霊感はないが
「これって、昔実際にあったとされる話が『○』で、創作というか伝説と言われる話が『●』ですね」
「たぶんそれだと思います」
アレンの指摘に首肯く。
こちらに来たときに聞いた勇者の逸話的なのは○に分類されていて、創世記的なのは●に入っていたのでたぶんそういうことだろうと思っていたのだ。
まだ中身を確認してはいないが。
歴史の成績が悪い私にしてはよく覚えていた方だと思う。
すごいぞ、自分。
実は私、誉められると伸びる子なんです。
「で、その「黒い魔法つかい」は、どっちにはいってるの?」
ノアが指で目次をトントンと指さししながら目的の話を探していく。
止まった指の先には『○』がついていた。
「ってことは、実話?」
「なのかなと思いまして」
「じゃあ、この黒い魔法つかいは実在していてもおかしくないってことっすか?」
ウォルターの言葉に私は腕を組んで考える。
そう思うけど、そうじゃないかもしれない。
「今までそんなことを聞いたことないですよね?」
「聞いたことあれば、今回の件にすぐ察しは付きましたが、全然気づきませんでした。まず実話だったことも今、知りましたし」
ですよね。
確かにこの本、上の方に追いやられていたし、埃っぽかったし……
大衆向けではなかったでしょうね。
「じゃぁなに?昔話これはは実話で、今になって魔法つかいが復活したってこと?」
「さあ?」
そこまでは知らん。
「調べてみる価値はありそうですが……」
「どうやって調べるかだよね」
こっちの世界はさ、石碑とか首塚みたいなのはないのかな?
向こうの世界だと紙媒体もあるけど、やたらと石碑とか城跡とかあるし。
もしそういうのがあるのなら、
「どっかに封印されていて、それがなんかの拍子に出てきちゃった、みたいなことはあり得ませんか?」
妖怪とかを題材にした小説ではよくあるパターンだよね。
封印の御札とか石とかが取れたりずれたりして、封印が解かれちゃうやつ。
「悪霊の鎮魂のために建てられた石碑とか、あまりにも強い魔物を封印してある洞窟のようなものとかもありますよ」
「そうなんですか!」
「好きそぉっすね……」
「もちろん」
私の返事にウォルターがあきれている。
霊感ゼロだし幽霊見たこともなければ、心霊スポットと呼ばれるところにも行ったことないけどね。
そういう話は好き。
テレビの夏のホラー特番とかネットで長編読んだり、映画とかもバンバン見ましたよ。
私はジャパニーズホラーが好きですよ。ふふふ。
「ごほん。じゃあ、遺跡とか石碑とかについて調べてみましょう」
手詰まりで迷宮入りは免れたらしい。
とりあえず一安心である。
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