第7話 Die einsame Prinzessin(孤高のお姫様)
中学生の頃私は【孤高のお姫様】と言われていた。
それは近寄りがたい高嶺な女の子...というより、ややバカにした意味合いで使われていた。
いつも一人の女の子。寂しい女の子。
そういう意味である。
表面上少し話す程度の女の子でさえ、陰口を叩いていることを知ってからは私は誰とも話さなくなり、そのことも後押ししてそんなあだ名で呼ばれるようになっていた。
でも、それでも別に良かった。
一人で困ることもそんなにないし、むしろ一人の方が遥かに気楽で助かるのだ。
そうして、無事に一人になったのだが、むしろ一人になったことで自由な時間が増えてしまった。
そんな時にハマったのがアニメだった。
自由で、個性的で、可愛くて、ドキドキワクワクするような世界に私は夢中になってしまった。
逆にリアルの学生生活がどれほどつまらないものなのかを痛感したのだった。
それにウチの国との学生のギャップ、例えば学生なら制服を着るということから始まり、文化祭や学祭も日本っぽさがあり憧れてしまった。
その中でも一番ハマったのはその語彙についてだった。
言い回しが回りくどく、直接的な表現より、やや斜め上の返答や深く考えることでその意味がわかるような表現方法や、更に無数にある一人称も人柄が現れ、本当に学ぶのが楽しくて仕方なかった。
それから日本と日本語文化にどっぷりとハマっていった私は、学校の中でも日本の漫画を読んだり、日本語の勉強本などを読むようになった。
すると、周りの人間がコソコソと悪口を言うのだ。
【アジアの言葉を勉強してる】というのが、向こうの人たちにとってはバカにする要因の一つになるのだ。
勿論、そんな言葉を流していたのだが、そんなある時事件が起きたのだった。
ある日、いつも通り机にしまってある日本語の本を取り出すと、それはボロボロにされていたのだ。
日本語の本には私に対する悪口や、両親をバカにするような言葉など、無数に書かれていて、私は思わずその時に舌打ちしてしまった。
それから私が取った行動は...多分褒められたことではないだろう。
簡単に言ってしまうと復讐だった。
私が懲りずに日本語の本を読めば、気に食わない犯人は絶対にもう一度同じようなことをすることはわかっていた。
だから、わざと放課後に日本語の本を机に置いて立ち去ったフリをした。
すると、とある男女グループがヘラヘラしながら私の本を触っていたのだった。
それを突き止めると、遠目からその動画を撮り匿名アカウントでSNSに載せるのだった。
偶然そのツイートが拡散したことですぐに特定が行われ、私刑が始まった。
その後は私に謝罪を行ったりなどいろいろ行われたものの、犯人グループは全員転校することになったのだった。
それを機に私はこのドイツという国が合わないことが分かったのだった。
そうして、日本でならもしかしたら私のことを受け入れてくれるかもと思ったのだが、その日本への移住にあたり、一度だけ日本に旅行に行ったのだが、そこで嫌な目にあってから私は日本人も嫌いになってしまったのだ。
◇
電話する友達なんて私にはいない。
先ほど長嶺に言われたことを思い出しながら、顔を洗おうと扉を開けた時のことだった。
そこには全裸で首からタオルをかけている長嶺の姿があった。
「...え?」と、呆然する彼。
そして、お父さん以外で初めて見る男性の局部に私は驚きと恥じらいを抱きながらも、精一杯の強がりでこう言った。
「klein(小さい)」
そのまま扉を閉めるのだった。
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