The other day , I met a bear

 身支度を整え朝ごはんへ向かう。

 パンとフルーツジュースでぱぱっと済ませ、出発の準備をする。

 コートたちが完全に乾いてなかったので、魔法で乾燥させる。


 よし。

 準備が出来た。

 ロビーに行くとみんな揃っていた。


「お待たせしました」

「それでは行きますか」


 外に出ると昨日と変わらない雪景色が広がっていた。

 サクサクと歩きだし、町を出るとすぐに森が見えてきた。


「森だ……」

「森っすよ?何で急に?」

「なんとなく」


 いや、林とかは見慣れていても森って中々見なくない?

 公園みたいに手入れされてるものは別として。


 黙って歩くのと、話ながら歩くのとじゃ気分が違うくない?

 雪で歩きにくいから、喋る気があまり起きないけど。


「迷子にならないように気をつけてくださいね」


 私とウォルターに向かってアレンが注意を飛ばしてくる。

 方向音痴だと思ってはいるが、誰かと歩いててはぐれたことはないので大丈夫だと思う。


「一人だと迷子になるってこと?」

「……黙秘します」


 さっきまで話ながら、とか言っていたが前言撤回である。


 黙々と歩いていくと、森の中も誰かが歩いた跡であろう道がなんとなく出来ている所にたどり着いた。

 その道をしばらく歩いていると、ウォルターが声を上げる。


「どうした?」

「いゃ、今視界の端をなにかが動いたような……気のせいっす」

「ウサギか何かかもね」


 気にせず進む。

 ちなみに、前からアレン、リアム、私、ウォルター、ノアで歩いている。

 またしばらく進むと急に風が吹いてきた。


「…ぅぉー……ーー……」


 ん?風の音の中に何か聞こえた?


「静かに」


 アレンの言葉に全員で耳を澄ます。


「ぅお……ザク…ザク……うー……」

「え、なんの」


 音ですか?と聞こうとしたら、私以外の全員が一気に厳戒態勢になる。

 不思議に思い、みんなの視線を辿ってみたら、白い壁が立ちふさがっていた。


 否。

 白い壁だと思ったものは、両手を天高く伸ばし、立ち上がっている白熊だった。

 こっちの白熊は眼が赤色で白に赤がよく映えていて、それはそれは凶悪面だ。

 テレビを通してしか熊の立ち上がった姿なんて見たことないな。


 ポカーンと見上げていたら、ノアに急に手を引っ張られる。


「アイナちゃんは逃げるよ」


 すぐさまアレンが指示をとばす。


「雪グマだ。リアムはアイナをつれて離脱!一気にやるぞ!!」


 あっという間に戦闘になり、私はリアムに引かれその場を離れようとする。


 しかし。


「ヴオーー」


 雪グマが凶悪な爪を振り回す。

 近くに生えている木が何本か斬り倒されていく。


 ……こいつのスペックおかしくね?

 てか、熊に会ったらゆっくり行動するとか、目を離さずに下がるとかそんなのじゃなかった?


 とにかくその場を離れようと雪グマの視界を縫って、脇道に逸れることに成功する。

 そしてもう少し離れようと足を踏み出すと……


「「え?」」


 踏み出した足は、予定されていた地面を踏むことなく、なんの抵抗も感じられない。


 突然のことに驚き、固まる私たちはそのままなんの対策もなく下へ下へと落ちていった。

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