第3話 食事会
料理が次々と運ばれてきて、私はその豪華さに驚いた。
鴨のロースト、牛肉のパイ包み焼、魚のプディング、野菜のゼリー寄せ、ほかにも色々。どれも良い香りがするし、見た目も美しく、目移りしてしまう。
「ローラ嬢、料理はお口に合いますか?」
ブラッド様の問いかけに私は笑顔で答える。
「どれもおいしいです」
ブラッド様も食べ物を口に運んでいる。筋張った大きな手が滑らかに動く様子はとても優雅だ。
「ん? どうかしたか?」
ブラッド様が首をかしげて私の目を覗き込む。
「なんでもありません。本当にどれも美味しいですね」
ブラッド様の手に見とれていたなんて言えない。私は鴨のローストを一口ほおばって微笑んだ。
「結婚式はいつにしましょうか」
「……早すぎませんか!?」
ブラッド様の言葉を聞いた私は、食べ物をのどに詰まらせそうになった。
「君は魅力的だから、ほかの男性に奪われたらと思うと不安で仕方がない」
真剣な顔でブラッド様が私に言った。
私はあんぐりと口を開けそうになったが、かろうじてこらえた。
「ブラッド、単刀直入にも程があるぞ。皆さま、ブラッドが驚かせて申し訳ありません」
ダリル子爵が苦笑しながら言った。
「いえいえ。ローラ、気に入っていただけて良かったな」
「え、ええ……」
気に入る? 気に入られた、という言葉では軽すぎる気がするんですけれど……。
私はワインを一口飲んでから、ブラッド様を見た。ブラッド様は熱いまなざしを私に向けている。子どものころに会ったことがあると言っても、初対面みたいなものだと思うのに、ブラッド様は私を愛(いつく)しむように微笑みを向けてくれている。
「私としてはなるべく早く一緒になりたいのですが」
ブラッド様が言うと、お父様が頷いた。
「それでは式を急ぎましょう。そうですね……半年後ではいかがでしょうか」
「お父様!?」
私は話のスピードについていけなかった。
食事会を終え、家に帰るとお父様が言った。
「ブラッド様はずいぶんローラのことが気に入っているようだな」
「そうね。良かったわね、ローラ」
お母様も笑っている。
嫌われるのは困るけれど、ここまでべたべたされると少し怖い。
「ブラッド様は本当に私でよいのでしょうか」
小さなつぶやきは、お父様たちには届かなかった。
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