気がついた時には
それから二人で
「たまに出てきても『偉大な魔法つかいがいて、その人は人の感情を魔力に変換出来ないかと考え、研究していた』以上の情報が出てきませんねぇ」
「うーん、もっと古い物か、下手したら禁書庫のほうか?」
ぶつぶつと呟いているアレンを横目に次の本を探そうと備え付けのはしごを登る。
もちろん、今日もスカートの下にはハーフパンツをはいているので心置きなくはしごがのぼれる。
けっこうな数の書籍に目を通しているので、記述がありそうな本はなかなか見つからない。
一回降りて場所を変えようとした時、本と本の間に紙の束が挟まっているのに気付いた。
ん?なんだこれ?
引っ張り出そうとするが、本がぎっしり詰まっていてなかなかとれない。
横着しないで本を一冊、出せばいいのだが。
そう思いいたって紙の隣の本に手をかける。
ぐぐぐ。なかなか抜けない。
なにくそっ。負けてなるものか。
えいっ、引っ張ると本はスポリと勢いよく抜けた。
紙の束と近くの本、数冊と共に。
えっ、不味い。
本が下に落ちたら製本が……バラバラ殺人事件になってしまう。
焦って手を伸ばすと一冊に手が届く。
やった、と思ったのは間違いだった。
何せ伸ばした手は怪我をしている。
ビリッと痛みが走る。
そして、痛みで気付いた。
あれ?ここ、はしごの上じゃね?
気付いた時には時すでに遅し。
バランスを崩してそのままはしごから落ちる。
のわーーー!!
死なないだろうが怪我があるだろうとギュッと目をつぶる。
ドタバサみたいな音はすれど、痛くはないことを不思議に思い、若干嫌な予感をしながらそおっと目を開ける。
予想通り、アレンを下敷きにしていた。
しかし、前回ガッツリ文官班を下敷きにしたときは、言葉通り「下敷きにした」だったが、今回は「受け止めてもらった」感がすごい。
「ありがと、ございます」
「大丈夫ですか?怪我は?」
そのままの体勢で聞かれるが、一刻も早く退きますよ。
「だ、大丈夫です。重いですよね、退きます」
「重いどころか軽すぎますよ。ちゃんとご飯を食べてますか?」
眉間にシワを寄せて真剣に聞かれる。
「ぃや、それは……」
すいっと目をそらしてしまった。
そしてじりじりと後ろに下がる。
「やっ。ちゃんと食べてますよ。はい」
やばい。
ここんところ、朝御飯は飲み物だけだし今まで以上に食べてない。
特に休みの日は夜一食でも余裕で生活していける。
「嘘ですよね」
何をもって?
そして、一歩づつ近づいてくるのやめません?
「最近食べてる量が少なかったり、お昼以外食べてるの見ないな、と」
それってわかってて聞かれてるやつじゃん。
退路がたたれている。
実際物理的にめ退路がたたれている。
私の背中が本棚にぶつかったのだった。
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