ヴァンパイアハンター 〜僕は拐われた妹の為に吸血人になる〜

@ato625

第1話

巨大なカボチャの化け物がニタッと僕のことをみて笑った。


「なんでこんなことに……」


そのカボチャの化け物は僕の妹を気持ち悪い触手で捉えている。


妹の意識はない。


助けないと、早く妹を助けないと……


しかし、僕の足は地面に張り付いている。


何ビビってんだよ……


今日、ここまで来るのにどれだけ犠牲を払ったのか思い出せよ……


僕は自分の胸に手を当てる。


カボチャの化け物がゆっくり動き出す。


「クソッタレ!!」


僕は化け物に向かって行った。



窓から差し込む朝日とともに、妹が元気よく扉を開いた。


「おはよう、兄ちゃん!」


僕は眠い目をこすりながら返事する。


「おはよう……」


妹はにっこり笑って「兄ちゃん、今日って彼女とデートの日じゃないの?」と言った。


僕はちょっと照れくさい顔をしながら頷く。


「まあ、そうなんだけど……」


妹は得意げに笑みを浮かべ、「ふふん、兄ちゃんもついに大人のデートか。どんなプラン?」と茶化してくる。


僕は寝起きが悪かったせいか、恥ずかしかったせいか、少し不機嫌そうに応える。


「そんなに揶揄しなくてもいいんじゃないか?まあ、映画でも見に行くつもりさ」


妹はにやりと笑って、「ほんとに?いいなあ、兄ちゃんは」


僕は彼女とのデートに内心ワクワクしながらも、妹のからかいに戸惑いつつも朝食を共にすることになった。


我が家の朝食のメニューと言えば、トーストされたパンとヨーグルトだ。


テーブルで、妹はニコニコしながらパンを食べる僕をじっと見つめた。


「ねえ、兄ちゃん、その彼女ってどんな子なの?」


僕はイチゴジャムを塗ったトーストを口に運びながら、軽く肩をすくめる。


「まあ、普通の子だよ」


妹は興味津々で尋ねる。


「でもさ、どうして好きになったの?」


僕は少し戸惑いながらも笑顔で答えを避ける。


「そうだな、なんとなくね。気の合う感じがするし」


妹はじっと考え込むように目を細め、「なるほどね。でもさ、あんまり女の子と縁がなさそうなお兄ちゃんがね」と茶化してくる。


僕は適当にはぐらかすことに決め、笑顔を浮かべて言う。


「まあ、そうだけどさ。別に良いだろ?」


妹は首をかしげながらも、少し納得げな笑みを浮かべた。


「まあ、よく分かんないけど、兄ちゃんが幸せそうならいいか」


妹は勝手に納得しているようだった。


僕は妹の質問攻撃をかわしつつ、少し照れくさいが幸せな気持ちに浸りながら朝食を楽しんだ。


そして、妹が見送る中、僕は期待と緊張が入り混じった気持ちで玄関を出る。


「行ってくるよ」


妹はにっこりと微笑み、「兄ちゃん、彼女を大事にするんだよ。約束だよ?」と言ってきた。


僕は笑顔で頷きつつ、「当たり前だろ」と言って、ドアを閉め、僕はデートは向かって一歩踏み出した。


電車に揺られながら、一週間前から付き合い始めた彼女である月島澪の笑顔が脳裏に浮かぶ。


彼女との楽しい時間が今日も続くことを期待しつつ、僕は勝手に心躍らせて駅に到着する。


「そう言えば、今日はハロウィンだったな」


ハロウィンの雰囲気が街に広がり、仮装した人々や飾りつけられた店舗が賑やかさを演出していた。


待ち合わせ場所に彼女である月島澪が現れ、僕の心は一気に高鳴った。


「澪、おはよう」


月島澪は恥ずかしそうに微笑み、「おはよう、神池君」と言った。


そう言えば、自己紹介が遅れたが僕は神池俊也といって普通のどこにでもいる理系の大学四年生だ。


僕はにっこり笑いながら、「じゃあ、映画館に向かおうか?」と言った。


月島澪は頷き、「いいね、楽しみだな」と言って、僕らは手をつないで映画館に向かった。


月島澪とは同じ大学の同じ研究室で知り合い、仲良くなった。


彼女の控えめな笑顔や繊細な言葉遣いは、僕を引き込む魅力があった。


映画館への道中、ハロウィンの賑やかな雰囲気に包まれながら、月島澪との楽しいデートが始まった。



僕らは映画を見終わるとランチでオムライスを食べ、ウインドウショッピングなどをして街で楽しんだ。


そして、日も暮れてきた為、晩御飯を二人で食べることにした。


ハロウィンの雰囲気の中、二人でディナーを楽しんでいる最中、僕は彼女の言ったことが信じられず問いかける。


「えっ、どういうこと?」


月島澪は少し重たい表情で言葉を紡ぎだし、


「実は……付き合うのをやめたいと思うの」


その一言で、ショックのあまり僕は言葉に詰まり、ただ彼女の言葉に耳を傾けることしかできなかった。


彼女は「友達の方がいいかも」という理由を述べ、その理由の一つ一つ心に重く響く。


僕は驚きと寂しさで一杯になり、「でも、僕らまだ付き合って一週間だよ。もう少し考え直さない?」と頼んだものの、彼女の瞳からは強い意志のようなものを感じた。


やっぱり、良いことがあっても神様はすぐに最悪なことを用意するだ……


ああ、こんなことなら良いことなんか起こらなければ良いのに……


毎日、平和に生きたいだけなのに……


なんでこんな願いも叶わないんだ……


こうして僕とはじめての彼女、月島澪との交際は終了したのだった。



彼女に振られて失意の中、僕は夜のハロウィンの街を寂しくうろついていた。


足取りはどこに向かっているのかもわからないほど、心は深い悲しみに包まれていた。


街の中で、ハロウィンの興奮が薄れたころ、吸血鬼のコスプレをした金髪のギャルが現れた。


その瞬間、まるで運命的な出会いのように感じられ、彼女の存在が空気を変えた。


ギャルは僕に近づいてきて、僕のことを真っ直ぐ見ながら話しかけてきた。


「せっかくのハロウィンなのに暗い顔するんじゃないわよ」


その声が、僕の心を引き寄せるような感覚を巻き起こし、失ったものが新たな可能性に変わる瞬間だった。


そして、ギャルが僕の腕を引っ張り、「じゃあ、行こうよ」と言いどこかに連れて行こうとする。


その瞬間、突如としてコンクリートのような硬いものが破壊される大きな音が耳に飛び込んできた。


僕とギャルは驚き、音のした方向を見ると、そこには巨大なカボチャの化け物が現れていた。


その目は猛烈に光り、不気味な笑みが口元に浮かんでいる。


夜の街が一瞬にして緊張感に包まれ、人々が逃げ惑っていた。


ギャルも僕も言葉を失い、巨大なカボチャの化け物に向かって立ち尽くしていた。


「そっ、そんな……」


カボチャの化け物からは触手が生え、その恐るべき触手は僕の妹を捉えて拘束している。


その光景が目の前に広がり、絶望が心を押し潰すような感覚が広がる。


なんでなんだよ……


くそっ、彼女に振られたことなんか最悪なんかじゃなかった……


そう、もっと最悪な出来事が今僕の目の前にあったのだ。


ギャルは次の瞬間、刀を取り出し、その刀が冴えるような輝きを放っていた。


ギャルは刀なんか持ってなかったはずなのにどこからともなく現れたようだった。


彼女は決意に満ちた表情で、かつ冷静にカボチャの化け物に立ち向かう。


刀が空気を裂く音とともに、ギャルがその刀でカボチャの化け物に攻撃を仕掛けた。


ギャルが刀でカボチャの化け物の触手を切るが、何度も再生し、埒が開かない。


「くそっ、これじゃキリが無いわね」


その戦いは絶え間ない闘争となり、互いの攻撃が絶えず交錯していた。


カボチャの化け物の触手が勢いよく、ギャルの身体にあたり、彼女は激しく倒れこむ。


その瞬間、希望の光が一瞬にして暗闇に飲み込まれた。


カボチャの化け物に拘束された妹の表情がより苦しそうに変わり、無念の思いが何とか立ち上がったギャルの瞳に宿っている。


ギャルが「肋いっちゃったみたい」と僕に苦しそうな笑みを浮かべ言う。


その痛々しい表情が、彼女の傷がどれだけ深刻であるかを物語っていた。


しかし、その時、ニタニタ笑うカボチャの化け物がゆっくり僕らに近づいてくる。


絶望が迫りくる中、ギャルは次なる行動を始める。


「あんた、これを飲んで吸血人になってよ。もし、あんたに適性がなければ即死だけど、私はこんな状態で奴に勝てないし、ここは賭けだけどやるしかないわよ」と言いながら、ギャルはゼリー飲料などがよく入っているスタンドパウチを僕に投げ渡す。


僕はギャルの言ってることが意味がしっかりわからないまま死の恐怖を感じた。


飲むべきか飲まないべきか思案していると、朝の元気そうな妹の顔が僕の脳裏に浮かび、一気に液体を飲み干した。


そう、これが唯一の希望だと信じて。


僕は液体を飲み干した瞬間、自分の身体が熱くなるのを感じた。


力強さが全身にみなぎり、その変化が僕を包み込んでいく。


次の瞬間、カボチャの化け物の触手が迫ってきたが、僕は片手で受け止めた。


新たに湧き上がる力が、逆にその触手をしっかりと掴み取る。


ギャルが「やるじゃん」と嬉しそうに言い、僕は自らの強さに驚く。


僕は掴んだ触手を引きちぎり、一気にカボチャの化け物の懐に入り込んだ。


闘志に満ちた瞳でカボチャの化け物の腹を殴りつける。


カボチャの化け物はよろめき、大きな声で叫び、その声が夜空に響き渡った。


新たに手に入れた力で、僕は未知の敵に立ち向かっていくことを感じながら、ギャルとともに戦いの渦に身を投じていった。

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