第22話 再会

その後、アルルとサクヤと合流し、みんなで都市へと帰還する。


そしてギルドに報告した後、ランドとラーラとは別れた。


お礼をしたいと言っていたが、まずは怪我を治すのが一番と。


どうしてもお礼がしたいなら、暫くはここにいるからと伝えておいた。


そして俺は……受付嬢からため息をつかれていた。


「ヨモギ草を取りに行ったのに、コボルトソルジャーを倒して……おまけに牛鬼まで倒しちゃったのですか」


「す、すまない、不可抗力だったのだ」


ランク外の生物を討伐してもポイントにはならない。

何故なら、危険を冒して無茶をする冒険者が後を絶たなかったからだ。

早くランクを上げたいがために、自分より強い魔物や魔獣を討伐しようとして。

なので、あまり推奨されてない。


「いえ、人命が第一ですし。依頼を横取りしたわけでもありませんので。むしろ、感謝いたします。ただ、今はギルドマスターが不在の時で……この問題をどうしたらいいかと」


「ほう、マスターが不在なのですか。それと、問題とは?」


「ええ、私用で出かけてまして。森の異変もそうですが、貴方の扱いもです。そんな強い人が、石級などあり得ませんから。いくら冒険者が、強さだけではないとしても」


「……一気にランクを上げるのはマスターの許可が必要でしたよね」


「そういうことです。とりあえず、貴方は依頼を受けて一刻も早くランクを上げてくれると助かります。こちらも、特例はなるべく作りたくないので……申し訳ありません」


「わかりました。いえいえ、元々そのつもりだったので。では、これで失礼します」


その後、ソファーに座って待っているアルルの元に向かう。

ひとまず隣に座り、俺も考えをまとめる。


「さて、報告はしたが……どうしたものか」


「お父さん、何かあるの?」


「いや、なんでもないさ」


何か嫌な予感はするが、それを調べるのはあちらの仕事だ。

すると、何やら視線を感じたので目を向けると……。


「ほら! やっぱりそうだって!」


「声が大きいわよ! でも、アンタの鼻は確かね!」


「へへっ、だろ!? にいちゃん〜!」


「兄さ〜ん!」


その二人は、そのまま——俺の胸に飛び込んできた。

俺は一歩も下がらずに、その二人を強く抱きしめる。


「おっと……大人になったな、二人とも。カエデ、カイト、元気そうで何よりだ」


「へへっ、にいちゃんも相変わらずカッコいいぜ!」


「兄さんってば、全然変わらないね」


「そうか? すっかりおっさんになったと思うが。お前達は、立派になったな」


カイトは十六歳になって精悍な顔つきになり、細身の体だが一年前より引き締まっている。

身長も伸び俺の肩くらいはあるし、子供っぽい顔つきから大人になってきていた。

カエデも十六歳になって綺麗になり、ますます猫特有のしなやかな身体に成長している。

何より手合わせをしなくても、その立ち姿や振る舞いで強くなったのがわかる。

すると、私も仲間に入れてとサクヤが二人にじゃれつく。


「アォン!」


「おおっと、サクヤも久しぶりだな!」


「もう、こんなに大きくなったのね」


二人とじゃれつくサクヤを見て、改めて連れてきて正解だったなと思う。

この二人は俺が育てた中で一番下の子達で、サクヤが赤ん坊の時に遊んでいた二人だ。

なのでサクヤにとっては、兄妹のような感じなのだろう。


「あ、あの、お父さん……」


「ああ、放ってすまんな。この犬獣人はカイトといい、俺の弟のようなものだ。猫獣人の方はカエデといい、こちらも俺の妹のようなものだ」


そこでようやく二人が、アルルの存在に気づく。

サクヤから離れ、しゃがんで目線をアルルに合わせる。


「おっと、悪い悪い。にいちゃん、この子は?」


「俺の娘になった子だ」


「妹でも弟でもなく娘なんだ……まあ、兄さんの年齢を考えるとそっちの方がいいかも」


「へへっ、確かに。どう見たって、お父さんって感じだ」


「ぐっ……放っておけ」


実は、お兄さん設定でいこうとしてやめた。

そんなことしたら、こいつらに笑われる思ったし。

……結局、笑われてるがな。


「お父さんの、妹さんと弟さん?」


「つまり、アルルにとっては叔父さんと叔母さんだな」


「お、おじさん……十六歳なのに」


「おばさん……まだ恋人もいないのに」


その言葉に、二人が苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。

これは、さっきの仕返しである。


「くく、冗談だよ。アルル、お兄ちゃんお姉ちゃんって呼んでやってくれるか?」


「え、えっと……カイトお兄ちゃんと、カエデお姉ちゃん?」


「ぐはっ!? こ、これは……」


「ま、まずいよ……!」


アルルが上目遣いで言うと、二人が揃って膝をつく。

ウンウン、小さい子のお兄さんお姉さん呼びは破壊力があるわな。

何より、二人は末っ子だから下の子がいないし。


「ふ、ふぇ? な、何か間違ったのかな?」


「いや、単に可愛かっただけだろ。ほら、きちんと挨拶をしないか」


「そ、そうだった。コホン……アルル、よろしくな。今日から、お前はオレの妹だ」


「お、落ち着かないと。コホン……アルル、よろしくね。今日から、私がお姉ちゃんよ」


「わぁ……! お姉ちゃんとお兄ちゃんが出来たっ!」


アルルが笑うと、二人が頭を優しく撫でる。


すると、サクヤも『混ぜて!』と輪に入っていく。


俺はそれを見るだけで、幸せな気分になるのだった。





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