第53話
「あ、お帰りなさい!」
宿に行くとネイルが下の食堂で待っていた。
「ただいま。アイラは?」
「部屋にいますよ?ラビオンさん達も帰って来てます」
「そうか、リミは?」
「リミがまだですね。待ってるんですけど」
もう外は薄暗くなって来ている。
“カランコロン”
ドアベルの音がして振り返るとリミが帰ってきた。
「ただいま。あれ?私が最後かな?」
「そうだな。だが俺もいま帰って来たとこだ」
「そうなんだ。で?ルシエのお父さんは?」
「大丈夫だ。それも合わせて飯食いながら報告しようか?」
「分かりました!みんな呼んできますね!」
ネイルが上に登って行くので、リミと2人で料理を注文しておく。
「おー、帰ってきたか!待ちくたびれたぞ」
「あんた寝てたでしょ!」
「待ちくたびれて、寝てたんだよ!」
ラビオン達が降りて来た。ネイルとアイラも一緒だ。
「とりあえず飯食いながらだな」
「そうだな」
と料理が出揃うと、
「じゃあ、乾杯!」
「「「カンパーイ!」」」
「クハッ!うめぇ!!」
「いつも飲んでるでしょ!」
「いいじゃねーかよ!んで、どうだったんだ?」
まずは俺の報告だな。
「公爵は無事だ。病だと聞いていたが毒が原因だった」
流石に毒の話なんか大声で出来ないので小声で皆んなに伝える。
「え?毒!?大丈夫なの?」
「解毒ポーションを飲ませたからな。だが、王宮医師の薬も毒だった」
「マジか!そりゃ最悪じゃねーかよ!」
「誰かが公爵に?」
「それはまだ分からない。明日確認しに行くつもりだ」
俺の報告はこんなもんだな。
「で?ラビオン達は?」
「あぁ、『SOD』について調べたけど、クラン自体はまだある。クランハウスの場所まで行ったが、留守だったよ」
「そうか」
「こっちもまた明日にでも行ってみるさ」
「そうね、話を聞いてみないとね」
アイズ達がこんな事で終わるとは思えないがな。
「後は私か。ルシエはソフィアって覚えてる?ギルドの受付やってたんだけど」
「いや、さすがに忘れたぞ?」
覚えている方が怖い。
「そうだよね、まぁ、ソフィアのお父さんがギルドマスターやってるんだけど、家に行ったらギルドマスターも病気だったんだよね」
「…とりあえず明日見に行くか」
「お願いします。お医者さんにも見てもらったみたいだけど、よくならないんだって」
もしそれが同じ毒なら王都の医者自体が信用できないな。
「とにかく明日また動くことにしよう」
「はい!私達はどうしますか?」
「…一緒に行くか」
「やった!」
「良かったです!お留守番は暇でしょうがないので!」
そうだよな。さすがに2日続けては可哀想だな。
次の日は朝からラビオン達は『SOD』のクランハウスに行き、俺たちはリミの言うソフィアの家に向かう。
「ソフィアは仕事じゃないのか?」
「お母さんも知ってるから大丈夫だよ」
朝早くからお邪魔していいのか?
「ここだよ」
平民街でもいいところの家に住んでるな。さすがギルドマスターって感じだな。
呼び鈴を鳴らすと奥から声が聞こえてくる。
「はいはい、あらリミちゃん、今日も来てくれたの?その人が昨日言ってた人?」
「そうだよ、ルシエって言っておじさんも治してくれるよ!」
…いきなりハードルが高くなったな。
「初めまして、リミと同じパーティーのルシエと言います」
「はい!話は聞いてますよ?リミちゃんの良い人なんでしょ?」
「ハハッ、まぁ、はい」
リミ1人で動いてもらうのはある意味危険だ。
「ここじゃなんだから入って入って!」
やっと中に入れてもらい、ギルマスのとこまで案内してもらう。
ギルマスは寝ていたが見たところ症状は同じようだ。
『鑑定』
…やはり同じ毒だな。
「これでよくなりますから飲んで下さい」
「…あぁ」
ギルマスは飲むと薬が効いたのか寝てしまった。
「ありがとう!ルシエ!」
「あぁ、薬は貰いますね?」
奥さんから薬を受け取る。『鑑定』するとやはり毒薬だった。
さすがに二度も同じ薬を見るのは最悪のパターンだな。
王都の医師は信用できない。
ギルマスの家を出て、次は公爵家へ向かう。
4人で貴族街を歩いて公爵の屋敷でメイベルを呼んでもらうとすぐに取り次いでくれた。
「朝早くに悪いな」
「いえ、ルシエ様に来ていただき、私は嬉しく思います」
「そうか、公爵の様子はどうだ?」
「今朝は起き上がり、軽めの朝食を食べられました。レビン様も同じく」
「それは良かった。公爵と話がしたいのだが?」
「はい、来たら呼ぶように仰せつかっております」
それは良かった。リミ達は公爵家なので緊張しているようだ。
“コンコンコン”
『入れ』
「失礼します。お身体の具合はいかがですか?」
公爵はベッドで上半身を起こしてこちらを見ている。
「ルシエよ、毒に冒されたことをよく見抜いてくれた。礼を言う」
「いえ、お褒めいただき光栄です。一つよろしいですか?」
「なんだ?」
「カルア伯爵より、王も病に伏せていると聞いたのですが」
公爵の目が少し細くなるが、
「はぁ、そうだ。私も動けるようになれば、そうだな。ルシエ、一緒に登城してくれるか?」
「…分かりました。その時はお声がけください」
「分かった。報酬はメイベルに言いつけてあるので受け取るように」
「はい、失礼します」
ドアを静かに閉めると、何故かリミ達が拍手をしていた。
「凄いねルシエは!」
「うん、カッコよかった」
ちゃんとした言葉を使ったからだろうか?
「ルシエ様、こちらをお受け取りください」
メイベルが持って来たのは白金貨10枚だった。
「ありがたく頂きます」
「凄い」
「やりましたね!」
リミ達が喜んでいるのを嬉しそうに見ているメイベル。
「ルシエ様はお仲間にも恵まれて私は嬉しくて」
とまた泣いているメイベルに別れを告げる。
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