、食べたら元気になるかなって思って」
「これは?」
「ジンジャークッキーです。ブラッドの好物だと聞きました」
「……そうか」
ブラッド様は思い詰めたような表情でジンジャークッキーを見つめた。
「悪いが、これは家に持って帰ってもらえるか? 一緒に居たいのだが、今は仕事がある」
「はい……」
ブラッド様の表情はこわばっていて、暗い。
「騎士団長、戻りますよ?」
「ああ」
ブラッド様は私の手を握ってほほにキスをすると、王宮に戻って行った。
「なんだか、とてもつらそうな顔だったわ……。私、そんなに悪いことをしてしまったのかしら?」
しょんぼりとして、私は屋敷に帰った。
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