可愛すぎるドイツ人留学生の翻訳係に選ばれたのだが、発言がヤバすぎていい感じに訳すのしんど過ぎん?

田中又雄

第1話 Willkommen in Japan.(ようこそ日本へ)

 少しいつもより騒がしい教室。


 どうやら、交換留学生が今日から来るらしく、すでに朝職員室でその子を見たという男子が話を流布したことにより、すでに教室内は異様な空気に包まれていた。


「今日は留学生を紹介するぞー。前々から言っていたが、ドイツから遥々、我が城西高校に1年留学することになったわけだが...。おい、男子騒ぎすぎだ」


 そんな担任の言葉に更に盛り上がるクラスメイトたち。 


 そんな男子共を冷静な目で見つめる俺。


 我が校では今年から1年間の短期留学生の受け入れを行うことになっていた。


 うちの高校からも一人、ドイツの高校に行った女子が居るらしいが、その子の話は話半分というか、噂程度でしか聞いたことがない。


 そして、その初めての試みとして、この2年A組に留学生が入ってくることになったのだが...実はほかのクラスメイトより先に俺は先生からそのことを聞かされていた。


 なぜかと言うのはすぐに分かるだろう。


 さて、どんな子がやってくるのやら...。

そう思いながら扉を開くと、新しい風が教室の中に吹き込んでくる。


 透き通るような肌と、煌めく緑の瞳、天然の白髪ミディアムヘアは周囲の人々を魅了し、視線の独禁法に触れてしまいそうなほどに釘付けにする。


 まるで神話の中から抜け出してきたような作り物のような美しい見た目に、まとわりつくミステリアスな雰囲気がより、彼女の魅力を引き立てている。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093081617201018


 騒ごうとしていた男子共もすっかり黙り込んでしまっていた。


 そうして、そのまま黒板に行くとスラスラと文字を書く。


【Wirt Charlotte】


「Mein Name ist Emilia von Dreyfuss. Ich komme aus Schweden. bitte denken Sie an mich...。エミーリエ・フォン・ドライフースデス。オネガイシマス」と、最後にカタコトの日本語で挨拶をした。


 全員が固まってしまう。


 何とも、か細くきれいな声で自己紹介を終える。

先生から結構きれいな女の子とは聞いていたし、朝見たという男子は「な!な!」と、自分が言っていたことは正しかったろ!と主張する。


 まさかこんなに可愛いとは...。


「んで、エミーちゃんの席だけどあそこの窓際の空いてる席だな」


 先生が指さす方を確認し、一つうなずく。


 そうして、真顔でそのまま席に向かい、ゆっくりと俺の隣の席に座る。


「え...っと、んじゃ、あとのことは任せたぞ。長峰ながみね」と、担任の先生に振られる。


「...はい」


 長峰ながみねそうは俺のことである。

そして、俺は地味にドイツ語をしゃべることができるのが。

こう見えて母がドイツ人であり、家では専らドイツ語で会話をしているので、日常生活レベルのドイツ語は問題なく聞き取れるし、話せる。


 どうやらこのエミーリエという子はまだ日本語は全然できないらしく、最初は留学生として迎え入れるのは難しいのでは?ということであったが、そんな時に白羽の矢が立ったのが俺だった...ということだ。


 もちろん、俺にもメリットはある。

どうやらこの翻訳係を請け負う場合には学校推薦...それも学費免除で行ってくれるということだ。


 別に金銭的にそこまで困っている家庭ではないが、親には感謝しているし、負担を減らせるならそれに越したことはないということで請け負ったのであった。


 さてと、自己紹介はしとかなきゃだよな。


「Ich bin So Nagamine. Wenn Sie etwas brauchen, können Sie mir alles sagen. Ich freue mich darauf, von nun an mit Ihnen zusammenzuarbeiten.(長峰宗です。なんか困ったことがあったら何でも言って。これからよろしく」


「...Ich habe nicht die Absicht, mit Ihnen nett zu spielen. Reden Sie nicht mit mir.(私はあなたと仲良くするつもりはない。話しかけないで)」と、こちらを見ることなくそう返答した。


「...え?」


 さすがに耳を疑ったわけだが...彼女とのこの地獄の日々はここからスタートすることになるのだった。

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