第68話
「悪いなウリン、付き合わせちまって」
「今さらだろ。それよりこっちで合ってるのか?」
「あぁ!ラムザの飴の匂いがするからな」
「お前は犬か!だが、わかる。さすがにこんな森の中で甘い匂いがこれだけするからな」
ラビオンとウリンは森の中、臭いを辿ってラムザの後を追う。
「ラムザが持っててよかったぜ!闇雲に探すのはしんどいからな」
「あぁ、さっさと連れ戻してみんなのところに帰ろう」
飴は子供の高い体温で溶けてラビオン達を導く。
迷わず真っ直ぐに突き進む先に大樹が見える。
「嫌な予感がする」
「だー!言うなよ!そんなこと分かってるっつーの!」
ウリンの言うことにわざと明るく振る舞っても冷や汗を流しながら先に進んでいく。
突然視界が広くなり、森を抜け開けた場所に躍り出る。
「おっと!ら、ラムザ!!」
「ら、ラビオン!!」
飛び出してきたラビオンを見て叫ぶラムザは大樹に手足を杭で打ち付けられていた。
「おい!お前か?…お前がやったのか…」
ラムザの前に鎮座する男がいた。
「お前は誰だ?ここに来ていいのは純潔を守りし者だけだ」
男が顔を上げ立ち上がりながらそう呟く。
肌は白く死人のような顔色だが、身体つきはがっしりとしている。髪は長くボロを着ていて特徴的なのは一本の角が額から生えていた。
「ウリン…これはちとやばいぞ」
「分かってる、だがここで逃げるのは無しだ」
「あぁ、仲間を、ラムザを連れ戻す」
武器を構える二人に対し、男はダランと両腕を放り出して立っている。
「なっ!!グハッ!」
「ラビオン!ウガッ!!」
気付くと目の前に移動していた男に殴り飛ばされる二人。
「クッ!」
「カハッ!はぁ、はぁ」
二人を見つめ、
「お前たちは弱い…いまなら痛みを感じる前に殺してやろう」
そう言って手を伸ばしてくる男の手を『パリィ』で弾く。
「ふざけるな!『ストライクブレード』!!」
振り下ろされる大剣を木の葉でも払うようにもう片方の手で弾く。
「『
背後からのウリンの攻撃は男の首に刺さり血が吹き出る。
「『一刀両断』!!」
ラビオンが男の右の肩口から縦に切り裂く。
「おらぁぁ!!ウリン!」
「ウォォオォォ!!」
ラビオンが叫ぶ前にもう走り出しているウリンは大樹まで後一息だった。
『…』
「ガッ!ァァァァアァァアァァ!!」
突然目の前に出てきた男に片腕で頭を掴まれ叫ぶウリン。
「どこから出てきやがったオラァアァァ!!」
走って大剣で斬りつけ男の腕からなんとかウリンを助けるとウリンを抱えて後ろに飛び退く。
「グァッ!頭が割れそうにいてぇ…」
「あいつ斬ったはずなのに…なんだ?化け物か!?」
男を見ると肉が蠢いて斬り裂いた部分が繋がっている。
『…この大樹に触れる者は…誰であろうが死ぃあぁルゥのぉみイィィィィィィィィィ!!!』
“ドォン”
「ガッ!!」
「グァッ!!」
ラビオンとウリンは気付くと森の木にぶつかり肺の空気を一気に押し出される痛みに倒れる。
『ウルァァアァァァァ!!!』
ウリンの足を持ち木に打ちつける男の下半身は馬のようになっていて半人半獣の獣と化している。
「ヴリィン!!やめろぉぉぉ!!!」
力を振り絞り大剣を男の顔面にぶち当て止めるとウリンを引っ張り後ろの茂みに放り投げる。
“ドサッ”
茂みの音を確認すると、
「お前の相手はこの俺ダァ!こっからは俺以外に手を出すな!!」
鼻血を流している男は指で拭うと、
『よかろう!相手をしてやる!!我は『ユニオン』!!貴様を塵芥にしてやろう!!』
「うるせぇよ、俺はラビオンだ!テメェをぶっ殺してラムザを助ける!!」
二人は睨み合いから一転、高速でぶつかるユニオンとラビオンの姿が中央に現れる!
“ギイィィィィン!!”
ユニオンのツノにラビオンの大剣がぶつかり金属音があたりに響き渡る。
“ガッッ!!”
「グッ!!まだ、まだ負けてねぇ!!」
『ウルァァアァァァァ!!生き汚い哀れなお前には死を!!』
「グハッ!ガァッ!グッ!!」
『弱い!!何故死なんのだ!!ガッッ!』
殴られていたラビオンだったが大剣をユニオンの顔面にぶち当てる。
「ゴボッ…お、おじゃべりがずぎるだ…ろ。」
満身創痍のラビオンはいつ倒れてもおかしくない。
『『モノケロース』』
ユニオンの額から伸びた角がラビオンに突き刺さろうとするが、
「グァァアァア!!!」
「ヴリン…」
「腰についたポーション飲み干せぇ!!」
角を二つのダガーで抑えているウリンの腰からポーションを取ると飲み干すラビオン。
「おまえこれ大事にしてたポーションだろ?!」
「だぁぁぁあぁ!!う、うっせぇ!早くしろォォ!!」
「オラァアァァ!!」
ウリンのダガーが砕け散る瞬間、ラビオンの大剣が角に当たりユニオンは横に吹き飛ぶ。
「ウリン!急いげ!」
ユニオンが吹き飛んだ方に剣を構え、大樹に向かうウリンを守るように立つラビオン。
「わぁってる!!ラビオンも急『オラァ!!』」
ラビオンの背後を何かが横切る。
ラビオンが振り向くと角に刺さったウリンを放り投げるユニオンの姿があった。
「…う、ウリン!!」
倒れて動かないウリンからは血が流れている。
『怒らせたのはお前らだ、決闘の最中に他人が入ることは許さん』
静かにそう言い放つユニオンは全身が赤くなり湯気のようなものが身体から出ている。
『それよりも許せないのは大樹に近づく事』
ユニオンはウリンの足を蹄で踏み力を入れて行く。
『ヴァルゴの園を荒らす者は死で償う』
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