なんてったってコミュ障ですから

 沈黙に耐えかねたかどうかはわからないが、先に口を開いたのは私ではなかった。


「まずは、自己紹介をしたほうがよろしいですね。私はこの国の第二騎士団に所属しています、アレン・バグフリードと申します」

「俺はウォルター・マクガレンっす。アレン分隊長の部下っす。よろしくお願いします」


 さっきまで怖い顔をしていたイケメンさんがアレンさん、チャラい方がウォルターさん。


「佐藤 愛菜です」


 自己紹介タイム終了。

 はやっ。趣味特技とか言った方がいい?

 ん?分隊長って?


「あの、分隊長って?」


 私の質問にアレンさんが答える。


「騎士団の中にも班がいくつかありまして、その班の1つを任されています。班毎に諜報が得意だったり、聞き込みが得意だったたりといろいろありますね」

「団長、副団長の次に偉い人っす」


 なぜ、お前が偉そうなんだ、ウォルター。


「偉いかどうかは別として、私たちの班は大体、文官的なことをしていますね」


 頭脳派ってこと?

 なるほど……

 ぐっ、コミュニケーション不足な私には話を広げることができない。

 それを察したのかしてないのかアレンさんが話を続ける。


「では、本題に入ってもよろしいですか」

「……はい」

「では、先程の話を詳しく聞いてもよろしいですか」

「魔法の練習をしていたら絡まれました。肩を押されて、足を引っ掛けられました。物理的には足は引っ掛けられていませんが」


 まぁ、攻撃魔法とか打ち込まれてけちょんけちょんにやられてもよかったんだけど。

 死なない程度に。

 やられるなら陰で陰湿にやられるより、派手にやられたほうのがいいのになぁー。

 そこまでの気持ちはあの人にはなかったらしい。


「魔法を使われたということですか?」

「たぶん?」


 そこまで話すと二人は難しい顔をして考え込む。


「王宮内の決められた場所以外で特に理由もなく人に向かって魔法の使用は禁止っすよね?」


 え、そうなの?

 園庭で練習しまくっちゃったけど。


「あ、心配しなくて大丈夫ですよ。『人に向かって』発動してませんよね」


 もちろんです。

 全力で頷く。

 その瞬間、アレンさんがふわっと笑う。


 うわっ。

 少女まんがみたい。

 イケメンの笑顔破壊力すごいな。

 ギャップ萌の人とかも一発で落ちるだろうなぁ。


 なんて事を考えなが、何故か私が恥ずかしい思いになり、視線をそらす。

 そういうのは主人公さんにやってあげてくださいな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る