第50話
あれからもう二週間経った。
色々とやることがあって結局いつもと変わらない毎日になって来ていた。
と言っても、ギルドに売った素材で暮らすのに十分な金はできたし、毎日の朝練ではグラム達2人を相手にしている。充実しているのだ。
「よぉ、親方はいるか?」
「はい!親方ぁ!!」
「おう!お、ルシエじゃないか!どうした?」
俺たちは迷宮街ブランドーの鍛冶屋、『ブラウン』に来ていた。もちろん、
「これを加工して欲しい」
「これはジャイアントワームの皮か…いいが、マジックバッグにするには錬金術師が必要だぞ?」
「あぁ、俺が錬金術出来るからな」
親方のガイツは驚いて口を開けている。
「おい、ガイツ?」
「…あ、まじか!!あー、じゃあ、俺にも作ってくれないか?」
「ん、いいぞ?皮ならたんまりあるからな」
「よっしゃ!5日後に来てくれ!!最高の革にしておくぜ!!」
「よろしく頼むよ」
ガイツはニコリと笑うと奥に入って行く。
「お、親方ぁ!客がまだ待ってますよー」
「あ?そんなの後回しだ!!」
「そんなぁ」
悪いな弟子君。
その後はいつも通りデートのはずだったが、アイラが本が見たいと言うので本屋にやって来た。
紙の匂いが心地いい、古書店だ。
「おや、アイラちゃんいらっしゃい」
「お婆ちゃん、こんにちわ」
「はい、今日は良い人連れて来たんだね」
「うん、ルシエ」
「こんにちは」
アイラの行きつけらしく、お婆ちゃんが1人でやっているらしい。
「はいはい、お茶でもいれるからゆっくりしていってね」
前は別の本屋に行ったのでここは初めて来たが、居心地がいいな。
「あ、私も精霊の本があるか探してみる」
「私は解除の本を探してみます」
「じゃあ、俺も錬金術の本でも見てみるか」
アイラも魔法の本を探しているようなのでみんなバラバラに探す。広くはないのですぐ見つかるだろう。
「お茶が入りましたよ」
「お婆ちゃんありがとう」
「ありがとうございます。いただきます」
お茶を飲みながらゆっくりとした時間が過ぎる。
リミもネイルもお目当ての本が見つかったみたいで、俺も『
決して安くはないがやはり本はいいな。
「また来る」
「はい、いつでもおいで」
本屋を後にすると宿に戻り、読書タイムだ。
読書しながら3時頃まで部屋にいると、女将さんが客だと言ってきたので下に降りる。
「サロメか、なんだ?」
情報屋のサロメだった。
「いやぁ、『情欲のラスト』討伐おめでとうございます」
「はぁ、相変わらずどこで情報とって来るんだ」
ギルマスくらいにしか言ってないぞ?
「それは企業努力で!それより情報買いませんか?」
「お前に聞くと戦う羽目になりそうだからなぁ」
『7匹の獣』はちょっと遠慮したいが、
「まぁ、必要なら店で待ってますんで」
と、『アンツ』の店の名刺を置いていった。
俺は名刺を見ながら、
「そう言われると気になるんだよな」
独り言だ。
まだ夕飯には早いので『アンツ』に行く事にした。
いつ来ても慣れない裏道に入っていき『アンツ』の看板を見つけると、
「へへっ!やっぱり来ましたね。どうぞどうぞ」
「はぁ…」
中に入ると一番奥の席に座る。やはり前来た時と同じで書類が積んであった。
「では、前金で金貨5枚、後で金貨5枚です」
俺は金貨10枚を渡してやると、
「おっ、信用してくださるんですか。嬉しいですねー」
「で?なんの情報だ?」
「二つほどあります。『SOD』と『7匹の獣』ですね」
「聞こうか…」
サロメは紙を捲り、
「まずは『SOD』ですが、メンバーの半数以上をダンジョンで戦死させ、弔いの為に王都に帰って行きました。ここからが多分知らないと思いますが、クランの王国公認を取り消されたようです」
「そうか…」
クランとしても崩壊寸前なんじゃないか?辞めるメンバーも出て来るだろうな。
「あまり驚かないですね。では『7匹の獣』についてです。調べられたのは2匹です」
と紙を渡して来る。
『強欲のグリード、その獣、狐人の姿をしており変幻自在に全てを奪い去る』
『憤怒のラース、その獣、一角獣で近寄るもの全てを貫く』
ふぅ、今度は狐に一角獣?
強欲と憤怒か…まだ出現報告はないようだし、頭の片隅に入れとけばいいか。
「分かった。この紙はもらって行くぞ?」
「はい!分かりました。ついでですが、なんでもアーガイル公爵がご病気だそうですよ?」
「…。そうか」
「では、またのご利用お待ちしています」
余計な事を聞いたな。
帰り道は足が重いな。
あの父親が病気か…なんの病気なんだ?いまなら素材さえあれば大概の薬は作れるが…。
…いや、辞めておこう。だが、しかし。
「クソッ、聞くんじゃなかったな」
俺は実の父親を見捨てられるほど薄情ではないらしい…仕方ないがリミ達に言って王都に行くしかない。
自分は捨てられたが親は捨てられないな。
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