第3話
俺が兄貴のモノだった家の家主となってから一週間が経過した。
その間に俺がした事と言えば、これから始まるであろう原作の準備である。
いくら最強の寝取り竿役おじさんとはいえ、無策で行けば普通にアウト。
人生のすべてを失いお先真っ暗である。
なのでとりあえず先立つものとして――お金稼ぎを継続し始める事にした。
というのもこの天童武という男、原作では兄貴の残した遺産で将来的に遊び惚ける予定なのである。
そのために桜子ちゃんを堕としにかかるとか寝取り竿役おじさんの恥さらしだと個人的には思うのだが、まあ、原作はそうなのだから仕方がない。
そんな俺、天童武が今までどのようなお金稼ぎをして生きて来たのかというと、意外な事に投資である。
デイトレード、株、FX等々。
働かずにお金を動かし、手元を増やしていた。
それでちゃんとプラスになっていたのは、多分ゲーム特有のご都合主義だろう。
実際、天童武としての知識を使いお金を動かしたところ、嘘のように手元のお金が増えていった。
思わず嘘だろと呟いてしまうくらいに。
そして、このご都合主義は原作が終わった後も続くとは思わない方が良いだろう。
いわゆる主人公補正は原作が終わった後、つまりヒロイン達をすべて手中に収めた後まで続かない。
そう思って行動する。
そのために、今から全力でお金稼ぎをする。
幸い神は俺の味方ををしてくれている。
たった一週間でお金がうん万円も増えたし、この調子でいけば多少贅沢しても女性を侍らせながら働かずに生活出来るだろう。
さて。
そんな俺だったが、当然近所との交流も忘れていない。
特に近所には俺のモノとなる女性というかヒロインがいるのだから。
その人物は、隣に住む桜子の幼馴染、竜胆翔の母親、竜胆愛奈だ。
豊かな黒髪に大きな胸。
年は公開されていなかったが、実際に見た感じでは40は超えていないような外見をしている。
彼女は、竜胆翔がまだ赤ん坊だった頃に夫を病気で亡くし、今はシングルマザーで翔少年を育てていた。
その愛奈の心の隙間に付け入り、侵入し、良い仲になる。
彼女自身、男に飢えているので案外コロっといきそうな気もするが。
後は、個人的にいろいろと機材を集めておいた。
それはこの後、とある人物を家に呼び込む際に必要になってくる。
その人物は一応サブヒロイン的な立ち位置の女の子で、その伝手で竜胆翔に繋がるヒロインと知り合う事となっている。
原作では俺のマジカルな竿でにゃんにゃんして従順にさせるのだけど、しかし俺にそんなテクがあるとは思えないしなー。
という訳で、安全策で行く事にする。
彼女との出会いは、昼間の街。
駅の前でうろうろしていればきっと出会える。
原作の強制力とか神の導きみたいのがあればこうしているだけで彼女の方から寄ってきてくれるだろうが、しかし最初の印象というのは大事なので見た目には結構気を付ける事にした。
まず、清潔なのは第一。
髪をちゃんと梳かしてセットし、服はちゃんと洗って綺麗なモノを着る。
これでイケメンとは言えないけれど、普通の気の良いおじさんには見えるだろう。
それから俺はしばらく駅の前をうろうろする――までもなかった。
すぐに彼女の方から俺の方へとやって来た。
彼女はゲームで見た通りの格好、つまりラフにパーカーを羽織るという格好をしていた。
ふわっとした金髪に碧眼。
どちらかというとギャルっぽい見た目の少女は俺に対し上目目線で甘えるような口調で話しかけてくる。
「ねえ、おじさん? ちょっとぉ、私。おじさんにオネガイがあるんだけど」
俺はそんな彼女を見、頬が緩まないように気を付けつつ朗らかに答える。
「なんだい?」
「あのね、実は財布を忘れちゃって。だからちょっと融通してくれるとありがたいんだけど」
「そうなのかい?」
如何にも驚いたような口調で俺は言う。
「それは大変だ。いくら必要なんだい?」
その言葉を聞き、少女は待ってましたと言わんばかりの表情をする。
「これくらい、かな?」
指を開いた手をこちらに見せてきて、それから。
「おじさん。イケメンだから、それくらい出してくれたら私もオレイ、してあげるよ?」
「なるほど」
俺は少し迷ったように間を置いた後、言う。
「それじゃ、おじさんとお茶に付き合ってくれないか?」
「へ?」
少しだけ驚いたような表情をしたのち、彼女は「お、おじさんがそれで良いなら」と答えてくる。
まあ、そう答えるだろう。
彼女は今、何よりお金が必要なのだから。
「じゃあ、行こうか」
「う、うん」
厄介な人に話しかけてしまったかな?
そんな表情をする彼女の前を歩く。
今に見ておくと良い。
俺がいないとダメな身体にしてあげるからな?
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