嫌われ者だから

 死後の世界ってまるで寝ているのと同じように気持ちがいいなぁ……


 でも、何だろう?左手が重い。

 刺されたのは左わきばらだし、右利きだから左手が重いっていうのが腑に落ちない。


 ん?わきばらのことを思い出したら、痛くなってきたぞ。

 それどころか、身体中痛いしダルい。


 天国ってもっと花があるとかさ、石を積むとか、なんかイメージが違うぞ?

 地獄か?

 でも地獄だったら、もうちょっと赤だったり黒だったり、生々しいというか……


 これ、現実的な痛みじゃないか?



 うっすら目を開けてみる。

 ん?目を開けていなかった?

 てか、眩しいな。


 目を開くと見覚えのある天井だった。

 一瞬、実家の天井かと思ったが、実家はもっと日本家屋的だったはず。


 ということは。


「(異世界の自室か)」


 生きてる。

 どうやら、私はとことん神様に嫌われてるらしい。

 意地悪な神様は、私を簡単に死なせてくれない。

 天国にも入れてもらえないらしい。


 自分では声が出ていたつもりだったが、部屋は静かなままだった。

 左手の違和感を確認しようと見ると、誰かの頭が見える。


 レティシアさん?

 どうやら、レティシアが私の手を握ったまま寝ているらしい。


 体を起こして手を引き抜こうとするが、なかなか引き抜けない。


 うんとこしょ、どっこいしょ、それでもおてては抜けません。


 そんなことをしていると、レティシアが目を覚まし、バッチリ目が合う。


「あ」


 あ?


「め」


 め?……あめ?雨?飴?


「目を覚ましたぁぁぁ!!」


 はい?と首を傾げようとしたがその前に抱きつかれる。


 デジャ・ビュ!!前にもあった気がするぞ?


 むぎゅう。

 ちょっ。苦しい……死んじゃう……ちーん。


「せっかく目を覚ましたのに死んでしまいますよ!!」


 丁度、部屋に入ってきたルーカスが止めに入ってくれた。


「あら、ごめんなさい。嬉しくて、つい」


 おぇ、げほげほ。


「でも、本当に良かったわ。あれから、三日も意識がなかったのよ。このまま目を覚まさないんじゃないかって心配していたんだから」

「三日!!」

「何処か違和感や痛いところなどありませんか?」


 ルーカスに聞かれて黙考する。


 三日も寝てたなら体がダルいのはその通りだろうし、傷がいたいのは当たり前のことだよな。


「特には……」

「本当に?大丈夫?無理してない?」


 起きたばっかりで無理のしようがないんですが。


「まぁ、ゆっくりすればいいと思いますよ」


 うんうんと同意するレティシア。


 それよりも聞きたいことがあるんです。

 私のことはどうでもいいんです。


「あのあとは?みんなは?」


 若干声が震えた。


 ここにレティシアがいるのは何となくわかるけど、なんでルーカスなの?


「あっ、えーっと。実はね……」

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