第47話 双子との顔合わせ
動き出した縁談はトントン拍子で進んだ。案の定リタは異を唱えず、4日後には顔合わせとなった。
セレーナとラーシャは領地にいた筈が、随分早い。恐らくクイトゥネン伯爵は縁談を持ち込む前に予め姉妹を王都に呼んでいたのだろう。
顔合わせの場所は王都クイトゥネン邸になった。別にガスティーク邸でも良かったが、妻に貰う訳だし一度出向くことにしたのだ。
俺達は馬車2台でクイトゥネン邸に向かった。メンバーとしては両親とその従者、俺とリスティ、リタだ。
徒歩15分ぐらいの距離なので、すぐに目的地に着く。
屋敷の入口でクイトゥネン伯爵が出迎えてくれる。クイトゥネン邸はガスティーク邸よりは少し小さいが、白い石貼りの立派な建物だ。
父がクイトゥネン伯と挨拶を交わし、応接室に移動する。
クイトゥネン伯がノックしてから扉を開く。両親の従者は部屋の前で待機し、俺達は室内に入る。
中には二人の少女が立っていた。
夏空のような青い髪に、同色の大きな瞳。整った小ぶりの鼻に、薄い唇。顔は全く同じで見分けが付かないが、髪の長さは違う。一人がセミロングで、もう一人が肩に触れるぐらいのミディアムだ。
セレーナとラーシャは昔から見分けが着くように髪の長さを変えていた。以前通りなら長いセミロングの方が姉のセレーナになる。
うん、可愛い。
背はリスティよりもかなり低く、150センチを切るぐらいだろう。胸は情報通りリタと同じぐらいだが、体との比率的に少しだけ膨らみは目立つ。
二人はスッと深く頭を下げる。
「ガスティーク侯爵家の皆様、ご無沙汰しております。クイトゥネン家のセレーナです」
「同じくラーシャです」
やはり長い方がセレーナで変わっていないようだ。
「セレーナ殿、ラーシャ殿、お久しぶり」
こちらも一礼し、父が言葉を返す。
クイトゥネン伯に勧められ、椅子に座り、長テーブルを挟んで向かい合う。リタは二歩後ろに立っている。
「さて、いただいた
「こちらこそ、ご足労いただき申し訳ない。さて、親が居ては話難かろう。退室させていただく」
父とクイトゥネン伯はもう十分に話し合っているので、今日はあくまで俺達が話しをする場だ。
クイトゥネン伯爵と俺の両親が退室する。
部屋の中には俺とリスティ、セレーナ、ラーシャとリタの5人になる。
まずセレーナが口を開いた。
「改めてお久しぶりです。フォルカ様、リスティ様。まずはご妊娠おめでとうございます。お祝いの言葉が遅くなり申し訳ございません」
「ありがとう。でもセレーナ、普段の口調でいいと思うよ。本音を確認する場だし」
俺はリスティの横でうんうんと頷く。
「お言葉に甘えて、じゃあ、おめでとうリスティ、フォルカさん」
「ありがとう、ラーシャ」
「じゃあ最初にリタさんの紹介かな。彼女はガスティーク家の家臣で、フォルカの愛妾。たぶん何年かしたら正式に側室に加えると思う」
リタが半歩前に出て、礼をする。
「リタ・ラナメルと申します」
「セレーナです。よろしくリタさん」
「ラーシャです。よろしく」
「リタ、君も席に」
俺が促すと、少しきまりが悪そうにリタも座る。
「それでセレーナ、ラーシャ、今回の縁談二人はそれでいいの?」
俺の問いに二人は真剣な顔で俺を見つめ「はい」と言った。
「私とラーシャが風魔法適性10と判定されたとき、父も母も祖父も祖母も、家臣達も、皆大喜びでした。ついにクイトゥネンの血統から最高位が出たと。祖父なんて先祖の墓の前で泣いてました」
セレーナは一度言葉を切り、手のひらで自分を指す。
「私達は、この血を継ぎたい。先祖代々磨き続けてきた魔法使いとしての血統を。その相手として、フォルカさん貴方程の人はいません」
「そもそも選べる立場でもないですけど、私も姉さんと同じく、最良だと思います」
建前を言っている表情ではない。本心だろう。
貴族としては当然の価値観だ。クイトゥネン家の血は何百年と、いやクイトゥネン家として成立する前から考えれば恐らく千年以上、魔力の強い者が家を継ぎ、魔力の強い者を配偶者に迎え、鍛えてきたものだ。
魔法の力は大切だ。それがあればこそ外敵から国と領地を守ることができるし、病を抑えることも、治安を守ることもできる。
「「あと」」
声をハモらせると、二人は表情を崩し、微笑んだ。全く同じ動きで、両手の指先を胸の前で合わせて、同時に口を開く。
「「容姿はとっても好みです。フォルカさんかっこいい」」
笑顔と仕草が、可愛い。えっ、この娘達2人とも貰って良いの?
「フォルカの性格の良さは私が保証するよ」
リスティがそう言って胸を張った。
「ありがとう。俺はこの4人で上手くやって行けそうなら歓迎。俺は胸の小さいの平気……というか好きだから、俺にとって二人はただの美人だよ」
「「はぅ」」
二人揃って頬を赤らめた。可愛い。
「うんうん。それで、私は元から友達だし、上手くやっていけると思うよ。リタさんはどう?」
「いえ、私は家臣の立場ですので。精一杯奉仕させていただくだけです」
「家族として、仲良くやろうね?」
リスティがリタに顔を近付け、圧をかけながら言った。
「は、はい。その、大丈夫です」
リタはタジタジしている。
「俺の両親も縁談を受ける方向だし、ならほぼ決まりかな」
4人で頷き合う。
どうやら、ちっぱいが一気に二人増えるらしい。
「あ、フォルカの大きいから、覚悟はしておいてね。二人は小柄だし、少し心配」
最後にリスティがそんなことを言った。リタは静かに頷く。セレーナとラーシャは目をパチクリさせた後、目を見合わせ、少しだけ不安そうな顔をした。
こうして顔合わせは終了。その後一応王家にも連絡して同意を取り、正式に婚約となった。今度は試す必要も急ぐ必要もないので、嫁入りは早くても秋の終わりぐらいだろう。
それまではまだ暫く、今の生活である。
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やったねフォルカ、ちっぱいが増えるよ!
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