権力は行使するためにあるらしい

 気分は怒られている生徒だった。


 ……生徒、先生の関係ではないし、ましてや初めましての人ですが。


 そうだ。

 どうせなにか言われるなら、全力でいこう!!


 実は私の中で1つ、決まりごとがある。

 普段は、「まーいっか」「まーいいや」で流してしまうが、ある一定のラインが存在している。

 そのラインを超えたなら、私は全力で相手をしよう。



 叩き潰すなら全力で。

 砕け散るなら粉々になるまで。


 あの時あぁしていれば、と後悔することが多々あるけど、ラインを越えてしまったら、後は行き着くところまで行くしかない。


 転がり始めた石は坂の下まで止まることができないのだ。



 前回はクラスメイトの悪口に余りにも我慢ができず、相手の使っている机を蹴り飛ばし破壊したのだ。

 しかも、綺麗に入って一発で机の足が折れたのだ。

 今後、どうせ私が悪者にされ、悪口、陰口言われるなら全力で相手をしよう。


 浜島さんの前に移動をし、ぐっと腹に力を入れる。


「嘘つき」

「はぁ?嘘はそっちでしょ?あ、もしかして痴呆?自分がやったことわすれちゃったんだぁ〜」


 さぁ、出番だ、表情筋。

 露骨に可哀想な人を見る顔を作るってみる。

 浜島さんは、顔を真っ赤にして怒りだしたので、表情筋が仕事をしたことを知る。


「なな、何を!私がやったって言う証拠はあるの。証拠!!」

「やってない証拠は?」

「そんなのやったやらないの水掛け論じゃない」

「普通なら貴女が疑われる状況ですね。」


 私たちの不毛なやり取りに騎士さんが入ってくる。


「では、目撃者の話を聞いてみましょう。」

「え、目撃者?」


 その言葉を待っていたかのように、もう一人騎士さんが現れる。

 明るい茶髪で鳶色の瞳のいかにもチャラそうな人だった。


 勿論、服のラインは青色だ。

 そして後ろに侍女服の女性が二人。


「いゃぁ、なかなか口を割ってくれなくて困りました。でも、明らかに見ていたはずなのに「見てない」って言うもんだから〜」


 困った風もなく、軽い口調では話す。

 それに対して女性二人は、気まずそうな、ばつの悪そうな顔をする。


「結局、教えてくれましたよ。聖女様が彼女を押したって」

「はぁ?私押してないわよ。嘘言わないで!」

「折角口止めしたのに残念っすね」


 へらりと重要な事をつげる。


「口止め」

「そう、口止めされてたんですって。『今からなにかが起こったとしてもあなたたちはなにも見ていない。下手に何か言ったらどうなるかわかる?私は『聖女』なのよ。』だそうですよ」


 はー。さいですか。用意周到なことで。

 流石、聖女さま。何でもありですか。権力万歳。


 ここまで来るともう、どうでもよくなるね。

 最初の情熱はどこへやら。

 早く話が終わらないかな。

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