第61話


「ウェッヘッヘッヘ!金と女を置いていけ!!」

 ゲラルー峠と言う場所を通っていたら、久しぶりに盗賊が出て来た。

 王都から西南に進んできた場所でこの峠を抜けると歓楽都市ダラーが見えてくるそうだ。


「なにモタモタしてんだ!サッサとしろ!!」

 はぁ、こっちは街を出て野宿2泊目だぞ?イライラして来たな。

「俺が行く」

 ラビオンが行くらしい。出遅れてしまったな。


 軽く懲らしめたら縄で縛って、山賊のアジトにラビオンと俺が向かうことになった。

「おら!サッサと歩け!」

「へ、へい…『なんでこんな強い冒険者が乗ってんだよ…』」

「なんだ?ゴニョゴニョ言ってんじゃねーよ!!」

「へい!…『そしてなんでこんなに怒ってんだ?』」

 蹴られながら歩く山賊を先頭に山の中を歩いて行くとようやくアジトが見えた。なかなか立派な作りの建物が見えて来た。


「なかなか立派じゃねーかよ。これなら泊まれるな」

「ラビオン?泊まらないぞ?」

「あ、いや、言ってみただけだ」

 慌てるラビオンをよそに、アジトの扉を開く。

 中にはまだ山賊が20人ほどいるな。

「な、なんだお前!て、敵襲だ!!お頭を呼べ!!」

「お前黙ってやがったな!このヤロゥ!!」

「ぐはっ!」

 連れて来た山賊はラビオンがKOしたので放って置いて、2人で山賊退治だな。

「おいおい!誰だよ、可愛い子分を虐めてくれる奴は?」


「「俺だよ!!」」

「どっちだよ!くそ!やっちまえ!」


 あ!っと言うまに全員縄で縛り、山賊の持っていた馬車に乗せて行くが、流石に多くて2台目に乗せる。

「よし、んじゃ戦利品でも見に行くか!」

「捕まってる人もいるだろうな。なんにしろサッサと終わらせよう」

 2人で手分けして山賊のアジトを物色する。


「ルシエ、結構溜め込んでたぞ!」

「あぁ、山賊のくせに凄いな、こっちにも金貨袋があるぞ」

「おぉ!歓楽都市に行く前に稼げたな!」

 とりあえず全て俺の収納に入れて行く。

 金貨の他に武器、防具や食料、衣類まで大量にあった。


「あっちに捕まってる人がいるぞ」

「あぁ、助けるか」

 ラビオンが鍵をぶった斬り、壊して牢を開ける。

「あ、ありがとうございます!」

「怖かったぁー!!」

「助けてくれてありがとう…」

 と喜んでくれるが女しかいないな。全員で8人もいる。


「おい!おーい!助けたの俺!!おーれ!」

「・・・怖かったぁー!」

「おい、分かっててやってんだろ?牢屋にぶち込んでやろうか!!」

 何故か俺の方にやってくる女達だが、ちゃんとラビオンにも感謝している様だ。

 衣服は女物も山賊が溜め込んでいたのでそれを渡して着替えてもらう。


「じゃあ、こっちに乗ってくれ」

「「「・・・」」」

「分かったよ!ルシエ!交代だ!!」


 全員を2台目の空いてるところに乗せるが乗り切らないので馬車台にも乗ってもらい。かなり過積載状態で山を降りる。それにしてもラビオンは怒ってるな。面白いからそのままにしておこう。


「あ、帰ってきた!」

「おかえり」

「ただいま、とりあえずそっちにも乗ってもらおう。山賊達は立って乗せるしかないな」

「分かった」

 アイラを先頭に俺たちは3台で峠を越える。

 あちらはウリンやワルツもいるし、問題ないだろ。


 ゆっくりとした速度で峠を越えると歓楽都市が見えて来た。後少しだったが今日も野営の準備をする。


「あーぁ、結局また野宿かぁ」

 リミがぼやくが、

「しょうがないだろ?それよりテント張るの手伝ってこい」

「うぇーい」


 俺は料理をしている。

 まぁ、簡単なポトフの様な料理だ。

「おっ!いい匂いだな!」

「お腹すいた」

「ガハハ!エールを出してくれ!」

「ほら」

 エールは樽で買ってあるので樽ごと出してやる。

 女達にも作るから今日は大鍋で煮込む。


「お、俺にも分けてくれよ」

「あ!?」

「す、すいません」

 山賊の目の前に座り、美味そうに食うラビオンは、中々エグいことをしているのに、なぜか可哀想な気がした。

 まぁ、みんな笑っているのでラビオンはそのまま放置だった。


 歓楽都市は夜番をしている時もずっと光が漏れている。

 こちらでは珍しい眠らない街のようだ。



 夜が明け、朝早くに出発する。

 朝のうちに山賊のポイントは頂いたのであとは衛兵に突き出すだけだな。


「おぉー!すごいね!!」

「派手だな」

 ド派手な紫やピンクでウェルカムボードが光っている。


「なんか趣味悪い…」

「まぁ、ここの領主がいいのなら構わないんだろ」

「そうね」


 門の前には長蛇の列で人気なのだろう。

 まぁ、馬車3台でいるのは俺らくらいだが。

「山賊を捕まえて来た」

「おぉ!!あのファン座山賊団か?」

「は?ま、まぁ、なんだ、たぶん?」

 そんな名前の山賊ってどうなんだ?

「峠の山賊だろ?有名なんだよ!助かるぜ!」

「はぁ、まぁ…よろしく」


 門兵はちゃきちゃきと山賊を連れて行き、女達を保護する。

「慣れてるな?」

「あぁ、こいつらみたいなのは奴隷落ちして闘技場に売られることになってるからな!」

「闘技場?」

「なんだ?知らないのか、奴隷達が戦うんだ。勝ち続けると恩赦で奴隷から解放されるから奴隷達も必死でな。かなり熱い戦いになるんだよ」

「ハハッ」

 悪趣味だな。


「と言うわけで、売った金がそのまま懸賞金になるからお前ら儲かったな!」

「そうか、女達は?」

「そりゃ、帰すさ。安心してくれ」

「それなら良かった。頼むな」

「あぁ!任せてくれ!」

 門兵はそう言うと女達を門の中に連れて行った。

 俺たちも門の中に入り、女達と挨拶だけ交わして門近くの馬車屋に馬と馬車を売る。


 これでようやく歓楽都市を見て回れるな!


 とりあえずブラハムに乗せてもらい、宿を探して大通りを進む。

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