瞬間湯沸かし器
私の反応を見てエドワードは苦笑いをしている。
話の区切りを見てらアレンがエドワードに聞く。
「で、どうだった?」
「はい。まず、夜会の事件ですが、今朝犯人が自首してきました。彼女は子爵令嬢で、どうも被害者に好意を持っていたみたいで、「話をしたい」とあのバルコニーに呼び出したみたいです。なのに、被害者は自分のもとに来る前にいろいろな女性に声をかけていているのを見て、ついカッとなった、と」
そこまで聞いて思ったのは、もしかしたらそのうちノアも被害に合うんじゃないかと。
チラりとノアを見ると。
「ん?なになに?」
「……別に」
ウォルターも私と同じようにノアを見ていた。
そう思うよね。
良かった、私だけじゃなくて。
「それでですね。頭のなかが真っ白になって気がついたら被害者は転落していた。何が起こったかわからず、怖くなってその場から逃走したと話しています。家に帰って、怖くて引きこもっていたのですが、流石に落ち着いたらことの重大さに気づき、自首してきたようです。記憶はないけど、自分がやったという自覚はあるようです」
「頭が真っ白になって、記憶がない……」
そこが共通点のようだ。
「お茶会の話の方はまだちょっと調べがついていません。すみません」
「急がせたな、悪い」
「いえ。で、依頼の三件目、昨日の事件ですが、当人同士、家同士で話し合いがもたれ、何もなかったことにするようです。ご令嬢の方は婚約破棄覚悟だったようですが、男の方が「そんなに自分のことを好きだったのか」と再認識したようで、仲直りしたみたいです」
ちょろいな……
「やはり、気がついたら事件が起きていたっていうのが気になりますね」
「事件後の行動だったり、反省の感じだったりを見ると差がすごいですね。なんかこう、前フリがないって言うか……」
私は『瞬間湯沸かし器』と呼ばれたことがあるほど急にキレる人だ。
でもそれは自分の中でちゃんとした前フリがある。
外から見てわからないだけで。
大なり小なり
癖でそれが外から見てわからないように隠してしまうが普通にちゃんと前フリがある、と思う。
でも今の話に出てきた人たちがは前フリが薄い気がする。
例えば「この人が好き」と思い余って殺してしまうにも、「好き」→「殺そう」の間には葛藤があるはずなのだ。
葛藤があり、それでも行動に出るというなら記憶に残らない訳がない。
その後の反省も早すぎるし、もしそれが演じているなら相当の策士である。
私としては、殺したいほど嫌いなやつを殺すことができたなら、もっと喜べ、反省するなと思ってしまうのだが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます