ネエネエオネエチャン

夕日ゆうや

第1話 お姉ちゃん

 目を隠される。


「だーれだっ?」

 弾んだ声。


「え。分からないの?」

 焦りを見せる。


「本当に分からないの!?」

 驚愕している。


「わたしだよっ!! お姉ちゃんの音子ネネだよっ!!」

 必死すぎて少し可愛い。


「え。知っていた? もう、いじわる……」

 ぷんすか怒る。

 唇をとがらせ、目を伏せる。


「でも良かった。ちゃんと起きていたんだね」

 自分の部屋。

 見渡すネネ。


「もう。散らかして……」

 腰に手を当てて不満そうに呟く。


「そうだ! わたしが片付けてあげるねっ!」


「うん。気にしなくていいよ。わたし家事全般得意だから」


「将来の夢はお嫁さんだもの」


「えっ。誰のお嫁さん? やだなー。分かっているでしょう?」


「え。分からないの? ふふ。鈍感さんっ」


「さ。片付けるわよ。まずは要らないものと要るものにわけて――」

 言葉を遮る。

「え。全部要るもの? そっか……」

 困ったように眉根をよせ熟考するネネ。


「そうだ! この一年で使ったものは残そう。それ以外は片付けるよ」


「うん。ダメならダメって言ってねっ」


 ネネが片付けを始める。

 と、本棚にあるイケない本が見つかる。


「キミには早いんじゃないかな?」

 頬を赤らめるネネ。


「その、こういうのって、男の子だものね」

 本を戻す。


「え。片付けはなし? うん。分かった。でも床が見えるようにしよっ?」


「まずは衣類とタオルだね。こっちは洗濯機に入れればいいから。あとは雑誌類はどうする?」


「うん。分かった」


「そうだ。こっちの段ボールに一時的に入れておこ?」


「そうそう。いいじゃない」


「その調子その調子!」

 手拍子。


「ふふ。そろそろ片付いたね。いい子いい子」


「顔赤いね。ふふ。可愛い……!」


「ふふ。いい子いい子」

 頭を撫でるネネ。


「わたし、好きよ」


「え。姉弟ではダメ? そんなの誰が決めたのよ」

 静かに怒る。


「いいじゃない。愛の形って一つじゃないと思うの」

 耳元で囁く。


「ほら。キミもいい顔してくれるっ!」


「わたし、もっと一緒にいたいの」


「大好きだから」


「姉弟でも好きになれるのよ。お姉ちゃんと一緒にいて」


「ふふ。可愛い。慌てなくていいのよ。すぐに答えが欲しいわけじゃないから」


「それまでお姉ちゃんと試しに付き合ってみよ?」


「ふふ。今がお買い時なの。分かる?」


「うん。ありがと。考えておいてね」

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