第90話


「ライド!」

「あぁ…エンヴィは?」

 ライドは生きていた。やはりしぶといな!

「匣の中だ」

「うっ!いやな思い出だな」

「は?それより毒はどうした」

「は!そんなもん俺には効かない!…それよりお前、賢者だったのか?」

 嘘だな。まだ毒を喰らっているようでくるしそうだ。

「賢者になったんだよ。さすがにポイントが多くてな!取れるものとってたらそうなった」

 『魔導士』、『大魔導士』『時魔導士』その他にもとっていたら賢者が出てきたのでポイントを使った。

 エンヴィは封印という方法をとったが、これで数千年は封印できるだろう。


 エンヴィが他の獣と違うのは操るのは軽い催眠状態のようで、繋がりもなくなったいまなら国の人も助かるはずだ。

 近衛兵は玉座に誰もいないことに慌てると、これまでのことを思い出したようだ。そして帝国は動き始める。いまからのことは任せていいだろう。


「と、とりあえずいまから私が指揮を取る!お前たちは早くこの場から立ち去ってくれ!」


 近衛兵長だろう、兵を率いて玉座の間から出ていく。

「なんだ?俺たちが助けてやったのに」

「まぁ、操られていたんだからしょうがない」


「その匣は俺が預かろう」

 ライドが起き上がりそう言うので、

「どうするつもりだ?」

「厳重に固めて海に沈める。水の中なら封印が解かれても出て来れないだろ」

「なら、ほら」

「ばっ!投げるな!!」

 ライドは匣を両手でキャッチすると大事に持つ。

 

「結局はお前に全部持ってかれたな」

「たまたまだ。『傲慢のプライド』なんだろ?何辛気臭くなってんだ?」

「何千年も匣の中にいたんだ、少しは落ち着くさ」

「そういうもんか」

「そういうものだ。俺はこれから旅に出る」

 というと後ろを振り向く。

「どこにだ?」

「賢者のいないところだ」

「ははっ!それじゃあもう会うことはないな?」

「そうだな」

 プライドは俺の目の前からいなくなるらしい。傲慢が聞いて呆れるな。

「それじゃあな!」

「人間は好きか?」

「…別に?」

「んじゃ、好きになれよ?」

「…考えとくよ」

 と片手を上げて歩いて行った。


 プライドと入れ替わりで入ってきたラビオンは傷だらけだったので『フルケア』をかける。

「やっぱルシエが倒したんだな?」

「いや、封印した」

「は?賢者のスキルも取ったのか?」

「やむなくだ。剣で細切れにできたが、再生は厄介だからな」

「まぁ帝国全てを斬る勢いじゃないとな」

「あぁ、だからだ」

「まぁ、被害は最小限ってとこか」

 抜き取ったポイントが返せればいいが、それは無理だからな。まぁ、死なないだけいいだろう。


 俺は今『賢者』をもっている。

 異世界転移と言うスキルもあったが、誰に使うわけにも行かず、結局は賢者になったのはエンヴィを封印するためだけだな。


「あとはこの国に任せて帰るか?」

「だな!クタクタだからな」

「んじゃテレポート!」

「はえ?」

 俺たち二人はスロウスの目の前に飛んだ。

「うわぁぁぁ!!」

「おっ、スロウス!元気そうだな」

「ビックリしたな!ラビオンもいるし」

「悪かったな!」

「で?エンヴィは?」

「匣にいれたよ?今度は海底に沈めるらしい」


「げー、匣はもう嫌だな…てか、ルシエは『賢者』?」

「まぁ、一応な」

「そうなんだね、あ、それよりも戦争はどうなるの?」

「あぁ、止めないとな」

 ビゼン辺境伯に話をしないとな。


 俺たちはビゼン辺境伯に話をして、『嫉妬のエンヴィ』を封印して、帝国は混乱していると話をする。

「分かった。それでは国王に進言するか」

「はい、よろしくお願いします」

「お前たちもよくやったな、私も一旦戻る」

「は!」

 ようやくブランドーに帰れるな!


「よし帰るぞ!」

“ドドンッ!”

「な、なんだ!」

「あれ!」

「なんだあれは」

 獅子と尻尾が蛇のキマイラがこちらに向かってきている。

「おいおい!俺たちじゃないか!?」

「構えろくるぞ!」

“ギギィンッ!”

「な、なんだお前!」

『フハハ!タダでは済まさないわ!こんな体にしてくれたバツよ!』

 キマイラの胸には匣が埋まっている。

 あれはライドの身体か!

「おまえ!『エンヴィ』か!?」

「な?たおしたはずじゃ?」

『プライドがバカで助かったわ!ぎりぎり潜り込めたものね』

 くそ、あの時にすでにライドは…

「おまえに明日はない!死ね!」

『ガアァァアァァァ』

 斬ってもすぐに再生する!?やはりまだ帝国民?

「二の壊『砕』」

『ぐばあぁぁぁぁ』

 頭が粉々になるがすぐに復活するエンヴィ。

 クソ!このままだと、

「どっせい!!」

「うらあっ!」

 ワルツにウリン?!

「早くしろ!お前にしかできないんだろ?」

「ガハハ!時間稼ぎくらいは!」

 と目の前でキマイラを止めている。


『くそ!この体が忌々しい!」

「『シェイド』来て!」

『おおぅ!んじゃ!シャドウ!!』

 シャドウを使って目を見えなくしているが蛇の頭がこちらを向いて、

『く、そんなもの聞かぬわ!』

「『サンダーランス』」

「『アイスランス』」

 アビーとアイラの魔法が突き刺さる。

「ヌオォォォ!!早くしろ!ルシエ」

「みんな出てこい!いけぇーー!」

 スロウスのテイムしたモンスターが大量にエンヴィに群がる。

『ウガァァァァアァァ!!!』

「「「「うわぁァァァァ!!」」」」

「ルシエ!!」

 

「大丈夫だ」

「二度とその口聞けぬようにキヒ!?」

「お前に繋がるポイントは根こそぎ取ったぞ?」

 ライドは最後にだいぶ人間を解放してたようだな!

「な、なひをひた」

『剣技・流星群』

『アヒアヒャ』

「そうだな、お前に死は生ぬるいな」

『や、やへて』


「『古より解き放たれた獣を今ここに封じん!』」

『あひ』

「『聖なる匣』」

『ひ、ひひゃあ』


 エンヴィは匣の中に収まった。

「このちっさいのがエンヴィなの?」

「そう、これを」

 俺は空を向くと、

「『テレポート』」

 宇宙空間に放り投げた。


「ふぅ、これで全て終わったよ」

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