拝啓、不香の華と言われた君へ。

kota

第0話 prologue

眼の前にいる一人の少女が俺に向かって言葉を放つ。

「山茶良くん、私と――――。」

夕暮れの下、紅を差したその表情は、俺の心奪っていくには十分と言えるほど綺麗で、思わず俺は...


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ジリリリリッッ!!とけたたましいアラームの音で目を覚ます。反射的にスマホを手に取りアラームを止め、そして来るであろうに備えて自分の耳を塞ぐ。

「お兄ちゃんおはよー!!!!!!!!!!」

ほら来た。

「ああ、おはよう」

「朝ご飯できてるから早く下におりてきね!」

そう言って颯爽と俺の部屋から出ていく妹をよそ目に俺は

「...だるいな」

とつぶやき部屋から出ていった。


「おはよう桜花おうか。早く顔洗ってきな、そこに朝ご飯おいといたよ」

「ありがと母さん」

山茶良桜花さざらおうか、それが俺の名前で16歳のどこにでもいる男子高校生である。そして

時雨しぐれ、今日から新しい学校なんだから遅刻しないようにね」

「うん!大丈夫だよお母さん!お兄ちゃんと一緒に行くから!」

山茶良時雨さざらしぐれ、歳は15歳。俺の妹とは思えないほど元気なやつで、今年から俺と同じ高校に入るらしく、それ故かいつもより元気なのでいい迷惑である。

(あの様子で今年から高一とか信じたくないな)

そんなことを思いながら顔を洗い終わった俺は朝食を食べ、学校へ行く支度をする。今日は俺が通っている高校、万花ばんか高校の始業式で俺は一年間通っていることもあり道に迷うことなんてないのだが、妹の時雨は今日が初めてなので俺がついていくことになっている。

「お兄ちゃんいくよ〜」

「わかったから、少し待ってくれ」

俺より先に準備が終わったであろう妹が玄関で急かしてくるため少し動かす手を早め、そして準備を終わらせた俺は

「行ってきます、母さん」

と言って妹と一緒にドアを開け家を後にした。


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