第40話
春になり迷宮街ブランドーに新たな人物達がやってきた。
その数はとても多く、大通りを我が物顔で闊歩している。
「おい、あれって」
「静かに!目ぇつけられるぞ!」
大通りにいる人々は静かにその行列を見ている。
「はぁ、どこに行ってもこの対応だな」
先頭を行くのは銀色の鎧を着た女性だ。
「仕方ないです。団長からも言ってください!もう少し清潔感のある服装にしてくれって」
隣を歩く秘書の様な格好をした女性がそう言う。
「だぁ、マリンはうるせーなぁ、個性だろ?個性!」
後ろから濁声で答えるのは大柄で蛮族の様に毛皮を纏った男だ。
「そうですよ、同じにしないで下さい!本当にニ番隊は…」
その横に並ぶ様に歩くのは魔法使いの様な白いローブをきた女性?
「ウッセーよ!このクソガキが!」
「あ?爆ぜ殺すぞ!野蛮人」
2人が喧嘩をしようとした時、
「分かったからお前らは喧嘩するな」
先頭を歩く女性が振り返り言うと、
「分かった」
「分かりました」
と声を揃えて言う。
ー・ー・ー
さて、ギルドにいつも通りに訓練に来た俺だが、ギルド全体が慌ただしい。
「なにかあるのか?」
「ん?あぁ、昨日早馬が来てな。なんでもこの王国公認のクランがやってくるそうだ」
グラムはそう言うと、今日の訓練は終わりという様に剣を背中に取り付ける。
ここ、ノイシュタル王国公認のクランとなれば、一つしかない。
『
クランはギルドとは違う集まりで、ギルドが冒険者を管轄する機関。クランは冒険者の集まりである。
クランの事を国家反逆予備軍と呼ぶ人もいるが、国に公認してもらうことで公明正大に活動している。
他にもクランはある様だが、それは非公認だ。
「ふむ、なぜ『SOD』がここに?」
王国を拠点にしていたはずのクランがここ迷宮街に何の用だろう。
「ここにいたな!ちょっと来てくれるか」
「ん?どうした?」
ギルマスのポートが俺を呼びに来た。
ついて行くとギルド内に大勢の『運命の槍』のマークが付いた装備をしている冒険者で溢れかえっていた。
「『SOD』か」
「そうだ。ルシエに会いたいそうだ」
「は?」
「まぁ、話を聞くだけ聞いてくれ」
二階の応接室に入ると4人の男女がいた。
「まぁ、とりあえず座ってくれ」
対面のソファーにギルマスと並んで座る。
相手側は銀の鎧を着た美女とスーツの美女がソファーに座り、後ろに大男と白いローブの女?が立っている。
「さて、こちらが話に出たルシエだ」
なんの話なんだ?
「そうか、私は『SOD』の団長をしているアイズと言う。グラトニースライムを倒したのは君だね?」
アイズと名乗る団長は華のある美人で、赤い瞳、赤い髪のストレートヘアを腰あたりまで伸ばしている様で光に当たりキラキラと光って見える。
シルバーアーマーを着ているので
「まぁ、倒したのは俺だが」
「なんだ?お前、団長にタメ口とはいい度胸だな!」
と怒っているのは蛮族のような毛皮を巻き付けた様な装備をしている大男だ。
「ヴァン!!よさないか!」
「だ、だってよー!」
「悪いな、ウチの第二隊隊長のヴァンと言う。無礼を許してくれ」
アイズが頭を下げる。
「気にしない。悪いが口調を変えるのは勘弁してくれ」
「分かっている。こちらも気にしていない」
ニコリと笑うアイズ、歳はヴァンより若そうだが。
「はぁ、ヴァンは野蛮人だから」
「あ?オカマ野郎に言われたくないぜ」
「よし!爆ぜ殺してやる!」
白いローブを着た女?ではなく男と思われる奴が薄いピンクの髪を揺らしながら杖を構える。
「あぁ!もう!お前らは少し黙れ!」
「すまん」
「すいません」
アイズが大声で怒鳴ると2人は謝りこちらを向く。
「はぁ、度々すまないな。こっちはウチの一番隊隊長のダイスだ。で横に座っているのが副団長のマリン」
「よろしくお願いします。マリンと言います」
スーツの女性は暗いブルーの髪を後ろで纏めている。アイズとはまた違う感じで真面目そうな美人さんだ。
「よろしく。で?」
「ルシエ、君はどうやって隠し通路を見つけたんだ?」
「…『マッピング』スキルと地図を見比べただけだ」
「そうか、君は探索者なのか?」
「まぁ、そんなところだ」
わざわざ喋る必要はないだろう。
「ふむ、警戒するのはわかるが、出来れば話をしたいのだが?」
アイズに少し圧をかけられる。
「はぁ、何が知りたいんだ?」
「そうだな、私が聞いた話だと、グラトニースライムから冒険者を解放して倒したと聞いたが?」
「そうだが?」
「であれば、大量の死人を運ぶのに
「…はぁ、何が言いたい」
どこかで情報を仕入れてきたな。
「無理だろ?そのパーティーでは?」
「そうだな。だが、倒したのは俺らだ」
間違いは言ってない。
「…君がスキルを持ってるのだろ?」
「さぁな。俺が持ってるなんて決めつけるのはどうかと思うがな」
そんな情報をどこから集めてきたんだ?
「それは肯定ととる。どうやって全く違う職業のスキルを?」
「そこまでだ。アイズ殿?ルシエは冒険者。答える義務はない」
ポートが制止する。
「…はぁ、すまない。熱くなってしまった。許してくれ」
「はぁ、帰っていいか?」
「ま、待ってくれ。力を貸して欲しい」
「…何の為に?」
「『情欲のラスト』を倒すために」
国が動いたのか。だが、今の俺じゃ力不足だ。
「悪いが他をあたってくれ」
そう言うと俺は応接室をあとにする。
何か言いたげだったが、俺はそこまで強くないからな。
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