推しキャラに転生したので思うがままに生きようと思います! ~主人公キャラなんてガン無視です!~

七草かゆ

第1話 推しキャラに転生したんだが?

 ん……? ここはどこだ?

 ふと目覚めると見知らぬ部屋にいた。それもかなり豪華なところに。ふかふかの絨毯に無駄に装飾の多い壁。こんな部屋など見たこと無い。


「ん? キリカお嬢様どうかなされましたか?」


「うわぁ! びっくりした!!」


 急に話しかけられて体が震えた。誰かいるなんて思ってもいなかった……。それにしても、話しかけてきた少女はものすごく可愛い。上手く着飾ったメイド服を着ている。やけにスカートが短い。純白のニーソックスに包まれた両足は、スラリとしながらも程よく肉付きがある。健康的だ。

 コスプレ……ではないよな。


「ん? どうなさいました?」


「い、いやなんでもない」


 !?!?

 自分から発された声に思わず驚愕した。ものすごく高かった。それも、かなりの美声だ。アニメとかで出てきそうなそんな声をしていた。これが自分から発生したのだからそれはそれは驚くしかなかった。


 んー? でもこの声どこかで聞いたことあるな……。


「な、なあ……鏡って無い?」

「鏡ですか? 少し待っていてください」


 程なくすると辺りが装飾された木製の手鏡を持ってメイドの少女はやってきた。


「これでいいですか?」


「あ、ああ。ありがとう」


「キリカお嬢様。今日はどうしたのですか? なんだか、いつもみたいに元気が無いですけど。それに口調も変ですし」


「い、いやぁ。なんでもないよ」


 手鏡で自分の顔を確認するとそこにはきーたんがいた。きーたん。通称アメリア・キリカ。ソード・ブレイドというMMORPGゲームに登場するキャラでゲームのヒロインの一人だ。容姿端麗で学力優秀の魔術師だ。そして何より俺の最推しだ。


「きーたぁぁぁぁぁぁああああああん!!!! リアルきーたんヤバすぎまじかわいい。なにこれ天使? 天から間違って降りてきちゃったの? こんなやばすぎでしょ。世界の物理法則無視しちゃってるじゃん! 最強に可愛い! 約して最かわじゃん! ………………あ」


「き、キリカお嬢様…………」


 隣にいたメイド少女がドン引きしている。身を震わせて涙目になってしまっている。


「い、いやぁ。これはですねマリアナ海溝を往復するよりも深いわけがありまして……」


「お嬢様……と、とりあえず……旦那様に報告しておきま――――きゃっ」

 後ずさっていた少女が落ちていたクッションに足を囚われバランスを崩した。俺はそれをすかさず受け止めた。


「――よっと」


「あ、ありがとうございます。すみません。私としたことが……」


「大丈夫だった? 怪我ないか?」


「だ、大丈夫ですッ!」


「良かった……それと、一生のお願いだ! このことは父さんには言わないでほしい!」


 きーたんに迷惑はかけられない! もしこんなことがバレたらきーたんがおかしな人みたいになってしまうじゃないか。いや、今は俺だけど!


「わ、わかりました。今回は見逃します。でも本当に今日は変ですよ。いつもなら風魔法で部屋をぐちゃぐちゃにしてるのに今日は全くそんな事せず……しかも私を助けるなんて」


「きーたんそんな事してるの!?」


 衝撃の事実じゃないか……いつも、落ち着きのある誠実な娘だと思っていたのに……でも、それはそれでアリ! 想像するだけで萌えます。


「きーたん……え、ええ。それはもうこの部屋の原型がとどまらなくなるほど」


「マジカ……」


「マジです」


「……」


「……」


「なんかごめん……」


「いいですよ。全く。これからはできるだけ少なくしてくだされば。屋敷の部屋がもう3つもなくなってるのですから」


「以後気をつけます」


 俺じゃないけど。きーたんがやったんだけどね。

「それでは、私はもう行きますよ。変なことしないでくださいね? ね? ……フリじゃないですよ?」


「わかったよ! 任せてくれ!」


「それでは失礼します」


 メイド少女は深々とお辞儀をしながら部屋を去っていった。


 あっ。あれだけ話したのに名前聞くの忘れてた。

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