泣きたい時に綺麗に笑える人になりたい

 つまり、全部が全部丸く収まったということですかね?

 まぁ、それなら良かったよかった。


 ところで、何故お二人が?


「みんな仕事に行ってるわ。交代で様子を見に来るって決めたの」


 いやいや、貴女お昼寝していたではありませんか。

 サボりですね。


「心配してたのよ」


 まったく説得力がない。


「兎に角、無事に目を覚まして良かったわ」

「ええ、そうですね。何か食べますか?」

「飲み物が欲しいです」


 頼むとルーカスが直ぐに水を持ってきてくれる。

 コップを受けとり、水を飲んでいると、扉をノックされる。


「はーい」


 レティシアが能天気に返事をする。

 あれ?ここ、私の部屋じゃなかったっけ?


「おう……おう!!!起きたのか!!!!」


 入ってきたのは、オリバーだった。


「ども」

「暢気だな。こっちはどれだけ心配したと思ってるんだ」

「ご心配をお掛けしました」

「まぁ、無事だったなら良かった。話は聞いたか?」

「生存報告なら一通り」

「生存報告って……他に言い方なかったのか?まぁいい。で、これからどうする?」


 え、まさかやっぱり厄介者だから出てけって?

 疫病神だからね……仕方がないか。うん、うん。


「ちょっと…言い方気を付けてくださいよ。それだと勘違いしてますよ」

「なに言ったんだ、ルーカス。俺はただ、こんな事件に巻き込まれてばっかりだから、嫌になっただろう、って」

「今の言い方だったら、絶対出てけって言われたと思っていると思いますよ」


 違うの?

 首を傾げていると、


「ほら、勘違いしていますよ!!出ていかないでくださいよ。絶対だめですからね。このおっさんの言うことを真に受けないでくださいね」

「そうよ、もしそうなったら私、アレンに殺されちゃうわ!!それに、ソラがご飯を作ってくれなくなっちゃうわ!!!」


 そりゃぁ、知らない間に部下がやめてたら怒るわな。

 レティシアにとってソラのご飯は大事らしい。


「誰がなにをするって?」


 声の方をみれば、アレンを始め、ノア、ウォルター、リアムがいた。


「お嬢ー!!本当に良かったっすぅ!!」

「良かったよー。本当に、良かったー」


 ウォルターとノアが走りよってくる。

 ベッドから動けないので、逃げられない。


 ウォルター、黙れ。ノア、暑苦しい。


「団長、後でちょっと顔を貸してください」

「いゃ、ちょっ。ちょっとした言葉のスレ違いだぞ?」

「盛大に勘違いしてますよ、きっと。今までの経験上」

「……悪い」

「誰も出ていってほしいなんて思っていませんからね」

「むしろ、出ていかないでくださいっす!」


 ほんとにほんと?


「「「「もちろん」」」」


 この人たちは、本当にお人好しだな。

 そして私のほしい言葉をくれる。


 わーわーと騒がしくなった部屋を見渡し、みんな元気だなとあきれる。

 そしてその姿を見て、私はそこには入っていけないけれど、端から見ている分には許されるだろう。


 私は見ているだけで充分なんだ。

 だって、脇役だもの。


 ウォルターが余分なことを言って、リアムに突っ込まれる。

 ここ最近、見慣れたやり取りに「あぁ、本当に生きているんだなぁ」と改めて思う。


 そこに思い当たった瞬間、泣きたくなった。

 それがどうしてなのかはよくわからないけど、とにかく泣きたくなった。


 私、情緒不安定すぎではないか。


 でも、泣くのが恥ずかしくて、それならいっそこのやり取りをみんなと同じように笑っていよう。


 最近、ポーカーフェイスが崩れてきた気がする。

 それなら次の目標は、泣きたいときに綺麗に笑える人になろう。


 そんなことを考えながらみんなに笑いかけると、みんながえっ?とこちらを見返す。


 はいはい、私が思っている以上に笑えてないんでしょ。

 知ってるってば。


(何故今笑った??)




 そう、反応が薄いのが常だったし、安堵で泣き出す人はいれど、笑う人はなかなかいないのだ。

 一同「やはり、感情がおかしくないっているのでは?」と思っているのを本人はしらない。

 そして見たこともない笑顔に「もっと笑えばいいのに」と思うのだった。

 でも笑わせようと思っても、イマイチツボがわからないため、これから先も長そうだと思う一同であった。

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