第2話

「おぉ、すげぇ! これが最新のゲーム……! グラフィックも綺麗だし何より身体の感覚がリアルにそっくりだ!」


 ログインすると西洋のいかにもファンタジーですよ、と言いたげな街が広がっていた。NPCはまるで人のように流暢に話しているし、本当に別の世界に来たような気がしてくる。


 街の広場でしばらく体を動かして調子を確かめた後、視界の端に表示されているチュートリアルの案内に従い、ギルドなるものへと向かった。


 ギルドとはクエストを受けたり、スキルを会得したりと何かと得になる要素が多い施設である。さらにギルドにはいくつかの種類がある。


 一つ目は冒険者ギルド。主に戦闘系のプレイヤーが登録するギルドで、戦闘用のスキルを伝授してもらったりPVP会場があったりする。


 二つ目は職業ギルド。職業の系統などによって幾つもあるためこのようにさせてもらう。例を挙げるなら、『薬剤師ギルド』や『鍛治師ギルド』などだ。これらのギルドに登録することで得られるメリットはアイテムのレシピや道具などが揃っている工房を貸してもらえたりすることだ。


 三つ目は商人ギルド。このギルドは特殊で、土地を買えたり、素材を売り買いできたりと商売をするためのギルドである。このギルドは必須級でこれがないと素材を売ることもできないし、特定の場所ではアイテムを買えないからだ。


 自分はそのうちの、職業系ギルドの『ギャンブラーギルド』と『商人ギルド』に登録しようと思っている。特に商人ギルドはさっき説明したように必須だからなのと、『ギャンブラーギルド』はジョブだからというのもあるが、なんとこのギルドでは賭け事をすることができるのだ。つまり運に極振りしている俺なら安全に金策できるということだ。


 おっと、そんな事を考えていたら『商人ギルド』についてしまった。早速ギルドの中に入り受付を目指す。


「すいません、商人登録をしたいんですけど……」


「はい、登録ですね。登録には500イェン必要ですがよろしいですか?」


 そう、このゲームの金の単位はイェンなのだ。完全に円を意識している。ちなみにお金は初期所持金の3000イェンがあるので問題ない。


「はい、お願いします」


そう言って500イェンを差し出した。


「はい、確かにお預かりしました。こちらがギルドカードになります。これで個人で売買したり、商人ギルドでアイテムを売却できるようになりますのでぜひご利用ください」


 これで登録は終わったかな? 次は『ギャンブラーギルド』に行くとするか。いやー、安全に稼げるっていいね。LUC以外は貧弱ステータスだから討伐なんかに言った日には死亡確定だね!


 『商人ギルド』から歩いて5分くらいで『ギャンブラーギルド』に着いた。実際に建物の中に入ると結構酒臭かった。いや、ギャンブルとかもしているけど酒を飲んだおっさん共が多いからどうしても第一印象が「酒臭い」になる。


 受付バーのカウンターに行き、ギルド登録を頼もうとしたところでそこら辺の酔っ払いのおっさんに絡まれてしまった。


「おいおい〜、なんでここに獣人のガキがいるんだ、酒が不味くなるだろう? わかったらさっさと帰ってママのおっぱいでも吸ってな! ギャハハハハハ!」


 やべー、めっちゃムカつく。もうやっちゃっていいよね? スキルの実験台となってもらおうか。


「酒くっさ、【スティール・オ……「おい、やめときな」ヒィッ!」


 酔っ払いのおっさんに向かってスキル【スティール・オア・ロスト】を使おうとするとすごく厳ついヤクザの首領ドンのような男性に睨まれてしまった。び、びびったぁ。最後までスキル名を言い切れなかったからスキルは発動しなかったようだ。


「お前さん、ラバルに向かって【スティール・オア・ロスト】を使うつもりだっただろう?」


 ヒェッ! こ、怖すぎる。なぜかと言われると、ヤクザの首領ドンのような強面に睨まれたからだ。そしてどうでもいいがあの酔ったおっさんはラバルというらしい。


「は、ハイ」


 俺がそう言うと、ヤクザの首領ドンがなにか察したように頷いた。


「もしかしてお前さんはプレイヤーじゃあないかい? それでギルド登録をしようとしたところでそこのバカに絡まれた、そうだろう?」


「は、はい。そのとおりです……」


「なら、今回は見逃してやる。だが次はするなよ?」


 その言葉に俺は頷くことしかできなかった。


「じゃあ、次はギルド登録だ。奥の部屋にきな、ギルドマスター直々に面接してやるよ」


 えッ!? この人ギルドマスターだったのか? というかギルドマスター直々に面接とか、絶対イベントのフラグ立ったでしょ?


 そのまま、『ギャンブラーギルド』のギルドマスターに連れられ、ギルドの奥の部屋へと連行されていくのだった。

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