第16話 ヒモ男、ハーレムルートに突入する
朝、バカメイドに起こされた。
昨日のあの一件以降、こいつは妙にくっついてくるようになった。
「ん〜♡ すきすき♡ 」
好感度MAXから少し下がったかと思えば、MAXを超えた……言わば限界突破してる。
こいつはシャワー浴びてる時も寝る時もずっとくっついていたものだから、暑苦しくて寝れやしない。
寝つけたのは早朝になってからだった。
当の本人はすやすやと寝息を気持ちよさそうにたてているものだから、蹴飛ばして安眠したかったが、安心しきった顔で俺に身体の全てを預けてきているこいつを見てたら、そんな気もなくなった。
はぁ……どれもこれもこのバカメイドが可愛いのが悪い。
ため息をつきながら、身体を起こす。
「! ダメ男さんがさっと起きた!? 」
「俺をなんだと思ってんだよ……」
「パチカスダメ男……ファーストキス急に奪ったアホ」
酷い言われようだな……。
睨んだら、ひゃい……! と背筋をピンと伸ばしながら返事してきた。
「お前がうるさいから黙らせただけだ。勘違いすんなバカメイドめ」
「それでもファーストキスには変わりないんですよ♡ わたしの初めてを奪った責任取ってもらいますからね♡ 」
「たわけ、お前なんて知らんわ」
「ほんとダメ男さんは、わたしの感情の振れ幅をジェットコースターにでもしたいんですか! 」
「お前がジェットコースターになるんだよ」
「意味がわからないことをそんなドヤ顔で言わないでください! 叩きますよ!? ぺちっ! って」
「そんなことしてみろ。100倍にして殴り返すだけだ」
「さいていです! でも……」
「でも? 」
「そんなダメ男さんが好きなんです〜♡ 」
そう言って、駆け寄ってくるとまた抱きついてきた。
ほんっと変なやつだなこいつは。
適当にあしらって、こいつが用意してくれた朝食を食べた俺は、一人で屋敷をプラプラと歩く。
城の使用人にスグハの部屋を案内してもらった。
ノックして少し待っていると、スグハがひょっこり顔をのぞかせた。
俺を見るやすぐに笑顔になったスグハは、手を引っ張られて部屋に連れ込んできた。
かと思えば表情が曇った。
俺なんかしてしまっただろうか?
考えながら、部屋を見渡す。
なんとも王女らしい部屋だ。女の子らしさのある内装ではない。
ぐいっと手を押し込まれ、俺はベットに倒れた。
俺の上に覆い被さるようにしてスグハが、俺を見つめていた。
ほぼくっついている状況で、スグハの少し荒んだ息遣いがふぅっ……と肌に伝わってくる。
「え、ちょ……スグハ……? 」
「ノア様……昨日ミナと出かけたそうですね。しかも帰ってきたのは夜中だったって聞きましたよ! その……ミナとはふにゃにゃな関係になっちゃったんですか!? それで夜中帰りだったんですか!? 私がいながら!? 」
なんとこの第三王女サマ、意外とそういうことに興味があるみたいだ。確かに朝帰りならぬ夜中帰りをしたわけだが、勘違いされているようだ。
ハグですら顔をめちゃくちゃ赤くする王女サマの口からそんなことを聞かれるとは思っていなかった俺は、頬をポリポリとかく。
それにしてもスグハさん? 仮にも第三王女が「私がいながら」だなんて平民の男に言っちゃったら大問題じゃないんですかね。お前が言うなと言われたらそうだけど。
「パチンコしてたから遅くなっただけだ。あいつに気持ちを伝えられたんだが……まだちゃんとした返答はしてない」
「そりゃミナのあんな表情見たら、ノア様を好きなんだなってことは分かりますよ。それで一緒に出かけて遅くまで帰らないってことは、気持ちを伝えれたのかなって……で、そこまで考えてはっとしちゃったんです! それだけですか!? ミナに告白されただけですか!? それ以上のことはしてないんですね!? 」
俺があいつを黙らせるためにキスしたっちゃしたんだが、この目がランランとした状態のスグハにそれを伝えたら、どうなるか分かったもんじゃない。
ミナに【された】のではないからな。うん、嘘はついてない。
「してない。つーか、なんでスグハがそんなこと気にしてんだよ」
「してないんですね! ……ほっ、よかったぁ……先越されちゃったらどうしようかと思いました。へ? なんで私が気にしてるかって……そ、そそそそりゃミナは私をよく気にかけてくれてましたから! あの子の恋を応援したいなって!!! 」
一人のメイドのことすらも、ここまで気にかけれるのは、彼女の優しさからだろう。
「決して……ノア様の一番になるのは私だからとかじゃないですよ」
残念だが俺は鈍感系主人公ではない。
スキル【地獄耳】が勝手に発動し、そのぼそりと呟いた想いはばっちり俺の耳に入ったのだった。
ははぁ……。
どうやら、おそらくだが俺はスグハにも好かれてしまったようだ。
この王女サマは俺の一番になりたいそうで。
俺はめちゃめちゃハーレム願望あるし、スグハやミナみたいにかわいい女の子に好かれるのは嬉しい。
……というか。
そう小さく呟くような言葉って、少し離れた位置とかベンチで横並びに座ってる時とかに言うんじゃないのか。
吐いた息が分かるような至近距離で言ってしまったら、【地獄耳】でなくても聞こえているだろう。
そんなことも露知らず、スグハは俺を見つめていた。
少し顔をあげるだけでスグハの唇に付くようなほど間近で、見つめ合う。
そしてしばらくの間のあと、スグハはとんでもない行動に出た。
「ちゅっ♡ 」
そう、自分の唇を押し付けてきたのだ。
咄嗟の出来事に俺は何も出来ない。
結局、スグハが満足するまでの間続いたのだった。
思い切った行動に出たものの恥ずかしくなったのか、数秒で離されたが、それでもこの瞬間は長く感じた。
「えへへ♡ これでノア様の女になれますね」
「お前王女だろ……お、俺なんかにしてよかったのか。それとも色んな人にやってたり? 」
やられっぱなしのままではない。
少しイジワルをしてやると、怒るスグハ。
「もちろん初めてに決まってます! そ、そのファーストキスってやつです! ……このために、ノア様のために私のファーストキスは今日まで取っておいたんですよ♡ 」
「ミナに抜け駆けするとは悪い王女サマだな」
「そーんなことないですよ♡ 私が1番ですけど、ミナは2番です! 3番は……ネシアちゃんですかね? ともかく私はノア様が沢山女の人つかまえようが、怒ったりしません! ですけど、1番は譲りません♡ 第一夫人ってやつですね! 勉強して来ました! 」
王女の余裕か、はたまた素の優しさか。
すんなりとハーレムOKが出た。
こうして俺のハーレム生活が幕を開けるのだった。
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【あとがき】 「続きが気になる!」「面白い!」と少しでも思って頂けましたら、 広告下からフォローと星を入れていただけますと、幸いです。皆様の応援が、執筆の原動力となります!よろしくお願い致します! 作者のフォローも是非是非お願いします!
推しが……推しが卒業発表を……。
ああああああああ!!!!!!!!
……さて、今話は重要? なハーレムokが出た話です。第三王女……だからokなのかな? それとも他の王女も?
それではまた明日。
推しの卒業発表でメンタルが崩壊したらぴなでした。
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