事件勃発
「もういいわ!!私のことなんて好きじゃないんでしょ!!」
「だから、ちょっ、待てってば。おちつけ!!」
ヒートアップした言い争いは、ここが図書室で静かにしなくてはいけないところだというのを忘れさせたらしい。
しかもなかなかのヒートアップっぷりに私と同じ様に遠巻きにしていた人たちがいたが、誰も仲裁にでていかない。
痴話喧嘩ですか。
時と場所を考えましょうよ。
しかし彼女さん、大人しそうに見えて激しい人だったんだな。
彼氏さんが何をしたのか知らないが、様子から見ると浮気か?
こんなに激しい喧嘩なんて、なかなかお目にかかれないよな。
冷静眺めていると、彼女さんの方が何かを構える。
窓から差し込む光にそれが反射して光る。
こちらの世界に来てからそんな現場ばかりに居合わせているような気がする。
「貴方に好かれないなら生きていても仕方がないわ!!」
振りかぶる彼女に横からタックルをして止めにはいる。
極論に入るの早いな。
しかも好かれてないなら殺してやるって暴論感が出てきたぞ。
おい、彼氏さん。
あんたが止めなさいよ。
固まっている場合ですか!!
「はなして!!」
「そういわれて、離すわけ、ないでしょ、っと。」
うまいこと刃物を手から取り上げ、なるべく遠くに投げる。
カラン、と音を立てて刃物が落ちる。
それを素早く、彼氏さんが回収。
そして、成り行きを見守っていた女性司書が加勢してくれて、彼女を取り押さえる。
「ったく、痴話喧嘩は他所でやれって……」
「……」
取り押さえた彼女さんは、急に大人しくなる。
「あの、こういった場合、このあとどうすれば?」
「わかりません。はじめてのことなので……」
司書と一緒に首を傾げる。
「あ、わたくし……いま、なにを?」
彼女さんが不思議そうにこぼす。
「あのー、落ち着きました?」
「私は、いったい……」
浦島太郎状態とでも言うのだろうか。
状況がよくわかっていないらしい。
もう一度、司書と顔を見合わせて首を傾げる。
「自分が今何をしていたのか説明できますか?」
「確か……ウィル様にお話があって、探していたと思うのですが……」
司書の質問に頬に手を当てて首をひねる。
見た感じ、すっとぼけてる訳ではないらしい。
「お前が急に俺に浮気だなんだと突っかかって、殺そうとしたじゃないか!!」
「え、私が……」
彼氏さんの説明に彼女さんは、身に覚えがないと返している。
ついさっき聞いた『変な事件』の話が思い返される。
これは、ちょっと詳しく聞いた方が良さそうだよ。
「わかりました。彼女さんは私と一緒に来ていただけますか?別に責めたり捕まえたりしようとは思っていません。聞きたいことがあるだけです」
話を聞きたいを強調して伝える。
彼氏さんが何か言いたそうだが、何か言われる前に司書にもお願い事をする。
「第二のアレン班から誰か一人、食堂に来てくれるように伝言をしていただけますか?」
司書が首肯くのを見て、彼女さんと移動する。
あ、もちろん彼氏さんは今からは彼女さんの話を聞きたいので、ついてこないでくださいとお断りいたしました。
ただの喧嘩なら双方から話を聞きたいけど、今回はちょっと事情が違うみたいなので、私は彼女さんの担当で。
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