作者の気持ちなんて知ったこっちゃない

 これって、何て言うんだっけ?壁ドン?

 まだドンされてないか。

 ちょっと前に流行ったよね?

 少女漫画とかで騒がれてたのをテレビか何かの特集でみたぞ。

 こういうときってどうすればいいのかな。


 1.このままにする

 2.蹴り上げる

 3.突き飛ばす


 さぁ!正解はどれだ。

 なんてアホなことを考えている間に距離が縮まり、目の前にアレンがたつ。


 え、ほんとにどうする?え?え?

 記憶のなかでこんな風に迫られたのは、あのとき以来だ。


 あの時は、先生になって数年目っていう若い担任にたてついたときに、廊下に引っ張り出された。

 私は彼女の勘違いを指摘しただけだったのに。

 壁際まで引っ張られて右手で私の右肩の服をもって、右腕を水平にする。

 そしてそのまま壁に押し付けるとあら不思議。


 私の首が絞まったのだ。


 ……あの時は本当に怖かった。

 っと、感傷に浸っている場合ではなかった。


 パニックになりつつ、考えた答えは。


 ……やっぱり、け


 そこまで考えて誰かがこちらに向かってくる足音がする。


 だだだ、誰か来ますよ。ほら。


 思いが通じたのか、アレンが離れて足音の方へ向かう。


「なんだか大きな物音がしましたが、どうかされました?」

「すみません。本を落としてしまって」


 危なかった。

 なにが危なかったのかはわからないが。

 現れた司書さんと話している間に私は落ちた本と紙を拾う。


 紙は全部で五枚でそのうちの一枚は、折り畳まれていた。


 手早く集めて机の上に紙を広げる。

 折り畳まれていない紙は、下に小さくページ数らしきものがかかれていた。

 畳まれた方を広げると地図のように見える。


 地図はパッと見てどこがどこだかわからないため、すぐにパスする。


 畳まれてないほうはミミズのはったような字がかかれており、しかも滲んだり虫食いにあったりして全然読めない。


 国語の「下線の部分の主人公の気持ちを答えろ」とか「作者の意図とは?」みたいな問題はさっぱり分からなかったけど、漢文なら得意だったなぁ。

 だってあれ、指定された順番に読むだけじゃん。


 それなのにあれなに?

 楽しく物語を読んでいるのに、作者の意図とか気持ちとかいちいち考えてないよ。


 ……


「読めん」

「これは、さすがに私も無理ですね」


 いつの間にか司書と話が終わったアレンが隣から覗き込んでいる。


 距離が近くない?


「……地図の方はわかります?」

「昔のものですね。いまのものと比べてみますか?多少地形が変わっていても見比べればわかるかもしれません」


 気にしたら負けだよ。

 ノアとレティシアに伊達にもぐもぐタイムを眺められてないからね。

 元々、スルー能力はあった方だと思うけどこっちに来てからも鍛えられてるような気がする。

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