第14話 ヒモ男、ミナに服をプレゼントする

すごい、ミナからゴミを見るような目で見られている。


「さいってい……」


「ノアさいてい」


ルミシアの件で二人はご立腹の様子だ。


「わたしの時にはネシアがいるからって拒んだくせにー。ルミシアちゃんはいいんだー」


「それとこれは違くない!? てかお前も乗り物にされたいの? 」


「はい……ぜひ♡ 」


こいつの情緒がよく分からん。意味不明だ。



流石は王国の中心部というだけあって王都の繁華街は大盛況。人でごったがえしている。


帝国とはまた違った毛色の店も沢山あり、目移りしてしまう。ネシアが迷子にならないようにミナが手を繋いでいるんだが、もう片方の手を俺に伸ばしてきた。

断る間もなく掴まれてしまう。


「えっと……」


「ネシアちゃんよりダメ男さんの方が迷子にならないか心配です。初めての王都でワクワクする気持ちはわかりますけどーダメ男さんって、お城の中ですら迷子になっちゃうおバカさんなんですから♡ こうやって手を繋いでないと……♡ 」


「子供扱いすんな……殴るぞ」


「本当に殴りそうなのが怖いですね。行きたいとこドシドシ言っていいですよー」


と、こんな感じで初の王都散策が始まった。


「わぁ……! これ……可愛い! けどわたしには似合わないかな……。(これ着たらダメ男さん、わたしの事見てくれるかな……こんなに可愛い服だったらきっと……)」


「何故お前の服選びに付き合わされないけないんだよ……って、なんか言ったか? 」


「い、いえ……(はぁ……やっぱりそうですよね。わたしなんかが着たとしても、ダサいとか言われちゃいそうだし……)」


ミナは何やら手に取っていた服を見つめたあと、悲しげに元の位置に戻そうとしていた。


メイド服のイメージしかないが、これを着たミナをイメージしてみると、案外可愛い。


「気になるんなら着てみたら? あそこに試着室あるし」


「へ……? で、でもわたしなんかにこんな可愛い服……ほら、こっちの方がわたしらしいですよ……」


そう言って見せてきた服は、さっきのとは全く毛色が違う大人しく地味なものだった。


「はぁ〜? お前にこんなじみーな服似合うわけねーだろ。つべこべ言わずにさっさと試着してみろ。この俺が着て見せろつってんだからバカメイドはそれに従ってりゃいいんだよ」


「そ、そうですか……。じゃあ着てみますね」


試着を待っている間、ネシアの部屋着と外着を何着か見繕っておいた。


仕切りのカーテンが開かれて、ミナが出てきた。

フリルの付いた白い服で、水玉の模様が涼しさを感じさせる


「ど、どうですか……」


少し上目遣いになりながら、黒いスカートがふわりと広がって、裾を手で持って恥ずかしげに聞いてきた。


道を歩いている男どもが全員振り返るレベルで可愛い。


「うん、似合ってる。それに……あれだ」


このバカメイドに素直に可愛いと伝えたら、絶対調子に乗る。けど、それでも伝えないと……。


「これだけ可愛い服だったら誰でも似合いますよね……脱いで返してきますね」


違う。

お前だから似合っているし、お前だから可愛い。


絶対「わたしに見とれちゃったんですか♡ 」とかドヤ顔で言ってくるから言いたくない。


それでも。

そんな勘違いして、俯かれたら伝えるしかないだろ。


「……その服はお前の為に作られたものだ」


ピタリと足を止めるミナ。


「悔しいが、その服を着たお前は……すごく可愛い」


「……! ダメ男さんがそんなハッキリ言ってくれるなら……恥ずかしいですけど、ダメ男さんのために……たまには着てあげますね♡ 」


「けっ、たまにかよ」


「あらあら、凄くお似合いですよ! ところでお二人さんはカップルですか? 少し割引しちゃいます! お二人がとても素敵だったので……! 」


ひょこっとやってきた店員が、そんな爆弾発言を無自覚に投下する。カップル、と言われたことにミナは顔を真っ赤にしている。


カップル割で安くなるなら、勘違いしている店員に訂正しない手もあるが、ミナはこんなヤツとカップルなんて間違われて嫌だろう。


ほら、怒りのボルテージがMAXに到達しているのか顔が赤いのレベルを超えている。


「俺たちは別にそんなーーー」


「……っそうです!! カップル……です」


はぁ!?

まさかこいつが割引の方を取るとは……。ま、こいつがいいならいいか。


「やはりそうでしたかー! とってもお似合いです! 着たままでも大丈夫ですよ! 」


「そうか。じゃあミナ、試着室に置いている服を持ってくるといい」


「……わかりました! 」


服を取りに試着室へと戻って行った。

さて。


「これで足りるか? 」


「ふんふんふん、はい! お釣りです! ありがとうございましたー! あ、これ着ていた服を入れるためにでも使ってください! 」


袋を受けとって、俺はミナが出てくるのを待った。


「お待たせしました……じゃあお金払いますね」


「彼氏さんがもう払ってますよ! デートたのしんでくださいね! またのご来店お待ちしておりますー! 」


呆気にとられているミナの手を引っ張って、俺たちは服屋を後にした。


しばらく無言で歩いていると、ミナが話しかけてきた。


「その……ありがとうございます……買ってくれて。ダメ男さん……(ダメ男さんのくせに……なんでこうもときめいちゃうようなこと平気でやってくるの……女の子を乗り物扱いしてみたり、殴るぞとか言ってきたり、わたしのことただのメイドとしか思ってないって言ってるのに……なんで……)」


「俺はただ……お前が買うの辞めたら、もう見れなくなるだろ? それが嫌だったから買ってやっただけだ。ったく……俺は金欠なんだよ……。だからな? 俺と出かける時はそれ着てくれ」


「はい! ♡ もちろんですっ! ……ずっとずっと大事にします! 」


そう言って、とびきりの笑顔を見せたミナだった。


……ちなみにだがその服、くそ高かったからな。

アリサからのお小遣いでギリレベルに高かった。


王都で遊ぼうと残していた金は無くなり、俺の財布にはたった100Gしか残っていないのであった。


……この笑顔を見れたんだから、よしとするか。


本当は、「あれれぇ? 俺なんかのプレゼントはいらないって言ってなかったかなぁ? 」とか言って煽ろうと思ってたのに、こいつの見せた笑顔があまりにも可愛くて、 そんな気も無くなったのだ。


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【あとがき】

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ずどおおおおおおんん!!!


ノア「な、なんだ? 」


らぴな「次回ノア、通常運転開始……! 」


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